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終末後記  作者: Takahiro
1-4_米軍の反撃
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敵情観察

崩壊暦214年8月24日05:23


「全く、最悪の目覚めだな、中佐」


「ええ」


東郷大将は、1時間ほどの仮眠についていた。もちろん、何か動きがあったら即座に起こせと伝えたあるが、何も目立った動きはなかったようである。


だが、大将が目覚めると、外では、無数のミサイルがこちらに飛んできているのが見える。


両軍とも、無数のミサイルを撃ち合い、迎撃しあっており、動きがないわけではないのだが、この膠着状態は、なにも動いていないも同然と、両軍ともに捉えている。 


「しかし、敵に動きはないのか」


「はい、閣下。現状、敵には一切の動きはなく、ただの固定砲台となっています」


両軍が会敵してからもう6時間程度が経つが、未だに両軍は殆ど同じ位置から動かず、ミサイルの遊戯を交わしている。


両軍とも被害は皆無であり、ただただ鉄が鉄屑になるばかりの不毛な争いが繰り広げられている。


帝国軍は、プラズマ砲の配置が割れないように、各艦隊の対空砲弾の使用を制限している。当然ながら、対空兵装が減る訳であって、敵の対艦ミサイルを完璧には落とせなくなってきている。


ごく一部は連合艦隊にまでたどり着き、装甲を破損させている。だが、今のところ落伍した艦は一つもなく、戦闘は継続している。


「そろそろ、動きを起こそうか。第二艦隊をFR3空域まで前進させよ」


ひとまず、敵の様子を探るため、伊藤少将率いる第二艦隊は、陣形より突出し始める。


ゆっくりと、確実に敵のミサイルを捌きつつ、第二艦隊は進む。しかし、敵に動きはない。相変わらず、ちまちまと対艦ミサイルを放ってくるだけだ。


「伊藤少将より、50km圏内への侵入の是非を問う、とのことです」


50kmとは、およそ戦艦の主砲の射程距離である。即ち、砲撃戦を仕掛けていいかという許可を求めているということだ。


「許可しよう。敵に一当てし、様子を見る」


東郷大将は、これを許可した。敵のミサイルを掻き分けて、第二艦隊はなおも進む。


「第二艦隊、主砲射程に敵を収めました」


「結構」


そして、天雷作戦最初の砲弾が放たれた。もっとも、最初と言っても、同時に200発は飛んでいく訳だが。


第二艦隊は、射程距離はギリギリで砲撃を開始した。しかし、そんな距離では命中などは期待できない。ほぼ全ての砲弾は、米艦隊の間から地に落ちていく。与えた被害は皆無である。


一方、米艦隊からの反撃はない。


砲撃を続けつつ、第二艦隊は前進を続ける。3回目の斉射でもって、やっと最初の2発が命中する。


「敵、発砲」


「うむ。対応は、伊藤少将の裁量に任せよ」


敵もようやく発砲してきた。だが、こちらと同様、敵の砲弾も地面に吸い込まれていく。それに対し、第二艦隊は、陣形を散開し、巧妙に砲弾を避けている。


飛行戦艦武蔵より、伊藤少将は第二艦隊および第一艦隊第二戦隊の指揮をしている。


「そろそろ、止まろうか。全艦、現空域にて前進を停止せよ」


第二艦隊は、敵からおよそ25km地点で停止する。


「恐らく、敵の狙いはこちらの手の内、草薙の剣の能力を探っているはずだ。わざわざ、手の内を晒す必要はないな」


敵の挙動からするに、草薙の剣の射程を把握したいのだろう。しかし、それを教えてやる道理はない。敵には、射程3kmの草薙の剣に存分に怯えていてもらおう。


「敵、下がりだしました」


敵は後退を始めたという。


「よし、こちらも後退し、艦隊に合流せよ」


第二艦隊も、後退を始める。これ以上前進すれば、米艦隊に囲まれ、滅多うちにされるだろう。敵の行動原理を把握した今ならば、突出の成果は十分である。


特に障害はなく、第二艦隊は、連合艦隊の横陣にまで戻ってきた。被害は少なく、与えた被害もまた少ない。


カルガリーの戦いは、まだまだ長引きそうである。そして、天雷作戦は、その第一段階をまだ達成していない。


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