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終末後記  作者: Takahiro
1-4_米軍の反撃
123/720

動き出す艦隊

崩壊暦214年8月24日13:24


「大和、ダメージレポート!」


「右舷第五装甲板破損。航行に支障ありません」


「結構。他に重大な損傷を負った艦は?」


大和の艦橋では、先の米軍の攻撃の被害が纏められている。大和も1発食らったが、大和その人によれば、装甲が傷ついただけで、問題はないらしい。近衛大佐は悲しんでいるが、不幸中の幸いであったと言えるだろう。


だが、艦隊への被害は重大である。まず、巡洋艦2隻が沈んでしまった。ただし、空中分解はしていない為、人員の救助は可能である。また、駆逐隊などにも軽微であれ被害は出ている。


そんな折、一人の女性が艦橋にやって来た。


「閣下、この度、敵に攻撃を許してしまったのは、全て私の無能故であります。申し訳ありません」


東郷大将の前にくるや、早速謝罪したのは神崎中佐である。東郷大将は、反応に困ったようにしているが、なおも神崎中佐は言葉を続ける。


「もしも閣下が機会をお与え下さるなら、今度こそは米帝を撃滅せんとする次第であります」


「いや、あの敵は300。こちらに二倍するものであった。あれで攻撃を許しても、仕方あるまい。私が、敵を読み違えたんだ」


東郷大将は、まさか敵が全戦力を出してくるとは思わなかったのだ。だが、敵は東郷大将が思っていたより豪胆だったようである。


「いえ、例え二倍する敵であろうとも、攻撃を食い止めることはできたはずです」


「勝ち戦を作るのが、私の務めだ。部下に不可能を可能にすることを強いるのは、無能のすることだ。今回は、私の過失としてくれ」


「でっ、ですが……」


東郷大将と神崎中佐の責任負い合戦は、平行線をたどる。責任を負いたい指揮官など、なかなか珍しい。


「まあ、中佐。今回は、過失が五分五分だったということにしておこう。いいかね?」


「わかりました。この辺で、終いにしましょう」


「結構」


両者ともに釈然としないといった顔だが、ひとまず責任問題は終結した。


だが、航空戦の後に、次の局面がやって来た。


「米艦隊、動き出しました。我が艦隊に向かい、速度およそ15ノットです」


「結構。艦砲の射程に入るまでは、この場で敵を待ち受けろ」


大和の艦橋では、東郷大将が新たな局面を観察している。航空艦隊による煽りは、アメリカ人に効いたようである。東郷大将にとっては、例え艦隊が撃たれようと、これが重要である。


これまで、こちらの第二艦隊を除いては、両艦隊は陣を固守していた。両軍は、ミサイルや艦載機を飛ばしつつも、直接の衝突には至っていない。だが、ついにその時は訪れたようだ。


まだ、艦砲は届かない。大和の主砲でも、あと1時間は待たなければ敵を射程に収められない。


「恐らく、敵は、ケラウノスとやらを使ってくるだろう。主砲は、1/3は対空砲弾にしておけ」


これまで、散々帝国軍に降り注いで来た超遠距離ミサイルであるが、今のところただのひとつも確認していない。恐らくは、攻勢とともに使ってくるだろう。


「草薙の剣は、まだ、待て。今はその時ではない。そして、偽装した草薙も、まだ使うな」


草薙の剣の本物は、規格外の口径と、根本には発電機を付けた兵器である。従って、見た目からはすぐに判断できる。


その為、いくつかの砲には張りぼての装置を付け、どれが草薙の剣からわからなくしてある。だが、当然ながら、撃てばバレる訳である。


撃たなければ火力は減る訳だが、東郷大将はまだ使う時ではないと判断している。正体を明かすのは、最後の攻勢の時でなければならない。


「米艦隊、有効射程に入りました」


大和は、ついに来た開戦の時を告げる。これよりは、砲撃戦の開幕である。


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