21話:ライバル
準決勝を見事逆転勝利で納めた陵應学園。
これで決勝進出となり甲子園まであと1勝に迫った。
新聞も連日秀二の特集をしており日に日にヒートアップしている。
連日の様に記者らが取材にやって来ては秀二にインタビューしたり練習を撮影したりと彼らも必死である。
そしてあっという間に決勝当日となった。
決勝の会場は横浜スタジアム。
球場には当然の様に満杯となっており秀二を目当てに来ているのであろう。
だが、今日は少し違っていた。
どうやら決勝の相手にも記者の人たちが群がっているのだ。
球場に着いた陵應の選手らが群がる記者の人たちを横目にバスから降りると一人の選手が歩み寄って来た。
「やぁ。君たちが陵應学園かい?」
その選手は野球部には珍しく少し長めの髪をしており顔つきは少しキリッとした目が特徴の選手であった。
その選手は陵應の選手らを見回し秀二を見つけると彼の前にズイッと出てくる。
「やっと見つけたよ。村神秀二」
「あ~…誰?」
「フッ。僕の名前を忘れたのかい?あんなに激闘を繰り広げたライバルなのに…」
ヤレヤレといった表情をすると間髪入れずに話し出した。
「僕の名前は入野弘。今大会№1投手さ」
「はぁ…」
と返事をする秀二に入野弘はフッと再び笑うと手を差し出しながら話す。
「中学の時は僕と激闘を繰り広げてくれたけど、今回ばかりは僕が№1の座を貰うよ。圧倒的な差を受けてね。この開慶高校のエース、入野弘がね」
「はぁ、どうも」
とポカンとしながらも返事をする秀二に入野弘は勝ち誇ったようにその場から去っていく。
一部始終を見ていた他の選手らも呆然とする中、神坂が秀二に話し掛ける。
「アイツ。川崎シニアの入野弘だった…か?」
「名前聞いて思い出した、でも…」
『俺らと対戦したか?』
入野弘、神奈川開慶高校の一年生エースとして県大会決勝まで導く左腕である。
彼の話の様に中学時代も有名で全国にも出た経験のある選手だ。
しかし、秀二や神坂とは一度も対戦経験が無く中学野球を終えたのである。
つまりは秀二と入野弘は神奈川県予選決勝が互いの初対戦となったのである。
球場の中に入った両選手達。
またスタンドでは満員のお客さんが試合開始を待っている。
「おい、開慶のエースって入野だろ?」
「そうだな。アイツ開慶にいたのか」
と話すのは浦原と嶋本と晋太郎。
3人は神奈川のシニア出の為入野弘の事を知っている。
「秀二がいなければ今頃神奈川№1投手だったかもしれないのか」
「さぁどうだろうか?」
と浦原の話に首を傾げながら話す晋太郎。
そんな会話をスタンドでしている頃、ベンチではオーダーが発表となり最後の確認を行う。
「さて、これで勝てば甲子園じゃ。気楽にいこうぞ」
『はい!』
大きな返事をする選手達。
この試合の先発は3年生の宮間峻が上がり、秀二は6番ライトで出場をする。
オーダー表の交換をした開慶高校の入野は秀二がライトで先発出場をしたことを確認するとドヤ顔で言う。
「フッ。これで今大会№1投手は、この僕という事が決まったね」
と笑みを浮かべ秀二を見下すように言う入野。
そんな事をしてる内に両者がベンチ前へと集まり一列に並ぶ。
「集合!!」
審判からの号令がかかり選手たちは一斉に駆け出し整列。
両者が相対する瞬間。
そんな中でも入野は秀二をニヤニヤとドヤ顔で見ており秀二は思わず目を反らす。
(目を反らしたという事は…僕の勝ちだね)
と勝ったことになってしまった入野と秀二。
互いに礼をしグラウンドへと散らばる選手たち。
陵應学園は先攻の為、開慶学園の選手たちがグラウンドへと散らばる。
マウンドに上がるのは一年生エースの入野。
ピッチング練習をし終え、陵應の打撃陣を迎え撃つ。
一番は谷本。
谷本は右打席へ入るといつも通り大きくバットを構える。
「こいよ一年坊!」
と威嚇気味に言う谷本に対し入野はニッと笑みを浮かべながら振りかぶる。
「そんな威嚇は意味ないさ。なんせ…僕は君は眼中に無いからね!」
「ストライク!!バッターアウト!!」
三球三振。
谷本はバットに一度も掠る事無く三球三振を喫してしまう。
「マジかよ…」
と呟きながらベンチへと戻る谷本は安斎と擦れ違い際に小声でつぶやく。
「あながちハッタリじゃあねぇかも」
「そうか…」
と言葉を交わし打席へと向かう安斎。
安斎は谷本とは逆に少しバットを短く持って構える。
「短く持っても無駄さ。僕の球は打てないよ!」
とインコースを抉るようなストレートを投じる入野に対し安斎は一球二球と見るが、三球目の外への変化球を当ててしまいセカンドゴロに倒れる。
ツーアウトとなり打席には神坂。
「神坂君か…君は一応僕のライバルだからね。相手してあげるよ」
と呟きながら投じた一球目。
高めに浮いたストレートを神坂は振りに行くと打球は高くレフトへと打ちあがった。
「え?」
と思わず言葉を漏らす入野は打球の方向を見る。
レフトへと高々と上がった打球だが、伸びが足りず失速してしまいレフトの選手のグラブへと収まりスリーアウトとなる。
「…フッ。だろうね」
とドヤ顔をしながらベンチへと戻る入野。
そして陵應の選手たちは入れ替わるように守備へとつく。
マウンドには宮間峻が上がりライトの守備に秀二が着く。
ライトへ向かう秀二を見ながら入野はフフンと鼻で笑いながら言う。
「やはり、僕の勝ちだね。この試合は」
まだ試合は始まったばかりである。
次回へ続く




