ベルリンの朝夕
サブストーリーです。今回は政治思想が濃いですね。
ヘス総裁は、国家社会主義ヨーロッパ労働者党の総裁である。だが、いつしか彼女は、ヘス総統と呼ばれるようになっていた。それはもちろん、カール大帝、ナポレオンと並ぶヨーロッパの英雄、アドルフ・ヒトラー大総統にならったものである。
国家社会主義ヨーロッパ労働者党は、着実に支持を伸ばしていた。ベルリンで行う演説には、数千の人々が詰めかけていた。
「そして、我々、NSEAPは、この国を、根本から革命する!我々は、悪しき民主主義を破壊し、新たな独裁体制を作らなければならないのです!」
「Heil Heß!」「Sieg Heil!」
人々は、次々と彼女を褒め称えた。その様子は、まさに、ヒトラー大総統の勇姿が、450年の時を経て甦ったかのようである。
そして、今やヘス総統は、ベルリン随一の実力者となっていた。しかし、彼女が政界に入ることは出来なかった。アメリカ連邦の介入や、政府の不当な扱いが、その原因であった。
だが、民衆は確実に彼女を支持している。
「既に、ゲッベルス上級大将や、ド・ゴール大将も、我々への支援を約束してくれました。最早、我々はこの国の多数派となっているのです!」
ゲッベルスとド・ゴール。どちらも、合衆国軍の最有力の実力者である。彼らが非公式とはいえ支持をしているという事実は、国家社会主義ヨーロッパ労働者党の支持を更に拡大させた。
「最早、我々は、この国を変革するしかありません!古臭い民主主義を唱える保守党を放逐し、NSEAPによる一党独裁体制を作りあげるのです!」
ヘス総統は、民衆に、もはや革命しかないと訴えかけた。世界初の独裁化革命を、このヨーロッパの地で起こさねばならないのだ。
だが、演説に邪魔が入った。周囲に現れたのは、警官隊、若しくはアデナウアーの私兵であった。
「皆さん!政府の暴圧に、屈してはなりません!必要とあらば、実力に訴えるべきなのです!」
警官隊は、強制的に演説を止めさせようと、聴衆を掻き分けてきた。いつもなら、ここで解散となるはずだった。だが、今回は違う。
「死ね!民主主義者の犬が!」
ある男が、警官に殴りかかった。それが始まりであった。
警官隊は男を取り押さえようとした。
だが、更に周りから総統の支持者がそれを阻止する。支持者たちは、警官隊の前に立ちふさがった。そして、警官隊は支持者たちに攻撃し始めた。警棒で彼らを殴り、あくまで男を捕らえようとする。だが、警官隊は、高い代償を支払う事になる。
「奴らを殺せ!」「今こそ革命の時だ!」「やれ!やれ!」
その瞬間、群衆の目の色が変わった。群衆は、一斉に警官隊に襲いかかったのだ。
「下がれ!下がれ!」「下がるか!」「こっちには国がついてるんだぞ!」「合衆国何てクソ食らえだ!」「死ね!」
警棒を振り回す警官隊。ひたすら押し寄せる群衆。勝敗は明らかだった。
警官隊は群衆に押しつぶされ、殴られるがままに殴られた。抵抗の手段はない。警官隊の機動服も、一瞬にしてボロ切れになった。
「今こそ、革命を起こしましょう!国会議事堂、首相官邸に攻め込むのです!」
「おおおお!!!!」
数千の群衆は、その瞬間、団結する者になった。そして、ベルリンは今、炎に包まれる。流れる人の奔流は、欧州合衆国を吞み込むのか。結果は誰にもわからない。
何か、ヨーロッパの方は大変なことになってますね。