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1-2 ( 失踪の原因と思われる人物(加害者)の話 )




失踪の原因と思われる人物(加害者)の話




(失踪した本人の話だけではよくわからなかったので、失踪の原因と思われる人物に直に話をきいた)



だいたい一週間ぐらい前だったかな、なんか噂きいたのね。

強めの雨が降った後に代々木公園に行くとでっかい水たまりがあって、そこに間違ってものを投げ込んで沈めるとコスプレみたいな人が出てきてこんなことを言うの。


「旅人よ、あなたが落としたのはこの銀のXXですか、それともこの、金のXXですか?」


XXていうのはそのときに沈めたもので、なんか何でも金と銀になっちゃうらしいの。

剣を沈めたら「金の剣」と「銀の剣」、弓を沈めたら「金の弓」と「銀の弓」、角を沈めたら「金角」と「銀角」、消火器を沈めたら「金の消火器」と「銀の消火器」。

ここらへんはわかるんだけどさ、鋼の剣を沈めたら「金の鋼の剣」と「銀の鋼の剣」、魯山人の漆器を沈めたら「金の漆器」と「銀の漆器」になるらしいの。「金の鋼の剣」とか「金の漆器」とかって何?普通に金の剣と金の器じゃん。

偶然あそこに殷の青銅器とかプラチナメイル沈めちゃった人いるらしいんだけど、水たまりのコスプレの人が返してくれたのが「金の器」と「銀の器」、それと「金の鎧」と「銀の鎧」だったらしいの。

完全に劣化してんじゃん?

殷の青銅器て現代の技術じゃ再現できないらしいし、金とか銀よりもプラチナの方が貴重だし。

そのひとたち、せっかく商店街のくじ引きであたったのに!とかいって泣いてたらしいけどね。

殴り込もうにも水たまりの中だから浅くて入れないし、入っても靴が湿るだけだし。


なんでそんなこと知ってるかって?

いや知り合いが何人かその水たまりの噂、試したみたいでさ、いろいろ沈めてみたの。鋼の剣とか角とかね。

論語の原文とか夏目漱石全集とか試そうとか考えたらしいんだけど、授業で使うからもったいない、とかいってやめたみたい。

それにそんなのを金とか銀にされてもねー。重くなるし。

で、知り合い何人かって言ったけど、そんなにたくさん行ったわけじゃなくて、何回かリピートした人もいたの。でも同じ人が何度もやったらそこに出るって言うコスプレの人も飽きるだろうし、変装していったらしいのね。

色々やったけどだいたい室町時代の村人が着てそうな服でさ、「たびびとのふく」と「どうのつるぎ」を装備して行ったらしいんだ。

なんでそんなかっこうなのか、て?だってコスプレの人さ、劈頭に「旅人よ、」とかいうんでしょ?

だったら旅人っぽい格好してくでしょ。

あと旅人っぽい格好としてその装備だけだとちょっと単調かなーとか思ったらしくてさ、なんか別の要素を足そうとか思ったらしいんだ。

その知り合いの知り合いにハリウッド特殊メイク専門学校に行ってる人いて、割と優秀らしいのね。学校いきながら偶に特殊メイクの仕事請けてたり。

その人にメイクしてもらって、傷とか打撲とか、腰痛とか毒とか鳥インフルエンザとかを患ってるみたいにして、そうすればますます旅人ぽくなるからね。

中には貴族とか吟遊詩人とかギガンテスとかの偽装をした人もいたみたいだけどね。その人達の話はあんまり知らない。みたわけじゃないし、どうなったんだろ。

でさ、そんな話きいてるうちにわたしも試してみたくなったのね。

それでまず、どんなコスプレしてこうかな、て思ったの。

普段着だとなんか、癪じゃん?

だって、みんなコスプレしてんだよ?コスプレって面白い割に恥ずかしいわけじゃん。だから普段できないんだし。

でも今回はみんなやってるからね。

けどさ、いざ実際にやるとなったら迷ったの。

や、恥ずかしいからとかじゃなくって、種類たくさんあるし。

浴衣とかさ。

浴衣があんなにかわいいのって、浴衣もコスプレの一種だからだと思うのね。


浴衣、て普段着てない人がある特定の時期だけあのカッコウしてて、それが微妙に着慣れてないからいいの。

いつもは洋服とか来ててメイクとかもそれに合わせてて、着方も洋服の方が格段になれてんじゃん。

わたしさ、どういう服をよく着るかで体型て変わってくると思うのね。服で変わるのはその日の見た目だけじゃなくて、体の形とか動きとかさ。だから緩い服ばっか着てたら体の方も緩くなってくると思うし固い服ばっか着てたらも固くなると思うのね。

ワンピースとか緩いけどさ、ワンピース似合う子て大体いつもワンピース着てるじゃん。あれってもともと似合うからよく着るようになったんじゃなくて、よく着てるから似合うようになってると思うの。

体の方がワンピースに合った体型になってるんだよ。

そういう子がたまにジャケットとか着てるの見ると、あれれ、とか思わない?なんかいつもと違くない?とか。似合わないからやめといた方がいいとかそういうんじゃなくて、それはそれでアリだと思うけどなんか違和感あるよね、て。

高校とか中学の制服がブレザーかセーラー服かでもそうだと思うんだ。

友達とか後輩でさ、いや先輩でもいいんだけど、この人の高校のときの制服は多分ブレザーだったんだろーな、とか思ってきいてみると確かにブレザーだったり、逆にセーラー服だったっぽいと思ってきいてみたらやっぱりセーラー服だったり。

たまーにどっちかわかんない人がいてさ、どっちかわかんないけど敢えてどっちかというとセーラー服だから、セーラー服だった?てきいてみたんだけどさ、私服だったとかいってんの。

そっか、だからわかんなかったんだー、て納得したもん。私服だったらセーラー服みたいなのもブレザーみたいなのも着れるし。

その人、パーカーとか好きでさ、すごい似合ってんの。多分高校の時もパーカー着る事多かったんだと思う。パーカーだったらセーラー服とも近いし、だから高校の制服はどっちかというとセーラー服だったんだろうな、て思ったんだと思う。

男子も学ランだったかブレザーだったかで多分違うんだと思うんだよね。きいたことないからわかんないけど。

あと中国で纏足、てあるじゃん。中国では足首の細いのが美とされたから布かなんかで足首をきつく巻き付けて足を太くするの押さえる、てやつ。日本史の教科書に載ってるんだけど。

纏足が今もあるのかとか効果あるのかとかわかんないけど、そういうふうにがっちがちに締め付けてる以外にもさ、今わたしが着てるこの服だってある意味、拘束があるじゃん。

ジャケットとかさ、いやこれはジャケットじゃないけど着てる時と着てない時で動き違うでしょ。体捻るとなんか引っかかるから捻らなくなるし、捻ると服にしわが入りやすくなるしさ。

足とか胸とか露出度が高い服だとどうしても動きは控えめになって動きは押さえられるから体型もそういう風に変わってくると思うの。見えても構わない、みたいな人とそうじゃない人だと変わってくると思うんだけどね。そういうときはどう発達するのかとかわかんないけどさ。

いまわたしが着てるこの服は緩いけど、緩いから遠慮なく体を動かせるし、動かせるからその分の発達もしそうじゃん。

でも、だから緩い方が発達しやすくていい、てことじゃなくて、発達して欲しくないとことかあるでしょ。肩幅とかさ。

まあどう発達するかはいいとしてさ、みんな洋服着てるじゃん。わたしもだけど。だからどうしても体型は和服よりも洋服寄りになってると思うの。

そんなかんじで体型が洋服寄りになった人が浴衣を着ると違和感がある事になるでしょ。

コスプレもそうじゃん。

コスプレ着慣れてる人なんかいないでしょ?

いるかもしんなけど見た事無いし。

着慣れてないから体型もついてきてなくて、それだと絶対違和感があると思うのね。

で、その違和感がいい、て思うじゃん。そういうのがコスプレの面白いとこだと思うんだ。

浴衣のよさも同じとこから着てると思うの。

浴衣が普段着になってるとそういう、違和感とかはなさそうな気がするし、だから完璧に着こなしてる人が浴衣きててもあんまりねー、とか思うんだ。

いやかわいい人もいるけど。

知り合いにさ、洋服は飽きたから和服、とか言ってる人がいて、あれは似合ってるけどね。

だから代々木公園に着てくコスプレに浴衣とかいいかなーて思ったの。


でもとりあえず浴衣はスルーしたんだ。

なんかメジャーすぎるし、夏祭りとかで普通に着れるし。

だったらもう他にはカウガールしか無いかな、て。

なんで、て、最近やったゲームでカウガールがやたら強かったから。決まりでしょ。

そうきめたんだけど、ちょっと困ったのね。

だってカウガールの服なんて普通の店じゃ売ってないわけじゃん。

……、マルイワン?あそこで売ってんの、ゴスロリじゃん。間違ってゴスロリ買ってもね。

ていうかテキトーに言ってるでしょ?知らないと思うけど、ゴスロリの服て着るのムズいよ?

一時間ぐらい一人でがんばって着たのに店員の人に爆笑されたもん。爆笑するなよ店員、て感じだったんだけど。

で、着たとしてもハロウィンとかビックサイトぐらいしか使い道思いつかないし、ハロウィンまで押し入れの奥に詰まらせておくのもなんか忍びないし、ビックサイト遠いしさ。

まあゴスロリは最初から選択肢になかったんだけど、カウガールの服も買う場所見つかんないから先に行ったっていう友達に相談したの。


そしたらお店紹介してくれたのね。

その友達の友達がバイトでやってる、ていうアジア雑貨の店で、バリの衣装とかカウガールの服とか売ってるらしいの。

そこに行ったらちゃんと売ってたんだけどさ、代々木公園の水たまりにはみんなメイクしていってるわけじゃん。

だったらわたしも、てことでお店紹介してくれた友達にきいたらさっきいった特殊メイクの人そこのお店に偶然来ててさ。

頼んでみたら、おもしろそうだからいいよ、て。

もちろん雨が降って代々木公園に水たまりができなきゃ試せないから、そのときによろしく、てその二人に言ってその日は帰ったの。

でおとといに雨降ったじゃん?

三日前だっけ?

忘れたけどいい感じのにわか雨だったからすぐやんで、けっこう雨はげしかったから水たまりもできてるだろうなと思って衣装とメイクの人に連絡とったんだ。

お店が竹下通りにあるからそこに集合てことで。

すぐ集まったんだけどわたし衣装とかよくわかんないし化粧もあんまりしないからその二人にいろいろ任せたの。

そしたらいい感じに仕上げてくれたのね。

だからちょっと浮かれちゃったんだけど、メイクの人が、雨はげしかったけど油断すると干上がっちゃうよ?て教えてくれたからすぐ行くことにしたんだ。

二人ともすぐきてくれたんだから、ついてきてくれるのかな、とか何となく思ってたんだけどなんか忙しいみたいでわたしが一人で行くってことになったの。後日談を土産てことで。

代々木公園についたら、メイクの人が言ったみたいに、ところどころ地面が乾いてて、すぐきてよかった、て思ったんだ。

にわか雨ってすぐ乾くからね。

サッカーやってる少年とか路上ライヴの練習してるアフロの人とかいたんだけど、まあそれはいいか。

水たまりなんだけど、実は場所知らなくってさ、すぐわかるかなとか思ってたんだけど、あそこ広いじゃん。だからすぐにはわからなくてちょっと歩いたんだ。

干上がってたらどうしよう、とか思いながら。

まあそんな心配は要らなかったみたいで割と簡単に見つかったの。まあちょっと危なかったみたいで際のあたりがもう乾きかけてたけど。

でもここまできて、ちょっと大事なこと忘れてたのね。


なに投げ込もう、て。

水たまりに何か投げ込んだらコスプレみたいな人が出てくる、て話なのに何を投げ込むかとか忘れてたんだ。

カウボーイハットとかかぶってるけど、これ投げ込んで金のカウボーイハットとかにされても重いだけだし、まずかぶりたくないじゃん。

腰の、ホルスター、ていうの?わかんないけどカウガールの服の腰のポシェットみたいなやつに銃ささってたんだけど、それを金とか銀とかにされても、ちょっとね。借り物だし、逆に喜ばれるのも癪だし。

そんな感じで迷って、なにげなく周りを見てみたのね。

そしたらなんか意味の分かんないものが落ちてたの。

ピンク色の布なんだけど、たぶん、あれ、ブリーフだったんじゃないかな。

なんでこんなとこにブリーフ?しかもピンク色?とか思ったけどそんなこと考えるだけ時間のむだだし、他になんかないか探そうと思ったの。

そのときなんだけどさ、なんか後ろの方から少年が叫んだのがが聞こえたのね。

なんかの技名みたいなやつで、


かめは○は!


だったかな。

そんなかんじので、それと同時に後ろからサッカーボールがものすごい唸りを上げて飛んできたの。

わたしのすぐ横あたりを通り抜けていったんだけどさ、も、この辺。この右脇30センチぐらいのとこを、ぶおおお、て言いながら飛んでいったの。

こんの少年、なんてことしやがるっ、とか瞬間的に思ったんだけど飛んできたサッカーボールが気になったから振り向かずに見てたの。

何が気になった、て、かめは○はだからかな、光ってたんだ、サッカーボール。

しかもすごい威力でさ、地面から少し離れたとこ飛んでるんだけど風圧で地面がえぐれて砂埃が巻き上がってんの。

カウボーイハット、飛ばされそうだったから手でおさえたもん。

でさ、サッカーボールが飛んでった方向に水たまりがあったんだけどさ、さっきいったピンク色のブリーフがその間にあったの。

ああブリーフ飛ぶなー、とか思ってたんだけど、サッカーボールもブリーフに触るのが嫌だったみたいで当たる直前ぐらいでブレーキかかったみたいになったのね。

けど地面がえぐれるくらいだから簡単に止まるわけがなくて、止まれないとわかったのかそのまま上の方に方向転換したんだ。

……、そうそう。ヤ○チャの操気弾みたいに。

で、どこまであがるのかなーとか思ってみてたらどこまでもあがっていって、そのまま空の奥に消えちゃったんだ、きらーん、とか音がして。

きらーん、て本当になるんだね。


サッカーボールの少年は最初は、すみませーん、とか謝ってたんだけど、サッカーボールが空に消えるあたりで、ええー、またあ?とか呆然とした声でいってた。

ていうかその少年の方にわたし振り返らなかったんだ。わたしも呆然としてたから。

サッカーボールが光って飛んでったからってだけじゃなくて、サッカーボールが飛んでった方向と水たまりの真ん中にあったブリーフしかもピンク色がサッカーボールの風圧で飛ばされて、そのまま水たまりに沈んじゃったからね。

やっぱりかめは○はの風圧だからブリーフが吹き飛ばされないわけなくてさ、地面がえぐれるのはブリーフの直前あたりで途切れたんだけど風圧でブリーフは飛んでったの。

サッカーボールの風圧が水たまりのある方向に起こったから、ブリーフもそっちの方に飛ばされたの。

だいたい水たまりの真ん中あたりに行ったんだけど、ブリーフでピンク色っていっても布じゃん。

ふつう沈まないじゃん。

でもなんか沈んじゃってさ。


とぷんっ


て。

それみたら呆然とするでしょ?だってブリーフが沈んで水たまりの目の前にいるのがわたしってことは、わたしがブリーフを沈めたことになりそうだし。

ということは持って帰るのは金のブリーフと銀のブリーフ、てことになるじゃん。

しかもあのブリーフ、新品じゃなくて誰かが脱いでそのままにした感じのよれ具合だったのね。金と銀になるにしてもその形状で、てことになるでしょ。

そうなるとしたらすっごいヤでさ。それで、


そもそも脱いだ人は脱いだ後どうしたの!?あでも実際に沈めたのはわたしじゃないし、大丈夫か、けどこのままだと勘違いされそうだからなんか出てくる前に急いで別のもの沈めなきゃ、


とか思ってたら出てきたんだ。水たまりからでるっていう、コスプレの人。

で、



「旅人よ、お前の落としたのはこの金の斧か、銀の斧か。」



とか言ってきたの。

ちょっと意味わからなかったかな。

まず、よかった、金のブリーフじゃない!とか思ったんだけど次の瞬間には、ピンクのブリーフ沈めたのになんで斧になるわけ?こいつの精神、重力とか振り切ってんじゃないの?て思ったの。

一瞬でも金のブリーフじゃなくてよかったとか思った自分が悔しかった。

で、もちろん金の斧なんて重くてめんどくさそうなものは持って帰りたくなかったんだけど、そういっても金のブリーフなんてもっとイヤなわけじゃん。

だからちょっと考えてさ、間違いを指摘するよりも、



「いいえ違います。わたしが落としたものはそれではありません。」



て言ったんだ。

そのあとに何を言うかはすぐには思いつかなくて、とりあえず金の斧でも銀の斧でもない、てことだけでも伝えようと思ったのね。

でも言った後で気づいたの。

やばい、このままだと金の斧と銀の斧を渡される、て。

何も言わないでいると話が進んじゃうから何か言わなきゃ、どうしよう、とか焦って、



「わたしが落としたのはスーパーファミコン内蔵型の156型ハイビジョンテレビです。」



て言ったの。

あるわけないじゃん、そんなの。

スーパーファミコンとハイビジョンテレビって下手したら出て来た時期が20年ぐらい開いてるし、けどまあもらえたら笑えるからいいか、ネタとして。しかも金と銀だなんて、ぐらいに思って待ったてたらそのコスプレの人、ちょっと虚を突かれたみたいになって、



「不正直な旅人よ、お前の落としたものはそれではない、悔い改めよ。」



とか返してきてさ、すぐに忽然と消えようとしたのね、水中に。

わたしのものは何一つ沈めてないけど、せっかくカウガールの格好をしてまできたのにさ、それだとつまんないじゃん。

だから呼び止めて、



「いやいや落としたんだって、スーパーファミコン内蔵型196型ハイビジョンテレビ。」



て言ったんだ。

テレビの型番は憶えてなかったからてきとうに言ったの。

ぶっちゃけいらないからね。

スーパーファミコン内蔵とかしなくていいしあんまりでっかくてもわたしの部屋に入んないし。

で、そのコスプレ、今度は忽然と消えるようなそぶりは見せないで、



「ばかをいうな、お前の落としたものは桃色のブリーフだ。スーパーファミコン内蔵型の172型ハイビジョンテレビではない。」



とか言ったの。

そこでまた、やばい、て思ったんだ。

だってそいつ、ピンク色のブリーフをわたしが落としたと思ってるんだもん。

だったらなんで金のブリーフじゃなくて金の斧とか言ってくるんだろうとか思ったんだけど、それよりもわたしがブリーフ持ち歩いてるとか、そんなわけないって見た目ですぐ分かると思うんだけど。

それが超不本意でさ、そのコスプレの人をにらんでみたの。そのときはじめてそのコスプレの人みたんだけど、なんか微妙にがんばったコスプレだったんだ。キリストが着てそうなワンピースでさ、ヒゲがもじゃっとしてて髪があんまり手当てされてないロンゲで、ヒゲと髪が一体化してんの。

だから、



「ばかなこといわないで。わたしが落としたのはピンクのブリーフでもスーパーファミコン内蔵型の172型ハイビジョンテレビでもなくて、スーパーファミコン内蔵型の256型ハイビジョンテレビ。さっさとよこしなさい、この、ムサいヒゲ野郎!」



て言ったの。

もう若干ヤケだったのね。

ピンクのブリーフとか忘れてほしかったし、テレビの型番まちがって増やしちゃったし。でもそれをコスプレにいうのも癪だから押し通そうと思ったんだ。

コスプレはコスプレでムキになってるみたいで、



「さきほどはスーパーファミコン内蔵型の192型ハイビジョンテレビと言ったではないか。それとわたしはムサいヒゲ野郎ではない、ハンサムなナイスガイだ。」



て返してきたの。

ハンサムなナイスガイ、て何?て感じじゃん。

もう、突っ込んで下さい、て主張してるようなものでしょ?

でもそのまま突っ込むのもひねりがなくて面白くないから、いじろうと思って、



「2つ間違ってる。わたしが落としたのはスーパーファミコン内蔵型192型ハイビジョンテレビじゃなくてスーパーファミコン内蔵型の302型ハイビジョンテレビで、あんたはハンサムなナイスガイじゃなくてうざいコスプレマニア。ハンサムなナイスガイ?なにそれ、死語だよ。」



て言ったの。でも言ったあとでちょっと、しまった、とか思ったんだ。死語って言葉も死語じゃん。だから、



「いや、死語という言葉も死語だと思うが」



とか突っ込まれちゃってさ。でさ、そこでね。


目が醒めたんだ。頭のすぐ上で目覚まし時計がなっててね、ピピピピピピ、て。だからとりあえず砕いておいた。

うん、そうなんだ、夢オチ。

ふふふ、ごめん長々と話しときながら。

でも途中までは本当だよ。

どこまでだと思う?






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