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終末後記  作者: Takahiro
1-5_大東亜連合
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二光作戦

タイトルのもとネタが分かる人なら、「二光作戦」、が何を言いたいかも分かると思います。

ジャカルタ首都じゃなくなっちゃうみたいなんですけど。

一息ついたと思っていた牟田口大尉は、窓の外を見つめていた。だが、そこに信じがたい光景が見えた。


「な、どうした!」


横を共に上がっていく揚陸艇。その一つが、炎を上げて落下し始めたのだ。立ち込める煙は、牟田口大尉のもとにまで届く程である。


「地上です!地上から撃たれています!」


「ええい、すべての爆弾を落とし、地上を爆撃せよ!敵かは知らんが、撃たせるな!」


揚陸艇には、それなりの武器弾薬が積んである。それを落とせば、ある程度の爆撃は可能である。人くらいならば、吹き飛ばせるだろう。そして、瓦礫の山となった地上から弾が飛んできたならば、十中八九、ゲリラの仕業だろう。


揚陸艇から、ありったけの爆薬が投下される。散発的ながらも、地上は爆炎が覆い尽くした。


「敵は見つけたのか?」


「はい。こいつらです。」


牟田口大尉が受け取ったデバイスには、安っぽい対装甲兵器を担いだ男が数十人写っていた。だが、安っぽかろうが、この類の兵器は十分に協力なのだ。そして、彼らの顔までは判別出来ないが、皆、黒い服を纏っていた。


だが、彼らが何処から湧いてきたかはわからない。地上は屍人で覆われる中、どのようにあそこに出現したのか。謎は深まるばかりだ。


さて。一隻が不運にも沈んだが、他の揚陸艇は全て帰還した。


そして、東郷大将は再び、鈴木大将との会議中である。ジャカルタは、大半が屍人で覆われていると判明した。また、叛乱軍は依然として健在であり、それが危険な分子であることは変わっていない。


「わざわざ上陸などするのですか?あれほどの数の屍人、滅ぼすには相当の弾丸と労力が必要です。一言で言うと、時間の無駄です。」


上陸作戦を行うには、何らかの手段で屍人を殲滅せねばならない。その数は、数十万と考えられる。それは、確かに多大な苦労を要するだろう。鈴木大将には、そんな気はさらさら無いようである。


「だが、奴らを生かしておけば、貴重な情報が得られるかもしれない。アメリカとの繋がりや、この状況が如何にして出来たか、とかだ。」


対して、東郷大将は、上陸作戦を敢行し、敵を捕らえようと考えている。そもそも、どうしてジャカルタがこれ程までに悲惨なことになっているのかは、誰も知らないのである。


「そんな情報は、些細なものです。アメリカなど、じきに滅びましょう。ジャカルタをこうした手段も、検討はつくでしょう。まったく、敵を生かす価値などありません。」


鈴木大将は、全てを見透かしたように言う。鈴木大将には、それこそが自明の理のようである。


「では、どうしようと言うんだ?」


「簡単です。ジャカルタを今度こそ焼き尽くし、叛乱軍を地上から消すと共に、それを見せしめとします。」


鈴木大将の策は、ジャカルタの全てを瓦礫の山にしようというものである。屍人に覆われた地上を制圧するんのは困難であり、どのみちジャカルタが復興する望みは薄いため、合理的な策ではあるだろう。


「砲弾の消費が相当激しくなるが、わかっているのか?それに、爆撃だけで地上を制するのど、兵法の基本に反するのではないか?」


「そんなことは、わかっていますよ。」


そして、鈴木大将の応えは、これら全てを一挙に解決するものであった。それは、コストにおいては砲弾の1%未満であり、全ての敵を抹殺できる兵器である。それは、東郷大将をして、忌み嫌わしむものである。


「水素爆弾を使います。」


「水爆だと!?そんなものを使えば、どうなるかわかっているのか?」


水素爆弾。重水素の核融合を利用した兵器である。開発からこの方、人に対して実戦使用されたことは一度もない。そして、水爆をそう使った暁には、国際社会からの非難を浴びることになるだろう。


「ご安心下さい。今のジャカルタの様子は、屍人に呑まれたと言って、過言ではないものです。これを方便にして、使います。」


「そんなわかりきった嘘で、各国が騙されるとでも?」


「問題ありません。ここに水爆を落とそうが、損する国は何処にもありません。アメリカも、とっくにここを見捨てているでしょうね。ならば、わざわざ文句を言ってくる国はありますまい。」


国家は、人道では動かない。人道上の理由で、と謳う国は数多あるが、それらは全て、汚い目的の方便に過ぎない。本来の目的は、国益の追求であろう。日本がジャカルタを核攻撃しようが、国益を損なう国はないのである。周辺国と関係するのは、シンガポールの方だ。


「最後にだが、天皇陛下のご裁可をどうするきだ。まさか、独断でこのような大事をなそうとは、思っていないな?」


「実を言いますと、陛下は既に、このお話にご裁可あそばせました。」


「そ、そうか。ならば、私に止める理由はない。近衛艦隊の方で、勝手にやってくれ。」


「ありがとうございます。」


かくして、ジャカルタ核攻撃の計画は、決定された。これは後に、二光作戦と呼ばれることになる。




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