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誘い笑い

初投稿です。気軽にできてうれしい。


「わっはっはっは」と大声で笑ってるやつがいる。


「人の笑い方にどうのこうの言おうとは思わないが、ただ呑気に笑ってるやつはクソだ。」

ぶつぶつと呟いてる。こいつが楠木隆吉(16)である。


いつものように教室の一番後ろの席で一人でいると、隣の席のロングの髪の人が


「ねえ!楠木君!昨日のテレビ見た?すごい面白かったよね!」と、話しかけてきた。

目をとてもキラキラさせている。


「ご、ご、ごめん。し、し、し、知らない。」

おどおどしく答える。


そう、なぜなら高校に入って2ヶ月初めて人に話しかけられたのだ。おどおどしくなるのも無理はない。

この一言話しただけで彼の脇は局地的豪雨となった。


(ふぅ、あんなやつと話したところで何も生まれない。あんなやつと話すくらいならさっさと家に帰って国語辞書の続きを読みたいぜ。)

そんなことを思ってる内に、「キーンコーンカーンコーン」と授業が始まった。




この学校の授業は特殊で、授業の最後の方に教師に指された人が一笑いとらなければならないのだ。

これが楠木にとってとれほどの地獄か。


「よーし。もうそろそろ時間だなー?じゃあ今日は誰を選ぼうかなー?」

数学教師田中が生徒を選び始めた。


「俺!俺!俺!」「私!私!私!」

授業終了間際になると各教室で声が飛び交う。


(来るな~来るな~)と思いながら、必死に「俺!俺!俺!」と目を閉じながら叫ぶ楠木。


「うーん。それじゃあ今日はお前だ!」

叫ぶ田中。


バッと目を開けると田中の指の先にいたのは自称一番おもしろいと言っている簿美意だった。


「よっしゃー!やったるでーやったるでー」

大きな声を出しながらみんなの前に出てきた。


(お前関西人じゃないだろ)素でツッコミをいれる楠木。


簿美意が前に出るだけで笑ってるやつが数人いる。簿美意はそれほどまでにこの2ヶ月で笑いの地位を築き上げていたのだ。


「よーしよーし。じゃあここで2ヶ月間温めておいたすげーギャグを披露するぞー!!!聞いとけー!!」

自信に道溢れている簿美意。


「おおおおおおあ、、!、!!」

観衆も期待が高まっていく。


「布団がふっとんだ。」

一言言った。


「・・・・・・・・」

教室内は静まりかえった。


(布団がふっとんだごときで笑うやつなんているか)楠木は思っていた。


しかし、次の瞬間

「はははははははは」

一人が笑い始めたのだ。


すると、段々と伝染していき、みんな笑い始めたのだ。


(どういうことだ?布団がふっとんだなんて古典的なギャグだぞ??こんなので笑うやつがいるのか?)

頭の硬い楠木は冷静にこの状況を分析することしかできなかった。


(そうか!誘い笑いか!普通なら笑わないはずなのに一人が笑い始めてからみんなが笑い始めた。簿美意のやつめ。誰かと組んでいやがったな。卑怯なやつめ。だがこれで俺が選ばれる時に俺も同じ方法でいけるな。金でも渡して誰かに頼んでおくか。)

楠木はまだ選ばれたことがなかったのだ。


「キーンコーンカーンコーン」授業が終わった。



「ふぅ。」

席を立つ楠木。


「今のうちに仲間を作っておかないとな。」

周りを見ながら話しかけられそうな人を探す。


(そうだ!さっき話しかけられたあのロングの子にしよう!)

隣の席の人に話しかけた。


「あ、あ、あ、あの~?」恐る恐る話しかける楠木


「ん?なあに?」笑顔で答えるロング子。


「も、も、も、もしよかったら」

緊張であまり声が出ていない楠木。


「なに?聞こえない!」

少し声を荒げるロング子。


「ひぃ!ごめんなさい!」

楠木は急いで教室を出ていった。


(くそ!あのやろうめ。そんなに髪が長いのが偉いのかよ。少しくらい薄毛に悩んでる人に分けてやれよ!次の授業ギリギリまで教室に入れねえじゃねえか!)爪を噛みながら廊下を歩く。その姿を奇妙な物体を見るかのような周りの目。


「キーンコーンカーンコーン」とチャイムが鳴る。



「やばい!授業が始まる!まだ誰にも頼んでないが選ばれないだろ!」

急いで教室に戻る楠木。危機一髪で教師が来る前だった。


(セーフセーフ。こんなので成績を下げるわけにはいかない。)安心する楠木。それをロング子が気味悪そうに見ている。


「よーし授業始めるぞー。」

教師が言い、授業が始まった。



「ふぅ。じゃあ、ここみんなが写し終わったらそうだなー。今日は6月8日だから出席番号8番!この人に一笑いとってもらうからなー。」

楠木にとっての地獄の宣告だ。楠木は8番だったのだ。


(どうする??どうする?仲間もいないぞ?地位もないぞ?友達もいないぞ?この完全アウェーな状況でどうやって一笑いをとればいいんだ?そもそも俺自身まともに笑ったことすらないのに。笑いってなんだ?笑い?笑い?笑い?笑い?)頭の中が笑いで埋め尽くされおかしくなる。


「よーし。みんな写し終わったなー?じゃあ8番!えーっと?楠木!よろしく!」


「は、は、は、はい!」

勢いよく立つ楠木。


(や、や、や、やばい。。。笑いすらなにかわかってないのに、む、む、む、むりだ。)


「どうしたー?はやく前に出てこい!」


ゆっくりと足を踏み出していく楠木。楠木が教壇の前に立つと全員が楠木に注目していた。


(ど、ど、ど、どうしたらいいんだ?くそくそくそわからないわからない。)


教室がざわめきだす。


(くそくそくそうるさいうるさいうるさいうるさい)


楠木は天井を向き耳を両腕でふさいだ。


「わっはっはっは」


と大声で笑ったやつがいた。


簿美意だ。


簿美意だけ一人で大爆笑している。


「なに笑ってんだよー?簿美意」

簿美意の友人が聞く。


「だってよー!あいつ脇汗びちょびちょだぜー!?いくらなんでも脇汗やばすぎるだろ!!」


楠木の脇は朝からの負担で半端ないほどに濡れていたのだ。


それを見た観衆は簿美意に続いて

「はっはっはっは」

笑い始めた。


楠木はいまだに天井を向いたまま何も聞こえてないらしい。

教師が肩をポンポンと叩くと楠木は教室が笑いで溢れていることに気がついた。


(ん?どうした?これ?もしかしてあんなポーズで笑ったのか?こいつら?)


なんとか安心する楠木。



「よくわかんないけど、よかったです。」一言挨拶して席へ戻っていった。

不定期で書いていきます。

ストーリーは固まっているので、時間があるとき少しづつ書いていきます。

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