出会い④
「了解。…………記憶を消すだけで本当に良いんだね?」
荻が何かを確かめるように萩に聞く。
「うん。良いんじゃないかな?それとも……」
萩が何かを言いかけると少女が割り込んで来た。
「なに話しているか知らないけど、僕を……!うっ……」
萩が笑顔で少女の腹に拳を打ち込むと先程とは全く別人のような声で少女に言う。
「人の話は最後まで聞くものですよ。……少しうるさいので、黙っていて下さい。」
その言葉を聞き終わった時には少女は萩の腕の中で沈んでいた。
「さて、邪魔者も居なくなった所ですし荻、一応確かめておいて下さい。吸血鬼が紛れ込んでいないか、どうか。」
萩の声がいつもより厳しくなる。それに同調するように荻の顔も、厳しくなる。二人の瞳が綺麗な薄紫から黒に近い紫になっていく。……この一連の動作はまるで思い出したくも無い薄暗い過去を憎んでいるかのようだった。
「了解。………………一つだけ訂正、良い?」
萩が無言で頷く。
「裏切り者は……アルッティ=スコッチョ=レインバードは……レインバードについた吸血鬼は……同族でも何でも無い、ただの抹殺すべき敵だ。………だから兄さん、同族だなんて間違っても言わないで。僕はいつまでも何があっても兄さんの味方だから」
そう言って荻は自分の手首から血を流す。ウラァァァァギュリュ
と、何かに強く反応するかのようにごろつきの何人かが暴れだす。
「やはり居ましたか。………舐められたものですね。下級の者を送り込んで来るとは。………何を考えているのか分かりませんね、アルッティ=スコッチョ=レインバードは……」
萩がそう言うと荻が顔を強張らせて聞く。
「萩兄、殺る?」
「……そうした方があやつらも、よいやもしれぬ。」
荻が目を丸くする。
「…………萩兄、喋り方昔に戻ってる。」
「そうかのう?意識してるつもりは無いのじゃが…………こうなると我輩の自制心が無くなるのも時間の問題じゃ。おぬしら、殺されたくないのならば、生きたいと願うのならばはよう退散してくれると我輩はうれ……」
ごろつきの一人が萩の話を遮った。
「あんたさぁ、さっきから何ゆうとるのかわからへぇん。うるさいから黙っててくんね?」
荻がはぁ、とため息を付いて左手を頭に当てる。荻が心の中で、
『萩兄、頼むから酷いことはしないでよ。こうなった萩兄は、僕でも手に終えないんだから… 』
「人の話は最後まできちんと聞くもの、じゃ」
次の瞬間、話を遮ったごろつきは地面に延びていた。
地面に延びているごろつきを見て、ごろつきの一人が言った。
「圭祐の奴…首チョップ一回で延びてやがる。……でも普通、首チョップ一回で延びないよな。それにあいつ、あの場所から動いたか?」
ごろつきの仲間たちは首を振った。
「…………くだらない考えはやめにしよう。吸血鬼がここに居る訳がない。………お前ら、やっちまえ。」
今まで黙っていた、下級の吸血鬼が萩に向かって攻撃を仕掛ける。
「こやつらも自分の実力という物を、わきまえていないのかのう。困ったことじゃ。全く。」
萩が手を振るだけで下級吸血鬼は、バタバタと倒れていく。
「これを見てもなお、我輩を倒せると思っているやつはいるまい?」
妖艶に笑って、ごろつきたちに問い掛ける。先程まで威勢を張っていたごろつきの頭と思われる人間が、仲間に
「おい、お前ら逃げろ。今回の相手はマジでヤバい。……ぼさってしてないで早くしろ!!!!」
萩が黒く黒く、どす黒く笑う。
「まさか、ここまで見てもらって我輩がそなたらを逃がすようなあまちゃんとでも?」
逃げようとしたごろつき逹がその場で固まる。
「良い判断じゃ。では、」
パチンッ
と萩が指を鳴らすと、ごろつき逹がバタバタとその場に倒れて行く。
「さて、いくかのぉ。なぁ、荻。」
萩が少女の荷物を、荻が気絶した少女を連れてその場を去る。
更新遅くなってしまい、すみません( ;∀;)
今回の話で色々わかったと思います。まだまだ続きますのでよろしくお願いいたします。
全く関係のない話しになりますが、作者、奏が最近知ったことがあります。超ド級の『ド』の所の意味です。
なんと、20世紀初頭にイギリスが造った超性能の戦艦、
ドレッドノートに由来する。ということを最近知りました。いやぁ、お恥ずかしい。
ということで、【生きているうちに】これからも宜しくお願いします。