モスクワにてⅣ
サブストーリーです。これから暫くは、「カルガリー攻防戦 各国の反応」をお送りします。
クレムリンでは、カルガリー攻防戦の結果を受け、緊急の会議が開かれていた。
「日本軍のプラズマ砲、草薙の剣と言ったかな、が、あれほどまでの威力を発揮するとはな」
「ええ。あれの威力は、一個艦隊に相当するものです」
カルガリーで日本軍が使って見せた草薙の剣の威力は、一言で言って凄まじかった。ジュガシヴィリ書記長としては、カルガリーまでは米軍に奪還されると考えていただけに、寝耳に水の報告であった。
「ですが、種が割れた以上、対策は可能です」
「何だ?」
「こちらも、電磁波でプラズマを拡散させます。技術的には可能でしょう」
プラズマ砲は、プラズマが結束している為に、絶大な破壊力を持つ。ならば、プラズマを拡散させてしまえば、少し装甲が溶ける程度で済むのだ。
「アメリカも、そのくらいは思い付いているだろうな」
「はい。彼の国なら、すぐにでも草薙の剣を無力化してくるでしょうね」
「我が軍で、それが出来るのはいつ頃だ?」
ソビエトの軍事力は、残念ながらアメリカには及ばない。アメリカならば、すぐにでも対プラズマ砲装置でも作るだろう。だが、ソビエトは、そうもいかないのだ。
「マレンコフ大佐?」
「はい。我が技術局の試算では、恐らくは、3ヵ月は必要かと」
「3ヵ月か。それまでは、待とう」
3ヵ月も待てば、草薙の剣は無力化できるらしい。だが、ソビエト共和国には、それ以外にもまだ他の対策があるのであった。
「我がキエフの準備は整いました。キエフならば、草薙の剣など、意に介しません」
そう言ったのは、強面の男、ロコソフスキー少将であった。
「確かに、キエフならば草薙の剣など関係ありません。しかし、ここでこちらの秘密兵器を見せるのは、些か早急に過ぎるのではないでしょうか?」
「私も、そう考える。キエフは、せめてイルクーツクで使うべきだな」
「そうですか。であるのならば、キエフは決戦に備えましょう」
「ああ。キエフは、党と人民を守る最後の盾だ。くれぐれも、無駄遣いはしないでくれたまえ」
「承知しました」
キエフは、草薙の剣を無力化できるソビエト唯一の兵器である。だが、代案がある以上、まだ使用は早すぎる。
「極東の話はこれくらいにしておこうか。次は、ヨーロッパだ」
「はい。先日のナチスの蜂起は、欧州のパワーバランスを少々崩しました。そして、………」
彼らの会議はまだ続く。