3-1 ( 古物商の話 )
古物商の話
(先のアジア雑貨店が認識迷彩の羽衣を購入したのは古物商からだというので直接話をきいた。)
1
げひゃひゃ、よくわかりましたね、あっしの居場所が。
あっしは放浪の古物商でございます。
西に目当ての品があるときけば西へ向かい、東で品が高く売れると聞けば東に赴く。あっしは出向く側なのであって、出向かれる側ではないのでございます。
それは決ッしてあっしに出向かれるだけの価値が無いからではございません。あっしはどこかでお客を待ち受けるということを致しませんので、あっしに用がある方があってもあっしの方でその方に会おうとしなければあっしの処には辿り着けないのが常なのでございます。
なぜとなれば、あっしはお客を選ぶからでございまして。
あっしが会いたい思う方がいればその方のところへあっしが出向きます。当然のことながらあちら様にも都合がございますのであっしが拒まれるならば取引は成り立ちません。
しかし運の良いことに今まであっしが取引を持ちかけた方であっしとのかかわり合いを拒んだ方は一人もございません。これもひとえにあっしの心配りの細かさの賜物でございましょう。
逆に、あっしが会う気がない方があっしに近づこうとしたところで、あっしに会うことはできないのでございます。あっしは一所にとどまらず日ごと刻限ごとに場所を移り変えるのでございまして。
あっしは蜃気楼のように近づき難く、陽炎のように掴み難いのでございます。ただでさえ居場所が掴みづらい上に、居場所を掴んで向かったとしても既にそこは蛻の殻、あっしは別の場所にいるのでございます。
あっしを探している方があっしに街角で偶然会うこともございましょうが、その場合でも、その方はあっしをあっしだとは気づかずにただ擦れ違うだけでしょう。あっしはそれほど目立つような風体はしておりませんし、そもそも人の覚知などそれほどのものではございません。
何度か親しくさせていただいているお客であっても同じでございます。例えば竹下通りのアジア雑貨屋様とは親しくさせていただいている仲でございますが、何度か擦れ違っているにもかかわらずあちら様は気づくそぶりもございません。
そのような次第でございますからあっしに会おうとして会うというのは、不可能、とは申しませんが、非常に難しいと自負しているのでございます。
しかし、それなのにあなたはあっしを探し当てた。ただ者ではございますまい。何者でございましょう?
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………、なるほど、あの事務所の方でございますか、道理で。それならば納得でございます。あの事務所の噂は各地に轟いてございます。あっしはあらゆる土地で商いを営んでおりますが、あの事務所の勇名の聞こえぬ処は存じません。
……あ、いえ、身分証などわざわざお見せいただかなくて結構でございます。あっしの居場所を探し当てたということで十分に証明となってございますゆえ。仮にあなたが嘘をついておいでであの事務所の名を騙る偽物であったとしても、あっしを探し当てたその能力は紛れも無く本物でございます。あっしを探し当てた能力が偽物であったとしたら、あなたはどうして今こうしてあっしと話すことができているのでしょうか。
尤もあなたが何者であろうともあっしには関係のないことでございます。あっしにとって重要なのは、あなたがあっしにとって有益な方であるかどうか、また、面白い方であるかどうか、それだけでございます。商いを営んでおられる方でしたら今後のおつきあいのリストに加えさせていただき、商いをなさられていない方でも興味深い方であれば何らかの参考にさせていただけると存じているからでございます。
ただひとつだけ、あなたはあの事務所の方でおられる。
そのあなたがあっしに会いに来られた。どのような用件なのでございましょうか?皆目見当がつかないのでございますが。
………、ほう、認識迷彩の羽衣、でございますか。やはりそうでしたか。
いえ、認識迷彩の羽衣がどうというわけではございません。あっしが扱っております品々は珍奇であることを特徴としておりますのでそういった品々に関係のあるご用件だと推察しただけのことでございます。
あっしの扱っております品々の仕入れ先は世界各地でございますが、どの品も大抵、仕入れた土地では珍しいものではございません。それどころか地元では寧ろありふれた品でさえあって、地元民は見向きもしないことだってございます。
しかしそういった品でも他の国では目新しく貴重、需要が高いにも関わらず常に在庫切れ、そのような状況は其処此処で目にできることでございましょう。
例えばこの品、細長い筒のような形をしております金属棒。大きさは手頃で持ってみると全自動二輪のハンドルのように手にすっぽりと収まるようになっておりますが、ひとたびフォースを籠めれば、ほうら、ブウウンと唸り声を立てて筒の一端から赤い光が伸びてございます。
そうして伸びた赤い光は剣のように伸びて固定されます。この固定された赤い光は、お気をつけ下さい、触れたものを粉微塵と成し粉砕します。
おや、お疑いになっておられますね、では、ご覧ください、あっしらが今いる席の横のこの柱を、えい!と一薙ぎ。するとどうでしょう、柱が切断されたではありませんか。この切れ味、どうでございましょう。非常に鋭いではありませんか。まるで元々この柱はこのようにつくられたのだと錯誤するかのようなこの切り口。この切断面にあった元々の石工部分は消えたのかにみえますがそうではあございません。この赤い光が触れた瞬間に粉微塵となり粉砕され、辺りに紛れ空気の一部となったのでございます。
この品は購入したというより拾ったものでございます。タトイーンという国に行ったとき偶然にも宇宙船が着陸しておりました折に忍び込んだところ、その床に転がっていたのでございます。
そのような次第でこの品の名前はわかりませんが、光が物を断つという特色からあっしはこの品を、ライトセィヴァ、と名付けましてございます。
偶然床に落ちていた程でございます、きっとタトイーンの地元民には馴染みの品なのでございましょう。ところが国をわたってこちらの国に来てみればどうでしょう、このライトセィヴァのような品は一つとして見当たりません。
見当たらないからといって需要が無いわけではございません。勿論一般の方には無用の長物でございましょうが、剣を生業とする方々、武士、はどうでございましょう。
あの方々にとっては刀剣は己を守る手段、武器にして防具なのでございます。いとも容易く折れる剣や容易に刃こぼれする刀などを持てば命取りであることは当然、対峙した相手よりも劣った刀を持っておれば腕は上でも返り討ちに遭うこともある、あの方々が住まっているのはそのような世界なのでございます。でございますからあの方々はより強い武器を常に求めておられる。それは剣豪といえども同じこと。
あるときあっしは剣豪の噂を聞き、その方のもとを訪れました。あっしがその方にライトセィヴァをお見せしたところ絶賛なさりすぐに買い取っていただけました。
ただ一つ不思議なことがあったのですが、その方がライトセィヴァにフォースを籠めましたところ、伸びたのは赤い光ではなく碧い光でございました。オヤ、と思い試しにあっしがフォースを籠めるとチャンと赤い光が伸びる。そうしてもう一度その方にフォースを籠めていただくと矢張り碧い光が伸びる。どうしてあっしとその方との間でそのような違いが出るかについては皆目見当がつきません。
が、性能については違いはあるように思えませんでしたし、その方も特に伸びる光の色に拘りは無い様で、気にせずお買い上げいただけました。伸びる光の色はあっしが使うと赤、その方が使うと碧、気になると言えば気になりますが、それだけのことと言えばそれまでのことでございます。
その方の名前ですか?はい、通常でございますと、お客様のプライバシーは厳守としておりますのでお教えすることはできません。しかしその方は世に名を轟かせたいからプライバシー保護などとは言わずにその名前を知らしめて構わない、と申されました。
ただ、あっしの方でその方の名前を記憶しておりませんので、矢張り正確なところはわからないのでございます。あの方は顧客リストの一人として数えさせていただいておりますが、あっしの顧客リストは、どこへ行けば会えるか、それと、その人柄で管理させていただいてございます。名前は重要ではないのでございます。
ですから名前はわかりかねます。ただ、宮本村の出の剣豪で探し歩けばよいので見つけることはそう難しいことではございません。他の方にとっては難しいかもしれませんが、あっしにとってはそうではないので。そのような人探しはあっしのような生業を営む者にとっては必要な能力でございます。
他に扱っている品ですと、この果物がそうでございます。これから海賊のところに取引に行くところで、この果物は取引内容の一つなのでございます。あっしにこれを売った隊商は、ゴムゴムの果実、と呼んでおりました。なんでも、決して食べてはならない、とのことでしたので、この冷蔵庫に保存して運んでございます。
あるいはこの冷蔵庫も商品でございまして、黒帯冷蔵庫、というものでございます。黒帯冷蔵庫は防犯対策として柔道家の魂が込められている柔道のうまい冷蔵庫で、その強さは黒帯でございます。海賊との取引の後に、ある高等学校で取引がございまして全国大会出場を目指す特訓にこの黒帯冷蔵庫が欲しいとのことでした。普通に黒帯のインストラクターを雇うという発想は念頭に無いようでございます。あっしとしては商品を買っていただきたいので黙ってございますが。
また、あっしが黒帯冷蔵庫を見つけましたのはある地方の商店街でございます。タイムセールで売られていましたので購入致しました。
あっしの経験からして、電化製品はタイムセールのような時間限定の販売は致しません。そういった販売を常時行うのは世界広しといえどもこの国の中枢、かの電脳都市のみでございます。あの電脳都市では雨の日となると高速演算機が安く売られるのでございますが、地方の商店街で電脳都市の真似事をやればその半月後からは永久にシャッターを閉めることになりましょう。
でございますからあっしが見たその、タイムセール、という提示は装飾に相違ありますまい。タイムセールの文字が書かれた紙は黄ばんで所々ガムテープで補強してあるといった趣で、アンティークの雰囲気を醸す為にそのような装飾を施しているようにお見受け致しました。ああいった刻による風化を装飾として用いるといったことはそうそうできることではございません。きっと店主の熱い思いがあのような装飾を可能にしたのでございましょう。
そこまでやっているぐらいでございますから、黒帯冷蔵庫以外にも魅力的な商品はございました。たとえばワゴンに詰まっていた品で、スーパーファミコン内蔵型156型ハイビジョンテレビ、といったものがございました。あの品は面積数メートルに及ぶ巨大電化製品、それをワゴンに詰めるという点が心憎いではありませんか。
心遣いが一周回ってぞんざいな扱いのように見せるなど、そうそうできることではございません。即刻購入すべきだとは思いましたが、あっしとて無限に物が持てるというわけではございません。泣く泣くその品はあきらめました。恐らく次ぎにあの商店街に行く頃にはあの品はなくなってしまっていることでございましょう。
ここまでお話しさせていただいて、お気づきになったと存じますが、あっしは別に古物を専門に扱うというわけではございません。古物商を名乗っている以上、古物をメインに扱わせていただいておりますが、古物のみではなく世界各地の珍しい品々を扱っているのでございます。
おさがしの、認識迷彩の羽衣、もそういった品々の中の一つでございます。
3
ただ、認識迷彩の羽衣は多少でございますが例外的なケースでございまして、他の品よりも入手が難しいのでございます。入手が難しいと申しましても、値段が高かったり取引の相手が曲者であったりするわけではございません。難しいというのはそういうことではなく、売っている地域が問題なのでございます。ロンダルギア、という名の大陸で、太平洋の中間辺りにあることが多いのですが、勿論のこと地図には載ってございません。
ご存知でしょうが、一般に公開されている世界地図は皆が古い物で最新のものは一つとしてございません。というよりも、最新の地図というものは欺瞞でございます。最新の地図として公表されている物はございますが、内容は最新ではございません。
仮に最新の物を描くことができたと致しましても次の日には既に最新の物ではございません。日によって有る島と無い島や、季節によって形を変える大陸や、ステルスのように衛星で把握できない島などが無数に存在致しますゆえ。
アトランティス、ムーなどは磁場の関係で衛星では把握できませんし、ルルイエは定期的に海中に没するので取引も命がけでございます。そのような島や大陸は枚挙にいとまがございませんので、世界地図は新聞と同じように次の日には古い物となって行く物なのでございます。
世界地図と新聞の最新事情に於いて異なるのは、最新の地図はそれほど求められていない、ということでございます。大陸の形や位置関係が変わったところで多くの方にとって何の影響もございますまい。あなたのことだ、そのぐらいのことはご存知でしょう。しかし世界地図の現状がどうなっているかは如何にあの事務所に所属するあなたといえど把握することは難しいものと考えております。
あっしが認識迷彩の羽衣を手に入れた大陸、ロンダルギアは移動大陸であり、大陸全体で一つの国家が形作られてございます。また、同じような特徴を持つ地域にアレスガルド諸島というものがございまして、こちらは諸島全体でひとつの国家を形作ってございます。
ロンダルギア大陸はアレスガルド諸島と敵対しており、今は膠着状態でございます。
膠着している、と申しましてもアメリカとロシアの冷戦のように、互いの位置がわかっていながら攻撃のタイミングが掴めず口実も見つからない上に武力も拮抗している為に膠着している、というのではございません。武力の実情はあっしもわかりませんが、攻撃するタイミングが掴めないのは冷戦とは別の事情でございます。
その事情には光学迷彩という技術が大きく関係してございます。
光学迷彩はご存知でございましょうか。光の屈折率を変異させその場に有るものを無いものと錯覚させる技術でございます。
例えばこの酒瓶に光学迷彩を適用すれば酒瓶の代わりに酒瓶の向こうの景色が見えるといった次第でございます。アステカの仮面の一族、ワム氏の風の流法でも同様の効果が得られるのでございますが、あなたはこの程度のことはご存知でございましょう。
……、はい、左様でございます。失礼を。釈迦に説法、でございましたな。
その光学迷彩をロンダルギア大陸もアレスガルド諸島も島全体に展開しております。どちらの国も一時的にならば相手の位置を把握できるようでございますが、攻撃準備の間に移動されるか防御態勢をとられ、攻撃すれば国力の疲弊につながりますから結局は攻撃せずに拮抗は続く、といった様子でございまして、つまるところ互いに相手を捕捉することができずにいる次第なのでございます。そのくせどちらもEUに加盟していますので、世情や兵糧に心を砕く必要は無いようでございます。
これ以外にもロンダルギア大陸はあっしの知識に余る特徴を備えてございます。でございますからロンダルギアに取引にいくというのも一苦労なのでございまして、これが認識迷彩の羽衣を手に入れるのが難しいゆえんでございます。
少し前まではあの大陸にいくというのは多少ならず手のかかることでございました。場所はお教えできませんが、ロンダルギアの洞窟、というものがございまして、そこを通じてロンダルギア大陸にいくことができるのでございます。
ただ、そのロンダルギアの洞窟は獣が出る上にその獣が、強い。それだけなら他の洞窟と変わりないのですが、その洞窟には落とし穴が、多い。さらにその洞窟は深く長いのでございまして通るたびに白骨死体が増えている次第でございます。たまに白骨死体に話しかけるのですが、返事はございません。
しかし稀に、なんちゃって白骨死体、というものがございます。白骨死体と思って話しかけると返事が返ってくる事があるのでございます。しかしそれは白骨死体ではなく普通の人間が偽装しているものでございます。どうやってそのような偽装をなされているのかは存じませぬが、なんちゃって白骨死体であったとしても通常の人間と同様に獣に襲われることに変わりはございません。白骨死体に扮する事で得られるメリットが何かあるとは思えませんから、察するところ、趣味なのでございましょう。
以前、複数の白骨死体が「デスマシーン」と戦いながら電撃呪文サンダガを唱えているところをうっかり目撃して、ぎくり、としたことがございました。が、なんてことはない、それはパーティを組んだなんちゃって白骨死体でございましたので、ほ、と安心し胸を撫で下ろした次第でございます。その方々とはその場で連絡を取り合い、今では杯を酌み交わす仲でございます。
ロンダルギア大陸へ渡るにはそのようなロンダルギアへの洞窟を抜ける必要があったのでございましたが、最近は便利になったもので、羽田から航空便が出ております。一日一便のみなので不便といえば不便なのでございますが、それまではロンダルギアの洞窟を通っていたということを考えると比較にならない程の便利さでございます。
さて、既に申しましたようにロンダルギアは大陸全体に光学迷彩を展開している程でございますから科学迷彩技術に関しては世界に群を抜いております。対抗できる国は恐らくアレスガルドを置いて他にはございますまい。
科学迷彩で最も有名なものはステルス迷彩だと存じておりますが、ステルス迷彩と光学迷彩とでは比べ物になりません。ステルス迷彩はレーダーの探査を攪乱するだけであって視認することはできるのでございます。光学迷彩では視認もできません。ステルスのような高速戦闘で敵を攪乱するのならばステルス迷彩程度で十分でございますが、コンビニの銃撃戦などでステルス迷彩を展開したとしても何の役にも立ちません。
しかし光学迷彩は何もロンダルギアとアレスガルドのみの技術ではございません。電脳都市にあるロクスソルス社が開発を進めてございます。あっしはロクスソルス社製の光学迷彩を一度この目で見たことがございます。アカミカンスという液化素材を使っているそうで、なかなかの出来でございました。が、ロンダルギア製のものには到底かないません。ロクスソルス社製のものでは動いたときに背後に見える景色が多少ぶれてしまいます。ロンダルギア製のものはそのような雑な造りではございません。
あるいはモルドールーの指輪も同様の効果が得られると聞いたことがございます。が、あれはホビットが火口に投げ込んで溶かしたということで、あっしは見たことが無いのでございます。しかしたとえ見たとしても、ロンダルギア製の光学迷彩程の精度は期待できないかと存じております。モルドールーの指輪で光学迷彩を展開すると、ナズグルと呼ばれる死霊群に探知され追われるというではございませんか。ロンダルギア製では探知されることもございません。
あっしはロンダルギアを贔屓にしているわけではございませんが、科学迷彩関連のものを求めるならあの地が最も質の高いものが得られると存じております。
あっしが思いますに、ロンダルギアの光学迷彩の技術は恐らくこれ以上は発展のしようがないというところまで来てございます。しかし光学迷彩を極めたからといってロンダルギアはその完成度に安住し倦むことは無く、更なる迷彩技術に手を伸ばしてございます。
簡単なところでは嗅覚迷彩。嗅覚迷彩の展開領域ではにおいの発生の停止またはにおいの無効化という効果が得られましてございます。既に各国に輸出されているものでございますからご存知でございましょう。こちらの国の万物百貨店“東急ハンス”でも取り扱ってございます。消臭系ガジェットのコーナーに並んでおりまして、ここに来る前に立ち寄ったところ在庫切れのようでした。でございますからあっしの手持ちの嗅覚迷彩を東急ハンスへ販売させていただきました。
次に聴覚迷彩。聴覚迷彩の展開範囲には音の発生範囲を制限、あるいは音の発生場を錯誤させる効果が得られますから音響業界の方には特殊なパフォーマンスが展開できる、と重宝されているようでございます。こちらは東急ハンスでは取り扱っていないようでございますが、ある程度以上の大きさの音響機材店ならば扱っていると聞いたことがございます。
さらに存在迷彩というものがございますが、それよりも今は、その科学迷彩技術の一つ、認識迷彩についてお話し致しましょう。
認識迷彩というのは文字通り、認識に迷彩をかける技術でございます。
あっしらがおりますこの席の辺りでは香が焚かれ酒のにおいと混ざりあってございます。
今置かれたこの皿にはパスタが渦巻き天井の明かりに照らされてございます。
そしてあなたの前にはあっしが、あっしの前にはあなたがございます。
少なくともあっしはそう認識してございます。
認識迷彩の技術を用いれば、その認識に迷彩を掛けることができるのでございます。もしもここで認識迷彩が展開されていれば、あちらの席からこの席は空席に見えるかもしれません。他方、あちらの席から見たこちらの席にはピザが山と積まれているかもしれません。そのように認識させることが可能なのでございます。
そういった科学迷彩は何らかの装置が必要なのでございまして、通常は金属製の回路に定着させるのでございます。それが最近の研究で金属以外の物質にも定着させることができるようになったようでございます。例えば、布、とか。
……、左様、お察しの通り、それがあなたの求める、認識迷彩の羽衣、即ち認識迷彩を布に定着させた物なのでございます。
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あっしが認識迷彩の羽衣を手に入れたのは数ヶ月前でございます。その頃は羽田からロンダルギアへの便はまだ出てございませんでしたのでロンダルギアの洞窟を通って行き来をしておりました。しかしロンダルギアでの取引はそれよりももうずっと前から続けさせていただいていることでございますから、あっしにとってロンダルギアの洞窟を通るぐらいのことは日常茶飯事とは申さないまでもそれに近い物でございました。勿論少しでも油断するとあそこに積まれている白骨死体の仲間入りをすることになるので念入りの戦闘準備は欠いたことはございませんでしたが。
何度も通ってございますからあちらには馴染みのお客様がございます。以前の取引では、その方からは嗅覚迷彩ムシューダを買い取らせていただくなどしております。そのお客様は嗅覚迷彩の品揃えが豊富なようでして、つい先頃では新型の嗅覚迷彩、香り附きムシューダを販売しておりました。本来その場に充満しているにおいに迷彩をかけて別のにおいに思わせるという物でございます。その品は他へ持って行ってもそれほど売れるとは思えませんでした。おつきあいで少量入荷したのですが、今に至るも一つとして売れてございません。
対してあっしはゼンマイ式小型自動四輪チョロキューや、サウンドリアクションシステム搭載全自動舞踊植物ロッキンフラワーを持ち寄ったところ、なぜでしょう、苦笑いをなされて少量入荷しかしてもらえませんでした。音声認識型小型自動四輪ミニヨンクや小型音声保存装置マイポッドを持ち寄ったときは大量に買い取ってもらえたのでございますが。
それ以外にもその方とは様々な取引をさせていただいたのでございますが、あるときあっしがロンダルギアへいくと間の悪いことにその方の店舗はちょうど休業日のようでございました。あっしがロンダルギアで取引させていただいている方はその方だけではありませんが、生業の性質上、それほど多くはありません。古物商のような商売はそれほど多くないのでございます。そうでございましたので仕方なく他の方のところへいくことにしたのでございます。
別の方のところはそこからおよそ二駅はなれた通りに店舗を構えてございます。電車で移動しても宜しかったのでございますが、二駅程度なら歩けぬ距離ではございませんし、いくらロンダルギアが馴染みといえ知り尽くしているわけではございません。いつもは通らぬところを歩けば思わぬ出会いが待ち受けていることは大いにあり得ることでございます。そう思い歩き出し角を曲がったその矢先、その出会いがあったのでございます。
そこは広い道路の左右に分かれる並木道、幅のある緩やかな長い坂でございまして足下は石畳で固められております。その坂を上って行くと右手にはファッションビルが建ち並び、左手には銀杏の樹が立ち並んでおります。
銀杏の樹はときおり横断歩道があるところを除けば程よいぐらいの等間隔で並んでおりますが、銀杏の樹の下には銀杏の葉が散らばっているのみではなく、ときおりごく小規模の個人的なフリーマーケットが開かれております。
個人的なフリーマーケットでございますから銘々が売りたい物を売りたいように売ってございますので統一感は基本ございません。統一感があるとすればそれはその場の空気でございましょう。恐らくあの方々は意識してございますまいが、あの場の空気にそぐわぬ物は一つとして並べてございませんでした。
例えばそれは翡翠の宝石を埋め込んだブレスレットや指輪、他方ではすばやさが3上がるネックレスや攻撃力を10パーセント上げるアンクレット、またあるところでは「たからばこ」と見せかけて中身は「ミミック」や「ひとくいばこ」のドッキリ宝箱シリーズ、あるいはそれとも開かれ仰向けに並べられた京傘。すべてがロンダルギア特有の物というわけではございませんが、ものによってはロンダルギアでしか手に入らない、いやロンダルギアでもそこでしか手に入らないと思われるような品が並べられていたのでございます。
そのフリーマーケットの並びの一つに衣服を扱うものがございました。並べられているのは水の羽衣、天女の羽衣、バカには見えない羽衣などと、羽衣を主に扱っており、その中の一つが、認識迷彩の羽衣、でございました。
他のフリーマーケット同様、その羽衣を扱うフリーマーケットも用意しているのは品物と品物を並べる敷物だけでございまして、上にはただ銀杏の樹が豊かな葉を揺らしているだけでございますので雨でも降れば大変だろうと存じます。宝石や宝箱ならば雨にぬれようとも大きな害とはならないございましょうが、羽衣ともなれば濡れては価値が下がることは避けられないことと存じます。
が、流石はロンダルギア気質とでもいうのでございましょうか、あの方々はそのような些細なことは一向に気になされていないようでございました。羽衣を売る店主とて同様でございました。あっしがそこを見たときは晴れてございましたが、雨が降ろうと槍が降ろうとあの方々ならばきっと晴れているときと同様の様子をお見せくださることでございましょう。
あっしの取り扱う品々は多岐にわたりますので宝石や宝箱は一通り揃えておく必要がございます。宝石のフリーマーケットで売られていたすばやさが3上がるネックレスやドッキリ宝箱は目につけばすぐにでも在庫として買い求める必要がございます。それらはロンダルギア以外でも手に入るのでございますが、反対にどの地域でも簡単に手に入る物ではないのでございます。嗅覚迷彩の店舗の主人との取引はできませんでしたが、それらのフリーマーケットを見、これはめっけもの、と買い漁った次第でございます。
あっしは本来であるならば衣服の取り扱いは致しません。全く取り扱わないというわけではございませんが、手に入れば取り扱う、という程度の物でございます。そういう次第で常に衣服の在庫を揃えているわけではございません。なぜとなれば、衣服には古物が少ないからでございます。
古い服など着たがる方はそうそうございますまい。原宿の方であれば半年前の物も着ることは無い、ということはそう珍しくはございませんでしょう。あるいは古着、というものがございますが、ああいった品であろうともそれほど事情は変わりません。古いといってもせいぜい十年か二十年前の物でございましょう。百年以上前に織られたものとなると着られることは無く、飾られるだけでございます。
それらは意志を持っていることが多く、いたずらに着用すれば意識を乗っ取られることもございますから着ることはできないのでございます。着ることができない衣服を衣服と呼ぶことは間違いでございましょう。着られる物もございますが、そういったものを手に入れることはとても難しいのでございます。あっしでも、でございます。他の方でしたら百年以上前の衣服で着られる物を目にすることさえなく、それどころか存在すら知ることも殆どございません。
そのような古物でなくとも、特殊な衣服はそれほど見つかる者ではございません。そういったものを所有しているのは生身ではない人間、あるいは非死者である事が多いのでございます。その方々から特殊な衣服を譲っていただくのは至難の業でございますし、仮に譲っていただけたとしても、その衣服が特殊であるのは生身ではない人間や非死者が所有していたからでございますので、その方々が手放すとしたらその特殊な衣服はもう特殊ではないのでございます。
それに衣服というものの多くは布でできております。布に特殊な性質を与えることは難しいようでございます。これが甲冑など、金属であるならば簡単なのでございます。いえ、簡単と申しましてもあっしができるわけではございませんので、簡単というよりも、衣服に比べると難しくない、ということでございます。布に特殊な性質を与えるよりも金属に特殊な性質を与える方が難しくはないのでございます。
呪いの甲冑、というのをご存知でございましょうか。甲冑があり、どなたかがそれを装着しているわけではないにもかかわらずひとりでに動いて道行くものを襲う、あるいは招かれざる客を排除する、などでございます。あっしの知るものでは、弟切草の館のものがございます。
弟切草の館の周辺で雨に打たれ、館に入って備え付けの電話をつかって助けを求めようとしたところ、電話の傍らにある甲冑が偶然を装って手に持っていた斧を倒して電話線を切断した、などでございます。薬草職人の知古がそのようなことを話しておりました。その知古は切断された電話線をつなげて電話しようとしたのですが再び甲冑が動いて電話線を切断し、もう一度電話線をつなぎ今度は切断されないように電話の反対側に電話線を持っていってから電話しようとしたのですが甲冑はあからさまに不自然な動きで動いて切断したので仕方なく備え付けの電話を使うことはあきらめ、携帯電話を使ったそうでございます。
余談でございますが、その知己の話によると、弟切草の館は帰るときにいつも焼失するそうでございます。が、次に用があって行くと何も無かったかのように建っているのでございます。その薬草職人は弟切草をブレンド材料としてよく用いるそうで、いくら採っていってもすぐに使い切ってしまうそうです。弟切草は薬草として重宝しているそうですが、あまりたくさん採っていっても使い切る前に腐りますし、腐っては薬草としても毒草としても使えなくなるのでどうしても頻繁に弟切草の館に採りにいくことになるとのことでございます。あれだけ弟切草が生えている処は他には無いそうで。
それで、いつも燃えて崩れているのにどうして次にくると何事も無かったかのように同じ館が同じ古び方で建っているのかを訝しく思い、あるとき帰る振りをして物陰から見張っていたそうです。すると謎は簡単に解けたのでございます。館が燃え尽き火も消え、跡形も無くなった後に何処からとも無く、分かり易い博士のような風貌の人物が現れて、
やれやれ、またか、
などといいながら手に持っていたスイッチを押すと、館の焼け跡から地鳴りを上げながら全く同じ館が地面から生えてきたというのです。それをみて薬草職人は、成る程、と合点が行ったようでございます。
それと、その館にはミイラがいたそうでございます。ミイラを薬草の材料として用いる薬草職人もあるようですが、あっしの知己のその薬草職人はミイラは専門ではないので放っておいたそうでございます。
少し話が逸れましたが、金属に特殊な性質を与えたものはこのような呪いの甲冑のみではございません。といって、あっしもそれほど詳しくは存じません。特殊な性質を備えた金属鎧を手に入れるのはそれほど難しくはありませんが、重い上に需要が低いので割に合わないのでございます。
多くは興味を持たれるお客様は身につけはするものの、重い、とか、かっこわるい、などの理由で、購入していただけることはあまりございません。例えば以前、ミラーアーマーというものを仕入れた事がございます。これは呪文を跳ね返す効果のあり、それを見つけましたとき、これは!と思い買い付けたのでございます。見た目の印象はお客様にも好評で、皆様ご試着なさいます。
しかし試着した後で購入なさる方はしばらくの間ございませんでした。あるお客様にお買い上げいただけないわけをきいたところ、呪文を跳ね返す必要がある状況はあまり無いそうで。それに金属では重いので布でそのような物があれば欲しい、との事でした。そういうわけで布製の特殊な性質を持つ衣服を求めているのでございますが、先ほども申し上げましたようにあまり見つからないのでございます。
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しかしロンダルギアのそのフリーマーケットでは、それを扱っていたのでございます。
店主の話を聞くとなかなかどうして面白い。裸の王様、という話をご存知でしょうか。
ある王国での話でございます。
その国では毎年、決まった時期にパレードをやるそうでございますが、ある年のパレードの時期に王様は国一番の仕立て屋に、自分に似合う服をつくれ、と申し付けたそうでございます。
早速仕立て屋は制作に取りかかりました。その仕立て屋は国一番の仕立て屋であるだけでなく、王室御用達の仕立て屋でもあったのでございます。仕立て屋は王様の好みを知悉しておりましたから、パレードの服を依頼されたときも何ら迷うこと無く何をつくるべきかを見定め、即座に作業に取りかかることができたそうでございます。
ただ、王様の好みを知悉していたとはいっても何かの拍子に王様の好みと違えるものをつくってしまうこともありましょう。そういった事を防ぐため、制作過程を逐一知らせながらパレード用の服をつくったそうでございます。
そうしてできたのが、バカには見えない羽衣、でございました。
仕立て屋はバカには見えない羽衣がその名の通りバカには見えない事を伝え、王様は早速それを試着いたしました。一時間かけて着終えて鏡に向き合いましたが、しかし激怒して、仕立て屋に怒鳴ったそうでございます。
これは女物ではないか、私は男だ!
と。
つっこむ処、そこ?今つっこむんですか?と仕立て屋は思ったそうでございますがパレードは目前、当日に仕上がったものでございますから修正はできなかったのでございます。王様は仕方なしにバカには見えない羽衣を纏ったまま堂々と王の道を歩いたそうでございます。
ところが、その道の途中である子供から次のように叫び問われたのでございます。
おじちゃん、どうして全裸なの?
と。
王様は再び激怒して、子供に怒鳴りました。
私はおじちゃんではない、ハンサムなナイスガイだ!
と。
つっこむ処、そこ?全裸はスルー?と全国民は思ったそうでございます。
子供はバカだったようで、バカには見えない羽衣が見えなかったのでございましょう。それは仕方が無いとして、王様はおじちゃん呼ばわりされるのは我慢ならなかったようでございます。当然パレードは中止、バカには見えない羽衣は売り払われ王は泣きながら失踪したそうでございます。
それで、ロンダルギアのそのフリーマーケットに並んでいるものがその王様が身につけていた、バカには見えない羽衣、だったそうでございます。直にその国から買い取ったわけではなく、たまたまその店主のもとに辿り着いたとのことでございました。
買おうと思ったのですが女物ということもあり、やめておいたのでございます。装飾は見事でございますが美女がその服を来て歩いたとすれば、バカにとってその羽衣は見えず、下着姿にしか見えないのでございますから買い手も附きづらいと考えた次第でございます。パレードでバカには見えない羽衣を身に着けた王様が子供に全裸と呼ばれたという事は、王様は下着すら身につけなかったようでございますから、それではますます避けるべきものでございましょう。そのような品をお客様にお売りするわけにもいきませんので。
しかし、バカには見えない羽衣を買わないからといって、折角見つけた特殊な性質のある衣服を扱う店、何かを買わない手はございません。しかしいずれも値段の張るものばかり、そのときのあっしの持ち金では一着しか買えなかったのでございます。であれば、そこはロンダルギアでございます、ロンダルギアらしきものを買うのが最も正しい買い物。
でございましたので買うのは名前から判断するに、認識迷彩の羽衣、を措いて他にはございますまい。
あっしは認識迷彩の羽衣を買い、浮かれ気分でホテルに帰りました。しかしそれは失策でございました。認識迷彩の羽衣とはいうが、どのような効果があるのか、こともあろうにそのことを聞き忘れたのでございます。
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細かい性質を聞こうとあの店主に再び会いにいこうとも考えましたが次の取引まで時間がなく、急いで次の取引先に移動する必要がございました。それに、どうせ他のお客様に売るのですからあっしが詳しい性質を知っている必要はございませんな、そう思っていたのですがこれは古物商という生業の者ににあるまじき態度。あっしのような古物商が扱うものは、買い取っていただく方にとってはどのようなものかは知れないものでございます。あっしが細かく説明をしてさし上げなければあちら様にとって価値のあるものか無いものかは判断がつきません。
さらにまずいことに、認識迷彩の羽衣を売った先は以前スリーディーオーを買い取っていただいた方。スリーディーオーといえばロンダルギア産のゲーム機で姿を現すと同時に瞬く間に悪い意味で市場から消え去った残念な電化製品。その消滅速度は携帯ゲーム機リンクスと謂えど足下に及ばず、あれ以上に無かったことになったゲーム機は存在いたしません。大抵の方ならばロンダルギア産というだけで高値で買い取っていただけるというのに、竹下通りのあの方はスリーディーオーがロンダルギア産だと知ってからはロンダルギア産といえども疑いの眼で判じる鑑識眼の持ち主。認識迷彩の羽衣の性質をうまく説明できればそれなりの値段で売れたものを、認識迷彩の羽衣についてあっしが知っていることといえば認識明細の羽衣に付いてきた説明書のみ。足下を見られて安値で買い叩かれてしまいました。そのようなことがございましてあっしは認識迷彩について調べました。
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さて、そろそろ時間でございますな。折角のご縁です、これを差し上げましょう。「あぶないみずぎ」でございます。
……なに、それはいいから認識迷彩の話をきかせてほしい、と?申し訳ございませんが、無理、でございます。時間がございません。ですが実例ならお目にかけることができます。この柱をご覧ください、あっしはこの柱を先ほどライトセィヴァで切断いたしました。おぼえておいででしょう。
が、今はどうでしょう、何の切り口もございません。触れても分かりません。しかし実際は切断されてございます。
これが認識迷彩でございます。
いまあっしは時間がない、と申しました。その時間とはあっしが次の取引先に向かう時間、ではなく、この店が崩れるまでの時間でございます。
あっしはあなたに一つだけウソを申しました。さきほどあっしは、あっしの前にはあなたが、あなたの前にはあっしがございます、と申しました。
あれはウソでございます。
あっしはここに本当はおりません。
ライトセィヴァで切断されたこの柱は店の中心部、倒れれば店全体が崩れます。しかし他の柱には手をつけてございませんので崩れるまで時間がかかります。
その崩れる時間が、いま、なのでございます。
本題と外れた話が多かったとはお思いになられなかったでございましょうか?時間稼ぎでございます。あっしが一人で店のこんな奥の席に座っていることを不思議にお思いになられませんでしたか?崩れたときに脱出を難しくする為でございます。
そして当然のこと、柱は一閃したぐらいで崩れるものではございません。
では数回斬りつければどうでございましょうか。
あのときあっしは柱を一閃しただけのように見せましたが実際は根こそぎ破壊したのでございます。
これが、認識迷彩なのでございます。
ご安心ください、その他のことは一切ウソは申しておりません。
少なくともあっしはホントウだと信じております。
その「あぶないみずぎ」も本物です。渡したのはずっと前でございますが。
冥土の土産としてお納めください。
……、なぜこのようなことをしたか、でございますか。
それは、余興、でございます。
最初に申し上げました通り、あっしはあっしが会おうと思った方としか会いません。
そしてあっしはあなたに会おうとは思っていませんでした。
だからあっしはあなたを消すことに致しました。
それであなたが消えるというのならばあなたがその程度の方だったというだけのこと。
しかし生きてここを出られるというのならばあなたは面白い方だということ。
あなたが面白い方であるならばまたお会いしとうございます。
それではごきげんよう、生きていたらまたお会い致しましょう。




