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青色の下で・・・神奈川陵應編  作者: オレッち
第壱章~新たな出会い~
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8話:プレイボール

4月の終わりに差し掛かった頃の日曜日、天気は快晴。

こんな日の陵應学園第二グラウンドでは野球部の試合が行われようとしていた。


対戦する相手は群馬にある高崎商業第二高等学校。

甲子園の出場経験はないものの、予選ではベスト16以上は必ずと言っていいほど名前が出てくる高校である。


そして迎え撃つは陵應野球部の2軍メンバー達。

そのメンバーの中には秀二と神坂の姿もあった。


ベンチ横のブルペンマウンドで投げ込みをする秀二。

その秀二のもとに球を受けていたキャッチャーが歩み寄ってくると話かけてきた。



「おっしゃ村神、今日もキレッキレだな。」


「いえ。木内さんが上手いんです」


「またまたぁ」


と笑顔を見せながら話す二人。

彼の名前は木内光汰きうちこうた、坊主頭で眉が太く鼻がやや大きいのが特徴の選手で、栗原らと同じ二年生のキャッチャーである。


また、グラウンドの外では試合に出ない二軍メンバーの他に一軍の選手らも来ており栗原は外野フェンスの外に立っていた。


「もっと近くで見ればいいのに」


「お?あぁ安斎か。ん、まぁ変に気使われたくないしなぁ」


と話しかけてきた見た目好青年と言うのが相応しい選手に対し栗原は笑顔で返答する。

そして安斎と呼ばれた選手、安斎秀和あんざいひでかず(以降より安斎)は栗原の隣に同じように並ぶとブルペンにいる秀二を見ながら話す。


「村神のピッチング楽しみだね」


「せやなぁ。待ちわびたでホンマに。」


とウキウキしながら話す栗原にフッと笑みを浮かべる安斎。

そして彼らが見つめる先のグラウンドでは今まさに試合が始まろうとしているのかベンチ前に群がりが見える。


「よし。オーダーの発表」


というのは野球部のコーチで二軍の練習試合で監督の指揮を執るように言われている夏野なつのという眼鏡をかけた青年コーチである。


ちなみにオーダーでは秀二は五番ピッチャー、神坂は四番ファースト、そして秀二の女房役の木内は七番キャッチャーのスタメンである。

またスコアラーには一年の亜衣が入る。


「練習試合と言っても相手は実力は十分にある相手だ。気を抜く事無いようにな」


『はい!』


「あと村神」


「はい」


「初めての試合だがお前には投げれるとこまで投げてもらう予定だ。ただ自分の体には十分に神経を尖らせろよ?木内もどこか異常を感じたらすぐにマウンドへ迎え」


「はい!」


と秀二に用心深く話をする夏野コーチ。

秀二はただ黙って聞いており、木内を見ると木内はコクリと軽く頷く。


(怪我の心配をしてくれてるのは嬉しいけど、行くなら一日でも早く上に上がって試合に出たい)


と決意を胸に整列をしにベンチ前に並ぶ秀二。

審判の号令がかかり両校の選手たちは整列をすると大きな声であいさつを交わした。


『よろしくお願いします!!』


グラウンド中に響き渡る挨拶の声。

そして秀二ら陵應の選手たちは守備のためグラウンドへと散らばり、秀二はマウンドへと上がると土を足で慣らし大きく深呼吸をした。


「さぁ陵應での一球目だ。気合入れていくぞ」


と呟く秀二。

打席に打者が入ると審判の腕が上がり、試合開始の号令がかかるのであった。


「プレイボール!!」


試合開始の合図が響いた。

マウンド上の秀二は木内からのサインにコクリと頷くとゆったりとしたフォームで注目の一球目を投じたのは、初球にストレートと予想した全員の予想を裏切るカーブ。

大きく弧を描くように投げられたボールは木内の構えるアウトコースいっぱいのミットに収まった。


「ストライク!」


初球のカーブでストライクを取る秀二と木内バッテリー。

打者も想定外だったのか反応できずに見送る。


「うっは!いきなりカーブとはな」


と笑いながら言うのは栗原。

その隣で見ていた安斎も苦笑いを見せながら試合を見つめる。


「木内らしいね」


「せやなぁ。アイツのリードはいやらしいねんな」


と話す栗原と安斎。

すると、その二人の所へ少し長めに生やした髪にイケメンともそうでないとも言えない顔立ちの選手がスマフォを弄りながらやってきた。


「おーっす。」


「おう来たんか谷本。てか、遅いやんか」


「えぇ。だって見学は自由だろぉ?それに俺の試合は午後からだしぃ」


と悪びれもなくヘラヘラと笑いながら話すのは谷本恵介たにもと けいすけ

見た感じではチャラ男という言葉が相応しく、少し長く伸ばした髪の毛を弄りながらスマフォを覗き込む彼であるが、陵應野球部のレギュラーである。


「お。てかキャッチ木内じゃん。アイツ二軍だったっけ?」


「おいおいいつの話や。今年の選抜終わってから落とされてたやん」


「あぁ、そうだったけか?気づかなかったわ。」


と話す谷本と栗原。

その二人の会話の最中にも試合は進み、秀二は先頭打者を三球連続カーブで内野ゴロに仕留めていた。


「てか村神、カーブしか投げてなくね?」


とスマフォを見ながら話す谷本。

彼はずっと顔を下に向けたままであるにも関わらず秀二の投じた球を当てていた。


「ホンマ、お前視野広いの。よく顔を下向けたまま見れてたのぉ。」


「んまぁ、眼だけをチラチラとねぇ。そんくらい出来なきゃダメだろ仁。お、電話。やぁミホちゃん~」


とすぐに着信が来たのか電話を取り話をしながら栗原らから遠ざかる谷本。

そんな彼に栗原はため息をつきながらぼやく。


「アイツの女癖、どうにかならんかいの」


「まぁ無理ではないかい?」


と苦笑いをしながら話す安斎。

そんな中、秀二はというと2番、3番に対して緩急をつけたピッチングで全て内野ゴロに仕留めていた。


「あぁホラ見れんかったやないかぁ!」


と怒る栗原。

すると電話を終えたのか谷本が戻ってくると栗原は隣に立つ谷本の脛を手刀で殴り、谷本は地面に崩れ落ちるように倒れこみ悶絶したのである。


そんな中、試合はというと一回裏の攻撃を迎えており高崎商業の投手陣に襲い掛かる。


とうまい事いく事はなく、高崎商業のテンポのいい投球にあえなく三者凡退に打ち取られてしまった。

あっけなく三人で終わってしまった陵應打線であるが、次の回には秀二と同じく注目の神坂が初打席を迎えるわけではあるが、まずは二回表の守備である。


二回表の高崎商業の攻撃は四番打者から。

この打者は公式戦でも四番を打っており通算30本のホームランを打っている強打者である。


(コイツは要注意、んでストレートに強いか…そんなら)


とサインを出す木内に秀二はすぐに頷くと振りかぶり二回の一球目を投じた。


そして、そこにいたほぼ全員が秀二の投球に驚いたのであった。


次回へ続く。


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