側背攻撃
「全機、戦場の左を抜け、敵艦隊を攻撃せよ」
米艦隊の戦闘攻撃機隊は、未だ戦闘が続く艦隊前方を避け、それを迂回しながら、敵に向かっていく。
大きな楕円軌道を描き、300機が敵に向かう。これ程の戦力を振り分けてもなお、米軍前方の主戦場では優勢を保っており、その戦力差は依然として大きいのだ。
「敵、後退し始めました」
前方の敵の主力は、こちらの動きを見るや、すぐに後退し始めた。
「追撃せよ。但し、敵の防空圏には入るな」
後退する敵に対し、米軍は追撃を仕掛ける。一斉に逃げ去る敵機に対し、ミサイルや機関砲弾が浴びせられるが、敵はその殆どを交わしていく。
「追撃は順調だな。別動隊は、敵に一撃し次第、帰ってこい」
先に敵航空戦力と敵艦隊の間に侵入した米軍機は、日本艦隊に迫っている。
「敵対空砲弾、確認。回避には成功しています」
「よし。このまま対艦ミサイルをかましてやれ」
敵との距離は30km。ここで、日本艦隊はお得意の対空砲弾を仕掛けてきた。しかし、こんなに使われれば、こちらにも対策は立てれる。部隊を散開させ、ランダムな軌道をとりつつ、敵の主砲の前に立たないようにすれば、案外回避は容易である。
サンフランシスコの悲劇は、もう繰り返さない。
そして、対空ミサイルや対空砲も飛んできた。だが、米軍機は、これもいとも簡単に回避する。ミサイルに対、急降下や旋回を繰り返すと、ミサイルはあさっての方向に飛んでいき、自然に爆発していった。
被害は、23機。少なくはないが、まったく致命的でもない。軍人として、覚悟していることだ。誰も怯まず、敵に突撃していく。
「敵邀撃、上がってきます」
「可能な限り無視し、艦隊への攻撃に集中せよ」
敵の中央より、残りの敵戦闘攻撃機が上がってきた。しかし、その数はこちらの別動隊の半々に過ぎない。もっとも、それでも十分な脅威ではあるが。
「各機分隊ごとに別れ、敵に対艦ミサイルを放った後、味方に合流だ」
飛行隊長より、陣形を崩すよう命令する。こちらの目的は敵への嫌がらせのみであり、まともに敵機の相手をする必要はない。
米軍機は、敵をスルーし、日本艦隊より少し距離をとった。
「全機、対艦ミサイル、放て!」「了解!FOX4!」
その瞬間、140機の戦闘攻撃機から、ありったけの対艦ミサイルが放たれた。その数は、700発近いものである。
至近距離からの対艦ミサイルには、日本艦隊の防空も弱い。もちろん多くは落とされるが、それでも50発近くが敵に命中した。敵に命中したミサイルは、敵の装甲を吹き飛ばしている。
「撤退!さっさと逃げろ!」
仕事を済ませ、米軍機は味方艦隊に戻っていく。同時に、敵と味方の大軍がやって来たが、敵は敵艦隊へと戻っている。恐らくは、挟撃されることを恐れているのだろう。別動隊は本隊と合流し、これまた各々の空母に戻っていった。
敵の被害は、その右翼を中心に甚大である。巡洋艦2隻撃沈の上、戦艦1隻も行動不能に近い。そして、これから敵が戦闘攻撃機を差し向けることはないだろう。
「ひとまずは、振り出しに戻る、か」
「閣下、ここままでは埒が開きません。この機に攻勢に出るべきでしょう」
ハーバー中将は、今こそ攻撃の時であると提言する。
「そうだな。サスカトゥーンに、ケラウノスの発射準備をさせてくれ。これから、攻勢に出る。但し、敵に近寄らないようにだ」
「承知しました」
ケラウノスは遠くのサスカトゥーンから飛んで来る。適切なタイミングでケラウノスを放つことで、艦隊の対艦ミサイルとケラウノスで、敵を焼けるのだ。
そして、あくまでこれは慎重に為さねばならない。数の力は、未だにこちらにある。
「全艦、進め!」
米艦隊は、ついに動き出したのだ。
FOX4とか、末恐ろしい世の中ですね。




