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終末後記  作者: Takahiro
1-4_米軍の反撃
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天雷作戦II

加藤少将はほんとにヤバい奴です。

米艦隊は動き出した。しかし、その陣形はこれまた奇妙なものである。米艦隊は、第二艦隊と第六艦隊とをを大きく囲うように艦隊を展開している。その形は、ちょうど小文字の「w」のようである。


そして、その半包囲陣の中にいる2つの艦隊の1つ、第六艦隊は、第二艦隊よりも激しい攻撃に晒されている。そしてここは、第六艦隊旗艦、飛行戦艦出雲の艦橋である。


艦橋の主は、整いきった軍服に身を纏った、短髪の女性、加藤少将である。そして、彼女の様子はいろいろな意味で凄まじいものである。


「閣下、伊藤少将より、攻撃開始の合図がありました」


「よろしい。それでは、殲滅のワルツをお見せしましょうか!」


加藤少将は、芝居のように作戦の開始を告げる。かざした右手は、中世の貴公子のようである。


「第二艦隊、陽動に突撃を開始しました」


「敵は、醜く美しくも、草薙の虚像を撃っている。何と、お馬鹿な人たちよ。では、まずは5km前進しなさい」


計画通りに、第二艦隊は敵への攻勢を強めているようだが加藤少将は、恍惚の表情で、精巧な成功を寿ぐ。


敵は明らかに、第二艦隊が本物だと思っているだろう。その為か、こちらへの警戒は薄い。第六艦隊は、こちらを包囲する敵に、徐々に近づいて行った。しかし、第二艦隊も同様の行動をしている為、怪しまれてはいないようだ。


「ふむふむ、敵は気づいていないよう。では、更に2km前進しなさい」


敵は、こちらを殲滅しようと、堅実な半包囲を敷いている。敵は徐々に包囲陣を狭めているが、しかし第六艦隊はそれに接近していくのだ。


また、加藤少将の指示で、陣形は横に広くしてある為、敵の包囲網はうまく機能していないようだ。今のところ、加藤少将の計画通りである。


「東郷大将に連絡、丙のルートで、第一艦隊を動かして頂きなさい」


東郷大将の第一艦隊は、現在は、米艦隊の包囲陣の外にいる艦隊である。そして、それが動き出し、こちらに向かっているとなれば、敵は、第一艦隊は救援であると思い込むだろう。


「トロイの木馬の衝撃。その愉快さを、敵に教えてあげましょう」


敵とは、十分に接近した。そして、こちらの戦列艦に大きな被害はなく、戦線は拮抗している。今こそ、その時である。哀れな敵さんに、ご冥福を。


「全艦、米艦隊の雑草を焼き払うのです!草薙の剣、全門放て!」


ついにその瞬間、草薙の剣が初めて放たれた。連合艦隊は、これより全力をもって敵を撃滅するのである。草薙の剣の縛りがなくなり、第二艦隊などは、敵を押し返しつつある。突然の攻撃に、米艦隊には混乱が見られる。だが、その程度、第六艦隊の眼前に敵と比べれば、些細なことであろう。


「素晴らしい!これこそ、日本武(ヤマトタケル)の神剣の名に相応しい兵器だ!」


草薙の剣は、眼前の米艦隊を、草を薙ぐが如く沈めたのだ。


至近距離にして、相当な時間をかけ照準した砲は、正確無比に敵を打ち砕いた。その一撃は、一隻の戦艦をも一発で沈められるほどである。


プラズマ砲弾が当たった場所は、赤く光っている。装甲が加熱され、融解しているのだ。その周りには、溶け落ちた金属の巨大な穴が開いた。通常の徹甲弾ならば、考えられない程に強烈な一撃だったであろう。


だが、甲板に命中した艦はまだ幸福である。主砲塔が消滅しようが、被害はまだ軽い。


もっとも被害が大きかったものは、その艦橋を撃たれたものである。その艦は、不幸な戦艦であった。プラズマ砲弾は、その艦橋の根元に直撃した。そして、艦橋の下部が一瞬にして消滅したのだ。どうなるかは、想像に容易いだろう。


支えを失った艦橋は、ゆっくりと崩れ落ちていった。艦橋の一部はそのまま地に堕ち、一部は艦上に崩落した。そして、戦艦は主機をも壊され、艦橋を載せたまま落ちていった。


不幸な戦艦では、何人が無念の墜死を遂げただろうか。だが、そんなことを気にしてはいられない。戦争は、殺した者勝ちの世界である。今は、殺すか殺されるかの二択を選ぶしか、軍人にはできないのだ。


「やりましたね!閣下!戦艦2隻撃沈ですよ!」


「ガウガメラの戦いの如き逆転劇。確かに美しい。だが、まだ芸術は完成していない!全艦、殲滅のワルツを再開しなさい」


一瞬にして、米艦隊の陣に大穴が開いた。戦局は、今なお帝国軍の手中にある。




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