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終末後記  作者: Takahiro
1-5_大東亜連合
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聞き取り調査

帝都に向け、大和は飛行している。現在、大和は日本列島の上空に入り、津軽海峡の都市、函館の近郊を飛行中である。


大和には、無駄に船室が多い。これは、旧文明時代の名残である。そして、余った船室の1つは、屍人の少女コウの私室となっている。それ程までに、大和は大きく、人類は減ったのだ。


さて、コウの部屋の前には、訪問者が立っている。コウを発見した、佐伯少尉である。


佐伯少尉は、ドアを軽快にノックする。


「ああ、陸軍少尉佐伯だが、入っていいか?」


「いいよ。どうぞ〜」


中からは、相変わらず気の抜けたコウの声が返ってきた。その様子に安心しつつ、佐伯少尉はドアを開ける。しかし、一瞬にして閉める事になる。


「ちょっ、君!何でいいよとか言ったんだ」


中では、何事も無かったかのように、コウが軍服を着替えていた。一瞬だが、コウの下着を見てしまった気がする。さしもの陸軍少尉も、それには尻込みする訳である。


「えっ?ああ。なんか、ごめんね」


「はあ。今度は、ちゃんと準備してからいいよと言ってくれ」


「うん」


佐伯少尉は、ドアの前で大きくため息を吐いた。そして、しばらく待つと、再び入室許可が出た。一応、佐伯少尉はゆっくりとドアを開ける。


「おお、似合ってるじゃないか」


今度こそ、コウは、ちゃんと支度をしていた。コウが来ているのは、とある暇な軍人がデザインした、紺の軍服もどきである。だが、もどきとは言っても、本物並みの機能性を持った優れものである。


「おお、ありがとう!」


コウは喜んでいるようだ。さて、佐伯少尉は椅子に腰掛け、コウはベッドに座り、2人は向かい合う。


「まずは、そうだな、君に謝罪しなければならないな。デトロイトでは、君に銃を向けてすまなかった。帝国軍人として、民間人に銃を向けるなど、あってはならないことだった」


「まあ、帝国がどうとかいうのはよく分かんないけど、ボクは生きてるんだし、問題無しだね」


「そうか。君がそう言うならば、そうだな。君が傷ついていないようで、私は安心したよ」


佐伯少尉は、東郷大将の職権濫用紛いの人事によって、コウの世話係的な役職に任命されてしまった。一応の扱いとしては、何と、艦内の掃除係である。


そして今回は、落ち着いて話ができる、最初の機会であるのだ。コウからは、帝国軍の誰も知らないような事実が飛び出して来るかもしれない。


「とりあえず、そうだな、都市の外で、他に人と会ったことはあるか?」


「あるよ。そもそも、最初はたくさんの人といたし、後は4人くらいに会ったかな」


「沢山の人、とは?どうして別れたんだ?」


「ああ、その、殺された」


その時、コウの顔が一瞬暗くなった。


「そ、そうか。すまないな」


「実はね、殺したのは飛行戦艦なんだよ」


「飛行戦艦か。それは……」


今コウが乗っているのもまた、飛行戦艦である。佐伯少尉は、空気がだんだんと気まずくなってくるのを感じた。


「他は、どうなんだ?」


佐伯少尉は話を進める。


「そうだね、なんか、そうだ!前に、いっぱいいる人を見つけたよ」


「つまり、君たち以外のグループってことか」



「うん」


「いつだ?」


「割と最近かも。大体、何年か前」


コウ以外にも、意思を保った屍人は存在するようだ。しかも、コウの証言からすると、明確な序列を保った組織があるようだ。それが動くとなると、帝国の国防にも関わる。


「それで、他は?」


「イシイって人と、ノンって人だね」


「前に君が言っていた人か」


イシイとノンが、直近に会った人らしい。そして、コウは、なかなかに興味深い話を始めた。


「どうしてこれ程の戦艦が造れるのか。どうして人は屍人を殲滅しようとしないのか、か」


確かに、世界の列強は、狭い都市に引きこもっておきながら、大量の艦を建造し続けている。都市地下採掘場、都市外無人採掘場、海底からの採掘など、あらゆる方法で人類は鉄を手に入れているが、確かに、疑問に思わなくはない。


屍人を殲滅しようとしない理由は、屍人があまりに多すぎるからだろう。


「私は、ただの下士官に過ぎないからな。そういうことに関しては門外漢でね」


「そう。まあ、いいや」


「そうだな。今日は、この辺にしとこう」


「うん」


だが、佐伯少尉は突然に、何かを思い付いたのか、手を叩いた。


「そうだ。今、大和は帝都東京に向かっているのだが、君も帝都に行かないかい?」


「東京?何するの?」


「帝都で、まあ平たく言えば、遊ぶな」


「おお、それはいいね」


コウは、すぐに賛同した。そして、大和と第一艦隊は帝都に迫っていくのである。



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