~第六話~ 第三の鍵
家に戻って。
「さぁ答えよ、私は如何なる存在だ」
「くっそぅ……無理難題を……」
「答えられぬか。零時まで残り二時間だぞ」
分からん。
三日前、突然現れた男。
僕を闇に呑み込み、訳の分からない反実世界に巻き込んだ黒ずくめ。
一体コイツは、誰なんだ。
あの日僕は何をしていた。
何変わらない、普通の日常を送っていた。
いや、演じていたと言っても過言ではない。
何をして良いか分からない自分自身に嘘をつき、そして自分を騙しながら、ここ一ヶ月間過ごしてはいなかっただろうか。
きっとそうだ。
ヤマアラシのジレンマ。
辛い受験を終えて自由になった自分が信じ切れず認められず「本当にこんなで良いのか」という懐疑の念に駆られて、自分自身が嫌になる。自分自身に近づけなくなる。
それは一種の「恐怖」と表現しても間違ってはいないだろう。
よく考えてみれば暇なんて潰す必要なかった。現代人に暇なんてなかった。
それはもっと別の言葉を宛がって説明されるべき――「孤高の時間」と言われるべきものなのだった。
全く、何て僕は浅はかだったんだ。
答えなんて、最初から分かり切っていたことだったんだ。
そんな自分に不誠実な「自分」を陰ながらずっと見ていた存在。
それは――
「影だ」
刹那、
最初こちらに来た時に感じたような激しい眩暈が、突然のブラックアウトと共に僕に襲い掛かってくるのだった。
自分自身の、影。
自分に対する自分の嘘に気付ける者など、他ならぬ自分しかいない。