3. 肥料
塩化アンモニウム(塩安)
白色の粒状の窒素肥料(窒素含有量は26%くらい)
水溶性のため速効性がある
塩化ナトリウム(食塩)を使用して炭酸ナトリウム(重曹を加熱したもの)を合成する際の副産物として発生する塩素をアンモニアと反応させてつくられている
化学式はNH4Cl
水に溶けると弱酸性になるが過度に使用しない限り農地の酸性化は起きにくいとされている
硫黄を含まないので老朽水田の窒素肥料としても使われる
塩化カリウム
赤~ピンク色の粒状のカリウム肥料(カリウム含有量は52%くらい)
水溶性のため速効性がある
不純物として鉄が含まれているので赤色をしているが、純度が高いと白色になる
鉱石を溶かして再結晶させて作るがカリウムを含む鉱石のほとんどは輸入に頼っている
化学式はKCl
吸湿性があり、苦い
硫黄を含まないので老朽水田の窒素肥料としても使われる
硫酸カリウム
白色の粒でカリウム肥料(カリウム含有量は45%くらい)
水溶性のため速効性がある
日本ではほとんど生産されておらず、ほとんど輸入に頼っている
化学式はK2SO4
単体よりも配合肥料として使われやすい
水に溶けると酸性を示す
塩化カリウムよりもコストが高いがイモ類では硫酸カリウムの方を使用する
過リン酸石灰
灰色の粒状でリン肥料(リン含有量は10~20%、副産物の硫酸カルシウムが60%ぐらい含まれる)
水溶性で速効性がある
昔は古い骨を使用して作っていたが、現在はリン鉱石に硫酸を反応させて生産されている
化学式はCa(H2PO4)2とCaSO4(副産物)の混合
水に溶けると中性を示し、速効性のため肥料の効果期間は短い
硫黄が含まれているので老朽水田では硫化水素が出やすい
大量施肥は注意
苦土石灰
灰色の丸みを帯びた粒状もしくは白色の粉状のカルシウム肥料(カルシウムが60%、マグネシウムが30%強くらい)
水に溶けにくく緩効性
工業的にはドロマイトと呼ばれる鉱石を焼いて生産する
水溶性で水に溶けるとアルカリ性になる
化学式はMgCa
酸性土壌の改良に使われるが施肥のやり過ぎは土を固くする
ホウレンソウやブドウなどの土壌pHが中性付近を好む作物を栽培するときによく用いる
堆肥
茶色の土のような見た目でにおいがする場合もある
生ごみや家畜の糞尿、稲わらや除草した草などの有機物を積み重ね、微生物の好気的的分解(酸素を利用した分解)によって作る(嫌気性のものもあるにはある)
水を含むとやたら重たくなる
土壌改良効果が高く、水はけの改善など化学肥料にない部分を補う働きがある
有機物の炭素量を減らすことで施肥後、ゆっくりとした分解になるように調整する
剪定枝チップを材料とするとC/N比が20を超えがちになるので注意が必要
堆肥を作っている最中に出る熱によって雑草の種子を枯死させることができる
発酵熱によって土壌中の殺菌、殺虫や熱を利用した促成栽培ができる
堆肥の使いすぎは河川の汚濁に繋がるので注意が必要
尿素
白っぽい半透明の粒状でやや光沢のある窒素肥料(窒素含有量が46%くらい)
水溶性で超速効性
工業的には高温高圧の条件下でアンモニアと二酸化炭素を反応させて作る
化学式は(NH2)2CO
中性肥料のため農地のpH変化が起きにくい
葉からの吸収がされやすいため、水に溶かして果樹などの葉面散布に利用される
吸湿性があり、水を加えると吸熱反応が起こる
よう性リン肥
黒っぽい光沢のある粉状のリン肥料(リン含有量が10~20%、副産物としてマグネシウムが10%、ケイ素が20%含まれる)
水に溶けにくく緩効性
日本ではリン鉱石と蛇紋岩を混ぜて高温で加熱し、急速に冷却することで製造する
化学式はわかりませぬ~
水に溶けると弱アルカリを示し、酸性土壌の改良にも使われる
酸性条件で肥料効果が上がる
ケイ素を含むため稲作で使われやすい
硫酸アンモニウム(硫安)
白色で粒状の窒素肥料(窒素含有量は21%くらい)
水溶性で速効性がある
工業的にはアンモニアと硫酸を反応させて生産する
化学式は(NH4)2SO4
水に溶けると酸性を示し、アルカリ性の肥料と混ぜると肥料効果が薄れるので注意
硫黄を含むため老朽水田では硫化水素を発生させるため注意が必要
多用すると土壌の酸性化が起きやすく、さらに肥料やけもしやすい
窒素1%あたりの価格が尿素よりも安い
ちょこっと豆知識
日本の食料自給率は4割以下と低いが作物を栽培するうえで使用する肥料の自給率はさらに低い
三大肥料のうちリンやカリウムの原料となる鉱石は輸入に頼っている
唯一、自給できそうな窒素も原料にはアンモニアが必要である
このアンモニアを作るために必要な水素は天然ガスから作っている(採算をとろうとすると水を電気分解してつくるとはならない)
収量を維持しながら肥料の量を減らすことが求められる