夢見ファイバー
伸びた手の先に
目覚まし時計
音が止まるボタンは
上じゃなくて
後ろ側にある
上にあるボタンは
一時停止するだけで
暫くしたら
また音が鳴る
セットして横になる
枕は新しいカバーだから
違和感があって
少し楽しい
シーツも変えたし
掛け布団も変えた
この肌触りに慣れた頃
タオルケットに
変わるのだろう
少しだけ
暗闇に沈みそうになる
釣り糸の餌を
魚がつつく時みたいに
リズムを取って
行ったり来たりする
上手く合わせなければ
目が冴えてしまう
未だに
ポイントは
良く分からないが
感覚で遊びながら
落ちて行った
カーテンの下が明るい
確認すると
いつもより三十分早かった
慣れていないからか
不穏な夢を見たからか
夢の方を思い出しながら
掛け布団の中で
羽化間際の蛹みたいにしていると
音が鳴った
タイムリミットだ
ゆっくりと洗面台へ向かう
玄関を出てから
その先を夢見たはずなのだが
どうしても
思い出せないかった
繊維だけ残して