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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界⇔現実

作者: てらこ

事の始まりはありえないくらい非常識でありえなくないほどありふれたことだった。

私はある友達に指摘されたことを考えながら道を歩いていたのだ。

友人は『貴女は本当に兄のことが好きなのね。これってブラコンっていうのよ』と言う。私はぎこちなく笑って話を流した。でも本当はかなり気になっていて果たして私はブラコンなのか?なんなのかを考えていたのだ。

子供の笑い声も遠く聞こえる夕日が射す坂を下っていた。制服に通学バック、ローファーを身につけた私はどう見ても高校生でただの高校生である。

私は黙々と考えながら坂を下って行ったのだが一歩足を出したところで体が動かなくなった。

「‥っえ」

薄い声を上げた下を見るとそこには今時流行らないような2000年代の漫画にでも出てきそうな魔法陣が淡く光っていた。

そこからはもう川の流れのように夢物語の定番のように光が私を包み異世界へと召喚されてしまったわけです。



                       ▼


「…というコトなんです」

「気になる単語は所々あるがお前は兄のことが好きなのか?」

「それがわからないんです」

私の言葉のニュアンスは恋に戸惑う乙女ではなかった。どちらかというと恋を理解したが恋する相手がスパイでもあったかのような相手を分からないような音の違い。

「好意にわからないもわかるもあるものか。好きか嫌いか、全てはそれだけだ」

「ええ好きなのはわかるんです。愛してるといってもいいのです。だけど私は誰に恋をしているのかわからないんです」

「…兄ではなくほかの人間だと?」

異性だと限定しないのが彼らしい

「いえ、戸籍上は兄であるあの人に恋焦がれているはずなんですけど」

「くどい。お前は何が言いたいのだ」

イライラしたのか指をカチカチテーブルで鳴らす彼を無視してぬるくなった紅茶を口に運ぶ

だってこんな馬鹿な話を説明するのはまるで自分が阿呆のように感じてしまう。何事もざっぱりすっきり竹を割ったような性格の彼には私の複雑怪奇な悩みは蹴り殺されてしまうだろう。

「…兄であるはずなんです。だけど私はどうしても兄とは思えなくて」

「兄とは思えない?それはただの逃避ではないいのか、兄でなければ許される恋情だと?」

「いえ、兄であってもなくても私はあの人が好きです。だけどそこが問題なんです」

「一途なことだな」

「はい私は昔からあの人に全てを捧げてきたつもりです。だけど所詮私たちは義理の血の繋がらない兄弟でして…」

「ほう、それは複雑なことだ。だが兄弟であることにお前が血を望むか情を望むかの違いだろう」

「私はそれが定義できないんです。兄だけど兄じゃない、どちらが正解なのかわからないんです」

そうして俯いた私を彼は鼻で笑い飛ばした。

「お前の頭は飾りか?現実ではお前とその兄とやらは正真正銘の兄弟だ。ならそんな些細なこと考えるだけ無駄だろう。所詮許されぬモノだ」

「そんなこと言ったらすべての話が終わっちゃいますよ」

「終わっていいではないか。何度も同じ話を繰り返し繰り返しすればいい。結論などとうの昔にあるのだろう?」

「…確かに、幼い頃から結末は決まっていましたね」

そうしていつものように心に決着をつけた私に彼はニヤリと笑った。


「で、貴方の方はどうなんですか陛下?」

そう、この私を鼻で笑い飛ばし終わりのない話に付き合ってるのは正真正銘の異世界の王様であるグラッセル国王陛下である。歳は15で金髪の長い髪を後ろで結び緑色の瞳はどこか陰がある。

もちろん異世界の掟か何かに従いとんでもない美形でまだ少年という年なのにその美しさはとどまるところを知らない。

「姉上も強情なものだ。どれほど揺さぶってもまるで鉄のようにびくともしない」

「…陛下ってやっぱり鬼畜ですね」

「言ってくれるな。だがお前が甘すぎるのではないか?」

「私は好きな人の幸せのためなら自分の幸せは捨てるタイプですから。陛下は肉食動物みたいにガツガツいっちゃうタイプでしょ?」

「同じ土俵で比べるだけ無駄か。お前の弱さでは私の考えとは合わないとみた」

私は弱い。弱いから結末を簡単にして優しいふりをする。

「せいぜい言ってください。私たちの恋慕は所詮夢みたいなものなのですから陛下もお忘れないように」

「ハッ お前と同列に語るな頭に来る。私は夢はどんな手を持っても掴むものだと考えてるからな」

「そんなんだから残虐非道の悪食王とかいわれるんですよ」

「悪食、か。確かに実の姉を食べているのは間違いないな」

「…うわ〜。それはどちらの意味で言ったのわかっちゃうのがつらいです」

この陛下が悪食王と言われてるのには理由がある。

実の姉から王位継承権を奪い塔にとじ込め毎晩食らう、そう性的な意味で食らっているからだ。

彼が言うには純粋な恋慕が現実に出ることで歪んでしまったというのだが彼の性格が悪すぎるからこんな泥沼悲劇の惨劇舞台になってるのだと思う。

ここまで聞くとわかったと思うが私と陛下には共通点がある

自分の兄弟を愛してしまってるという異常な箇所が


「本当に現実ってままならないものですね」

「そんなこと今に始まったことか」


私はため息をつき陛下は笑う、まるで同じだけど同じじゃない私達を表していた。


                       ▼


「王妃様、本日のお召し物です」

「綺麗な白ね」

「王妃様の黒髪に良く映えますわ」

ほかの侍女たちも同意しながら「ええまったく」だとか「本日も美しい」とかいろいろ言っている

ちなみに私はこの国の王妃である。

異世界に召喚されたのは陛下が実の姉を食べちゃっててこれはまずいとおもった神官(驚くなかれ、剣と魔法のファンタジーである)に勝手に召喚されて陛下と会った瞬間からどこか同じ匂いを嗅ぎ分けた私たちはその異常性癖をもって分かり合い私は陛下の姉との時間を邪魔しないための王妃として、私は一生安泰を約束するということで今の関係に落ち着いたのである。

といっても私の地位なんて陛下の意向で軽く吹き飛ぶものであの陛下のお姉ちゃんがストックホルム症候群かなにかで陛下を好きになっちゃえば私など殺されて終わり。だけど私は機転が回ったわけでもないので流され流されで王妃になった。実に御しやすい女であろう。

前世では考えられないような冗談みたいなドレスを着せられ化粧され大勢の召使にかしずかれながら朝食を取る。当然陛下は愛しのお姉様とイチャラブ(もちろん陛下視点である)するので忙しいのでいない

そうして流れて一日が過ぎて行きまた夜になるのだ。



                       ▼


そうして過ごしていくうちに一ヶ月が経ってしまった。

私は兄への恋情に悩まされてるわけだけどこうして強制的で絶対的な隔離をされると私と兄は消して結ばれないし離れたほうがいいという神様の意向かなにかなのかと思う。


「…やっぱり気持ちわるいなぁ」


夜空に真ん丸と輝く月をみて誰に言うでもなく呟く。

この世界は元いた私の世界と構造は同じみたいで人の血は赤いし空気はあるし無重力なんてこともなくあまり違和感は感じない。だが私はこの月だけはどうしても受け入れられなかった。


月、ムーン、ルナ、白金又は紅に輝く悲しくも美しい星である。


だがこの世界の月は真っ青に輝いていた。

初めて見たときは目を疑ったほどに青い。真っ赤なカーベットが紫になってしまうぐらい青い光がきらきらと空から降っている。

生まれた時からの常識をひっくり返されこの気持ちの悪い光と私は付き合っている。

眠れなくて飲んでいる紅茶は赤茶色のはずだがこの光のせいでも意味不明な色になってしまっている。

食欲も失せるというものだ。

「はぁ…嫌な気分」

こんな気持ちの悪い夜にひとりでいるのは精神衛生状よろしくはないが国王夫妻の寝室に立ち入れるものなどいないし夫である陛下は姉のもとに遊びに行ってしまい私はいつも暇だ。

陛下が最高の話し相手というのは悲しいがこの世界で不安定な地位である私に友達などいないしそもそも心を開いてさえいないらしい(陛下的指摘によれば、である)ので侍女とさえ話せない。

「…寝るか」

何をしても気分が滅入るのでこういう時は寝るに限る。兄に恋人が出来た時もそうしたのだ。

ふかふかの大きすぎやしません?というぐらいのベットに潜り込んで丸くなって寝る。

頭までかぶった掛け布団にはあの光は入ってこない。

暗闇はとても安心する。まるで私をすべてから守ってくれてわずらわしいことが何もなくなるみたいだ


――ギィ


扉が開く音がする。

陛下は帰ってこないはずだし誰だろうと思いベットの中から私は出た。

ちょうど陰にいるので眩しすぎるこちらからはあまりみえないが私はその人が誰だかすぐに分かってしまった。


「…陛下」

「お前か」

「いや、私以外の誰かがいたらそれはたいへ――」


私の言葉はそこで止まった。

ゆっくりと光の中に現れた陛下はその金色の髪さえ染まってしまったかのように血まみれだったから。


「‥陛下?」

「…お前が正しかったようだ。夢は所詮夢らしい、煙のように消えてしまう」

「あ、ははははは…どうしたんです陛下?そんな詩的なコトいっちゃって!」

真っ青な部屋に私の乾いた笑い声だけが響いた。

これ以上は聞きたくない。

「アンレシアナが自害した」

アンレシアナ、陛下の姉の名前。陛下が愛してる唯一の人。

「これまで何人もの死に様を見たが、コレはきついな」

「…え?何言ってるんですか」

「私の目の前で首を切ったのだ。そのせいでこんなにも、汚れてしまった」

「…」

「なぜお前がそんな顔をする」

「だって、へいか」


「なに本当に死んだ訳ではあるまい。すぐに治療に当たらせてる」


その言葉で私は体の力が一気に抜ける様だった。


「…本当に。死んでないんですよね?」

「馬鹿な女だ。私の目の前で死ぬとはな」

「不謹慎ですよ陛下。死んでなんていません、貴方のお姉様はきっと元気に」


「それに意味があるのか?」


「…え」

「あの女が私の目の前で死んだ。たとえ生きていようと死のうとした、アンレシアナの心は死んだのだ。全てに終わりをつけたんだ。なのにそれからの未来に何の意味があると?」

「じ、自殺しようとしても、きっと元気になれます!」

支離滅裂な馬鹿げた言葉だ。

「誰よりも信仰深く処女性を愛し規律を重んじる女だった。自害は教会では悪だ。なのにあの女は死んだ。それだけですべてはわかるだろう」

そう、生きていても心がなければ意味はないのだろう。

陛下の愛した女性はまさに鉄の乙女のような女性だったのだ。

「あの女が意識を取り戻したら私が問うつもりだ。殺されるか、生きるかを」

殺される、つまり陛下は殺すのだろう。

多分それは救済だ。自殺が許されない最愛への最後の愛情。

そしてアンレシアナ様が生きることは消してないだろう。


「…それだけを伝えに来た。」


そうして陛下は去っていった。

私は青い光の中ひとり残されたのだ。


                     ▼



陛下はなぜ教えてくれたんだろう。

その答えは恥ずかしいほどすぐに出た。

陛下にとって私はただひとり自分の本心を出せる相手だったのだろう。

姉への愛、思い出、感情、そして恋を知った時からわかっていた結末。


「いたッ…」


鋭い枝が私の頬を掠めた。

ブーツは泥だらけだし比較的身軽なはずの青色のシンプルなドレスもあちこち破けて汚れている。

今日は陛下のお姉様であるアンレシアナ様の国葬の日だった。

アンレシアナ様のために何人もの人が泣き崩れ陛下を責めた。

とうの陛下は数日前から行方不明で王宮は上から下への大騒ぎ。

無能な王妃である私は陛下が戻らなければ殺されるだろう。そんなことはバカな私でもわかったけど私はどうすることもできないのでただ流れていた。

あれほど私の周りを固めていた侍女は次第に少なくなり必要最低限の世話をされるだけになった。

だから抜け出すのは簡単だ。

私は行きたかった、あの場所へ。

陛下がいると思われるあの場所へ。


王宮の裏手を周り秘密の抜け穴から王都の外れの海の上の崖、白い小花が咲くあの場所へ。

陛下が何回も語った昔話。唯一度だけの姉との思い出。

そこで自分は恋をしてすべてを悟ったのだと話していた。

きっと陛下はそこにいる、私は根拠のない確信で走り出していた。



                     ▽


林を抜けるとそこはまるで別世界だった。

太陽の光が降り注ぎあの話と同じように小さな花が一面に咲いている。

そしてそこには陛下がいた。


「お前か」

「ええ貴方の王妃です」


ふざけた私をつまらなそうに一瞥して陛下は背を向けてしまった。

少しの皮肉さえ受け取ってもらえないらしい。


「ここ、綺麗なとことですね」

「…あの女の墓には調度いいだろう」


そういった陛下の足元には大きな石が置いてあり土が掘り返されたあとがあった。


「墓って…なにを埋めたんですか?」

「髪だ、綺麗な銀色の髪」


陛下は金髪だけど姉は銀髪なんておかしな兄弟だと思ったものだ。


「…これからどうします?」

「さあな」


こちらを向かない陛下の表情はわからない。


「すべて、嫌だくなっちゃいますね」

「知った口をきくな」


…ホント、こういうところは変わらないんだよなぁ


「私も王宮に戻れないし、陛下なんて今すぐ死にそうだし、もう一回ぐらい異世界トリップしちゃいたいです」

「…異世界なんてものはないかもしれないぞ。全部お前の妄想だ」

「陛下の願望じゃありませんそれ?」

「悪いか」

「いいえまったく」


陛下のこういう姿勢、嫌いじゃない。

お世辞にも性格がいいとは言えない人だけど結構清いところは清いのだ。


「無駄話は終わりか?」

「…話す内容なんて考えてませんでしたからね」

「なら私は先に行く。好きなだけ私を恨めよ」

「え、いくって――」


陛下はそのまま前進する。

そう、崖っぷち、つまり海へとダイブ。


――今に思えばなぜ私はこんな性悪少年陛下のために命を投げ出すようなことができたのだろう


落ちていく陛下の体を捕まえようとした私は私自身も崖から足を踏み外し結婚してから初めてというぐらい体を密着させて海へとダイブ、皮肉なことに死にたくないのに自殺をしてしまったのだ


「ほんと恨みますからねぇぇーーーーー!!」


私の叫び声が響きそしてブラックアウト。



                   △



「う、うううう…」

頭が痛い、正確には床が痛いというかなんというか

「…はッ!」

そうだ、私、海にダイブしちゃって…

ゴキゴキいう体を起き上がらせて辺りを見渡すと――


「へ…」


夕暮れの坂、アスファルトに道路の白線、そしてあの世界では考えられないような空気の悪さ。

―私が生きてた現代日本である。


「…重い」

さっきからなにか踏んでる感はあったが驚きのあまり忘れていたのだ

そう、一緒にダイブしちゃったあの性悪陛下のことを


「ここは死の世界か」

「違いますよ!不吉なこと言わないでください」

「ならなんだ。異臭はするわ床は熱いわ見たくもない顔が見えるわここはどこだ」

「ちょ、ひど…もう!」

「いいから答えろ」

「私戻ってきたみたいです、元の世界に!」

嬉しくて嬉しくて大声を上げてしまう。

この感じ、最高に最高な感じ


「…神よ、祈りなど捧げたことはないがこれは…」

「やりましたよ陛下!私達魚の餌じゃなくてデジタルでハイスピードで文化的な世界に来たんですよ!」

「私は死にたかったのだがな」

「…後味悪すぎるんでやめてくださいね」

「さあな」


いつもの皮肉な表情。


「というかなんで帰れたんでしょうね」

「神の意思、というやつか?」

「まあなんでもいいです。あの世界で世話になったので一応陛下のお世話もしますね」

「お前、なんだか生意気になってないか」

「だって愛しの世界で愛しいの兄と会えるんです!今度は立場逆転ですよ陛下」

「…最悪だ」

「というか服このままできちゃったしこれからどうしましょう。お金持ってないので電車乗れませんよ…」

西洋風のびらびら衣装が泥だらけという変な格好である。

「知るか」

「とりあえず電話でも借りましょう。そしたら家の者が迎えに来てくれるはずです」

「…好きにしろ」

「陛下テンション低くありませんか?」

「…」

そっぽをむかれてしまった。


―とりあえず帰れたのでいいとしよう。

兄はきっといろいろ聞いてくるだろうし戸籍も何もない陛下もどうにかしなくちゃいけない。

だけどきっとなんとか楽しくやれると思う。

たとえどんな悲劇的な結末でも未来はあるのだから。



これは元悲劇の王様と絶賛こじらせ中の女子高生の物語である。





続きを書くと思います。

誤字脱字などありましたら報告お願いします。

感想など貰えたら嬉しいです。

活動報告にこの小説のネタバレ的なことを書きますので注意してください。

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