表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末後記  作者: Takahiro
1-1_サンフランシスコ攻防戦
11/720

政府の命令

日本航空艦隊を撃退し、ひとまずの脅威を排除し終えた後に始まるのは、あの論争である。


だが、そこに新たな情報が入っていた。


「日本軍には増援が来る、か。これは本当か。それともこれも嘘か」


そうは言うものの、チャールズ元帥は、どちらも偽情報だろうと踏んでいる。特に理由もないが、長年の勘というやつがそう告げていた。


「撤退は日本軍が増援を待っている証拠。すぐに攻撃し、少しでも優位に立つべきです」


相変わらず、参謀達は即時攻撃を主張している。


彼らの主張はそれなりに筋は通っている。いくつかの要素を完全に無視しているが。 


さて、チャールズ元帥が効果的な反論を考えている時、不運にも、凶報が訪れた。


「閣下、連邦政府より、即時攻撃と日本軍殲滅の命令が届きました。最優先すべしとの但し書きもあります」


命令書いわく、


「南方、北方いずれの都市も陥落寸前である。 


そしてこれは、サンフランシスコ防衛に複数の艦を引き抜いたからである。


サンフランシスコ防衛艦隊は、他の都市の犠牲と引き換えに局地的優位を保っている。


それが、日本軍相手に怯んでいるのは言語道断。


直ちに日本軍を殲滅し、他の都市の救援に向かえ」


と、のたまう。


「はぁ、防衛艦隊の増強は政府が勝手にやったんだがな。それに、任務は防衛ではなかったのかな」


チャールズ元帥は呆れた様子でぼやく。チャールズ元帥は、別段、サンフランシスコ防衛艦隊の増強を望んだことはなかった。


むしろ、増強前の戦力の方が上手く戦えたのでは、他の都市も守り切れたのではないか、そんな気持ちが彼の中に燻っている。


「このような愚かな命令など無視しましょう。将兵の命を政府の都合で失わせる訳にはいきません」


ハーバー中将は強く進言する。


彼は勝利に固執するタイプの人間だ。その為には、政府への抗命も辞さない構えである。


だが、そんな主張には参謀達が黙っていない。自らの主張に正当性を確保した彼らは、矢継ぎ早に持論を並べ立てた。


「政府の命なのです。従うのは軍人として当然ではないのですか!」「今こそ、全力で攻撃する時です!」


「静粛に!」


ハーバー中将はこれまでの様子とはうって変わって怒鳴りつける。


「元帥閣下、決定を」


結局、すべてを決めるのはチャールズ元帥その人である。


だが、チャールズ元帥は意外な決断を下した。


「私は、文民統制の原則を破るのは、軍人としては禁忌であると思う。例えそれが理不尽でも、例外を作ってしまえば、原則は形骸化してしまう。それは、避けたい。で、あるから、これより、全航空戦力をもっての攻撃を命じる。また、総攻撃の用意もするよう全艦隊に通達してくれ」


「…元帥の命ならば、慎んで、従いましょう」


ハーバー中将は軍の序列を理解する人間である。チャールズ元帥の言葉で少し冷静さを欠いていたことに気づいたようだ。


そして、元帥の命令は絶対だ。すぐさま将兵は動き出す。


かくして、米軍の攻撃が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ