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終末後記  作者: Takahiro
1-5_大東亜連合
148/720

ある科学者の記憶Ⅲ

サブストーリーです。

全世界60億人が各々の政府に対し反乱を起こしたという前代未聞の事態は、あっという間に文明を破壊した。


かつては核戦争によって文明が滅びるとは思われていたが、通常の戦闘でも文明は壊れたのである。


そして、それからおよそ100年が経過した。


人類は生存圏を確保し、それなりに暮らしているようだ。


そして、ある科学者は、不老のゾンビライフ100年目を迎えていた。この科学者にとっては、何をやっても文句を言われない世界は地獄などではなく、寧ろ天国のようであった。


そして、科学者は、かつてアメリカ合衆国であった土地を訪れていた。


文明の利器が失われたから、ここまでは徒歩と木製のいかだくらいしか来る手段はなかった。また、科学者は至るところで屍人を使って実験をしており、なんだかんだで100年間ここに来たことはなかったのだ。


「ふう、結構残っているな」


科学者が訪れたのは、ある研究所の廃墟であった。そしてそこは、世界を滅亡させたウイルスの研究所の一つである。何故か米軍がこのウイルスを研究していた訳だが、その理由に科学者は興味はなかった。


科学者が欲しかったのは、研究所に残っている資料の数々である。自信が保持するデータと比べれば、面白いことがわかるかも知れないという純粋な興味であった。


薄暗い地下で、科学者は膨大な資料を読みふけった。幸いなことに、時間は幾らでもあるのであった。


「ほうほう、興味深い。米国の考えることは、僕らとは違うな」


その資料は、科学者を満足させるに足るものであった。何ヵ月か研究所に引きこもっていた科学者は、やがて外を彷徨き始めた。引き続き、外を蔓延るゾンビどもで遊んでやろうという魂胆である。


しかし、科学者の前に一人の女が現れた。


「どーもー。君は日本人かな?」


「そうだが、何だ?」


科学者の前に現れたのは、漆黒のドレスに身を包んだ若い女であった。いや、若いかは見た目ではわからない。科学者も見た目は30代ほどだが、実際は130歳である。


「実は、あなたに用があるんだ」


微笑みながらそんなことを言うその姿に、科学者は見覚えがあった。科学者は、自分の疑問の解消を優先した。


「お前、名前は?」


「名前?うーん、ノン・イラストリアスだよ」


女は、一瞬考え込んだ後、いたずらのように言った。


「ふっ、なるほどな」


科学者は、なにかを察した。科学者にとって、ノンはある意味では因縁の相手であったのだ。


「で、そんな奴が何の用だ?」


「実はね、君に研究室をあげようと思ったんだよ」


「研究室?」


ノンは、この世界で屍人の自分のために研究室を用意したと言った。科学者にとっては、この上ない知らせであった。


「なるほどな。じゃあ、お前について行こう」


これ以降、科学者はノンの元で暮らすことになった。


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