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終末後記  作者: Takahiro
1-4_米軍の反撃
130/720

天雷作戦Ⅲ

崩壊暦214年8月24日18:30


「イリノイ轟沈!」「フィラデルフィア轟沈!」「モンタナ主機停止!」


米艦隊は、敵の左翼を包囲し、有利にことを運んでいた筈だった。だが、今ではこのざまである。戦艦、巡洋艦は、最前列にいたため、多くが敵のプラズマ砲を食らった。


一瞬にして、戦艦が3隻失われ、巡洋艦は5隻失われた。


失われた戦艦の中には、連邦軍最強の戦艦モンタナも含まれている。モンタナを一撃で沈める砲など、どんな艦でも耐えられない。


チャールズ元帥は、目の前の燃える艦隊に、ただ、愕然としている。だが、ハーバー中将はそんな元帥に渇を入れる。


「閣下!さっさと艦隊を動かして下さい!閣下の手には、数万の命がかかっているのです!」


「はっ。すまない。第一軍右翼、中央は全力で後退!左翼はニミッツ大将と合流し、東に退け!」


敵のプラズマ砲の射程は、どう考えても短いはずである。米艦隊は、早速逃げに徹する。


だが、敵もそう簡単には逃がしてくれない。


「敵砲弾、第二射です!」


再び、敵からプラズマ砲弾が放たれた。再び艦隊は燃え上がる。

だが、敵の狙いは更に悪質だった。


「くそっ!後ろを狙うか!」


敵が狙ったのは、後方の駆逐隊であった。アイオワの後ろでは、駆逐隊が炎上している。そしてそれは、艦隊の退路の大きな障害となる。後ろに退こうとしても、停止した駆逐艦がそれを塞ぐ。そうして、艦隊の足並みは乱れていく。


「駆逐艦には自沈させろ!味方撃ちも許可する!全力で艦隊を逃がせ!」


駆逐艦は沈めて、艦隊の道を切り開くしかない。幸いなことに、ミュンヘン条約にて、あらゆる人々の屍人からの保護は義務化されている。汚いかもしれないが、今はそれに頼るしかない。


駆逐艦は自ら地上に落ちていく、もしくは味方によって主機を止められた。かくして、米艦隊主力は後退していく。


だが、更なる知らせがアイオワに届く。


「敵の全艦隊が、動き出しました。こちらに向かっています」


「敵右翼艦隊、攻勢に出ました」 


敵は、これ見よがしと反撃してきた。


「ニミッツ大将には、しばらく持ちこたえるよう伝えてくれ。今は、主力を逃がさねばならないからな」


敵の右翼を包囲していたニミッツ大将の艦隊は、本来敵の足止めの為の兵であり、大した戦力はない。だが、しばらく時間を稼がねばならない。敵の中央も接近し、彼我の戦力差はもはやひっくり返されているが、ニミッツ大将は何とか持ちこたえている。


「敵、第三射、来ます!」


「くそっ、まだ撃てるのか!」


またもや、敵艦隊はプラズマ砲を放ってきた。


「ワスプ轟沈!」「テキサス轟沈!」


被害は凄まじい。今度は、最前列の戦列艦が狙われた。巨艦であろうとも、ただの一発で装甲を融かされ、地上に沈んでいく。


この時点で、米艦隊全体をもっても、日本艦隊の戦力を下回ってしまう。だが、未だ戦力は拮抗している。


「空域再展開!VN空域にて、陣形を立て直せ!また、ニミッツ大将にも合流するよう伝えろ!」


やがて、両艦隊は長い横陣で相対するようになった。ほぼ同戦力で向かい合うとなれば、本来、どちらにも不利はないはずである。だが、敵の攻撃で混乱し、艦種のバランスも崩れた米艦隊は脆かった。


秩序立った敵の砲撃に対し、こちらの攻撃はバラバラである。ただでさえ敵の方が砲撃戦に強いというのに、この有り様では、どうしようもない。


更には、敵の将軍の手腕は、並大抵のものではないと見える。特に、プラズマ砲を持っている艦隊は、こちらの艦船を次々も沈め、こちらの陣形には穴が開き始めている。


「全艦、サスカトゥーンへの撤退のみを考え、敵への妨害を最優先とせよ。駆逐艦は、ありったけの対艦ミサイルを!戦列艦は、とにかく砲弾をぶちこめ!」


チャールズ元帥の指揮もむなしく、戦局は日本艦隊優位のまま進んで行った。


「敵、離脱して行きます」


「流石に、サスカトゥーンまでは来ないか」


米艦隊が体勢を整えた頃には、日本艦隊はカルガリーに戻っていった。向こうのワンサイドゲームのまま、戦闘を終えたかったのだろう。敵に目立った損害を与えることは出来なかった。


最終的に、カルガリー奪還艦隊の半分近くが失われた。更には、多くの艦が傷を負っている。アイオワは、3つの主砲塔のうちの1つを破壊された。


ここに、カルガリー奪還作戦は失敗に終わったのだ。今や、敵の北部戦力は、こちらの北部戦力に1個艦隊を足したほどのものである。それほどまでに、米軍の艦艇は失われたのだ。


そして、米艦隊は、都市を奪還する戦力を失った。当面の間は、戦力の拡充に期待するしかないだろう。


崩壊歴214年8月24日は、戦争の第二の転換点であった。



モンタナ、あいつ……

実は、これで第四章終了なんです。上手い終わり方が思いつきませんでした。

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