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終末後記  作者: Takahiro
1-5_大東亜連合
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ベルリンの夕闇

サブストーリーです。平和な帝国軍とは違い、欧州は絶望してます。

「私たちは、もはや……」


ドイツ州南端、旧トルコとの旧国境付近で、ヘス総統ら、NSEAPの党員は、失意に沈んでいた。


彼らは、屍人の領域にも着地出来る特殊艦、Bボートに乗っていた。この艦は、全長45mとかなり小型であり、更には主砲と呼べる大口径砲を持たない、独特なデザインの艦である。


しかしながら、この艦の特徴は、艦の下側の装甲が最も分厚いことにある。戦闘では役に立たないこの装甲は、屍人の領域に着陸する為だけに作られたものだ。また、全体に装甲が厚く、その姿は装甲艦と比喩されるものでもある。よって、普通なら生きていけない都市の外で、暫くは行動できる。


だが、そんなことはどうでもいいのであった。


1週間前、彼らはベルリンで武装蜂起を起こした。一瞬にして政府主要機関を抑え、革命は成功すると思われた。だが、それらは全て仕組まれたことだった。ベルリンから他の都市への通信は一切遮断されており、革命は一切伝播しなかった。


そして、最悪だったのが、アメリカ軍の介入である。日本と戦争してるとは思えないほどの大戦力が、ベルリンを取り囲んだ。降下してきた米兵は次々と人々を虐殺し、革命は一瞬で踏みにじられた。ベルリンは飛行戦艦に焼かれ、多くの人々が路頭に迷うこととなった。


多くのベルリン市民の挺身により、ヘス総統以下の幹部はある程度逃げられた。党の枢要は、未だに健在である。だが、党は多くを失った。


「総統閣下、今は待つのです。いつか必ず、この国を正す時が訪れます」


「ありがとう、クビツェク。ええ、その日を待ちましょう」


クビツェクは、ヘス総統の腹心の一人である。その所作は優しい青年のようで、血気盛んなヘス総統を抑えられる数少ない党員の一人だ。


「かつて、ヒトラー大総統は、ミュンヘン一揆で投獄された後に、ドイツ第三帝国の栄光を築き上げたのです。彼にできたならば、ヘス総統閣下にも必ずや成し遂げられます。」


「しかし、私ごときが、ヒトラー大総統に及ぶ力を持っているとは……」


「いえ!総統閣下の求心力は、ヒトラーに及ぶものです。現に、総統閣下は、たったの2、3ヵ月で、殆どのベルリン市民の信頼を勝ち取ったではありませんか。ヒトラー大総統ですら、それほど短い時間では、なし得なかった」


いつもは、ひたすらに前進するヘス総統をクビツェクが抑えるところだが、今回ばかりは真逆のようであった。クビツェクは、ヘス総統を鼓舞した。


「ありがとう。私も、弱気になっていたようです。アデナウアーを倒し、この国に光をもたらす為、必ずや、一党独裁体制を作らなければなりませんね」


「はい。後は、いつものようにやってください」


ヘス総統は、目が覚めた。たったの数ヵ月で、市民は彼女を指導者と認めたのだ。ならば、再起できる可能性は尽きてはいない。政府への反感も高まっている頃だろう。


「闘いましょう。最後まで」


彼女らの決意は固まった。彼らが皆死ぬその日まで、彼らは闘い続けるだろう。





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