表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の蕾《完結》  作者: アレン
番外編
88/99

同窓会 一

今回は秀の話

時系列的にはエピローグの直ぐ後くらいです


部屋に入ると騒々しい音楽と話し声が襲う。



随分盛り上がってるな。



後ろ手にドアを閉めながら俺は思わずため息が出た。




今日は高校の同窓会。


みんなに会うのは二年ぶりだ。

大体は三年の時クラスメイトで、数人他のクラスだった奴も混じっている。



「おぉ秀やっと来たか!」



中央辺りにいた奴が声を上げた。



あれは、今枝だな。



「おう久しぶり」

「遅いぞ!お前が来ないから女子のテンションが下がって大変だったんだ」



そう言って笑いながら肩を組んでくる。



「別に俺が来なくても楽しくやってたろ?」

「いやいや、お前には分からんだろうが倍くらいはテンションの高さ違うぜ」



はぁとため息をつく今枝に笑いが込み上げる。


こいつは相変わらずだな。



「そういやお前一人で来たのか?」

「そうだけど」

「てっきり山岸と村上も一緒かと思ってた」



村上、その名にドキリとする。



「な、なんで俺があいつらと一緒に来るんだよ」

「だってお前ら修学旅行くらいから結構仲良かったろ。しょっちゅう絡んでたし」

「まぁ、そうだけど……」



高校卒業から会ってはいないが連絡は取り合っている。


小夜子と……そして桜とも。



「あいつら来ないのかな。期待してたんだけどなぁ」

「いや、来るとは思うぜ。なんか用事で遅れてるんだろ」

「そっか。じゃあ山岸と村上を拝めるんだな。いやぁ二年たってますます綺麗になってるんだろうな」



妄想してるのか今枝はニヤニヤと頬を緩めている。



綺麗に、か。



小夜子は元々綺麗だったけど、桜は途中までそんなに目立った奴じゃなかった。


そう、あの時までは。











初めて桜を見た時、地味な奴だと思った。



部活中に飛んでいってしまったボールを桜が顔面で受け止めたってのが最初。

振り向いたら丁度当たる瞬間だったから驚いたっけ。


慌てて保健室まで連れて行って。





その時はそれで終わりだった。



それからちょこちょこ部活を見に来ていることには気づいてたが、特に気にすることもなかった。




だけど、桜が放課後紅葉を見ないかと誘ってきた時。


女子高生のチョイスとは思えない誘いに、こいつは面白い奴かもしれないと興味が湧いた。




それから少しずつ話すようになって。




その時たまに見せる笑顔に俺は心を奪われていた。

そしてだんだんと彼女の事が気になり始めた。



もっと話がしたい。


あいつは何が好きなんだろう。


何に笑うんだろう。



そう思ってもクラスが違うと話せる機会は本当に少なかった。


だから二年の時、同じクラスになった時は嬉しくて思わずガッツポーズをした。



そして毎日話すようになり、俺は桜を好きになっていった。





気持ちには気づいても、告白したことなんてなかったからなかなか言い出せなかった。

だから何かイベント事の時に言おうと思っていた。




そして修学旅行。

最終日に桜を呼び出して告白しようと計画した。


約束を取り付けるためにまずは二人になった時の方がいいとも思って義長の墓へ行かないかと誘った。


元々墓には興味があったし、帰りにサラッと言えばいい。




だけど、今思えばあの時墓へ行こうなんて誘っていなければ、その先少しは違っていたのでは……


いや、あれは必然だったのかもしれない。




墓へ行って帰ろうとすると、桜が声がすると言って倒れてしまった。


俺は桜を抱きかかえ、困惑した。



腕の中にいる桜は顔色が悪いとかはなく、ただ眠っているように見えた。


夢を見ているような安らかな顔。



声をかけても揺すっても起きる気配がなく、俺は急いでみんなのいる所まで桜を連れて行った。



抱きかかえて行ったからみんなからは質問攻めにあったし、先生にはこっぴどく叱られた。


だけど先生の説教を聞きながら俺の頭の中は罪悪感でいっぱいになっていた。



俺が連れて行ったから。

俺のせいで桜が倒れてしまったんだ。



そんな思いがずっしりと俺にのしかかった。



そして俺の中には恐怖も生まれていた。


何故か異常なほど桜がどこかへ行ってしまうのではという思いにかられた。


もし目が覚めても彼女は俺の知る彼女ではなくなっているのではという考えが浮かぶ。



そんな突拍子もなことあるわけない、そう思うが不安は募るばかりで。






そして桜が目を覚ます。


先生から桜が起きたと聞いて急いで彼女の寝ている部屋をと走った。


ドアノブを掴んだ時、俺は一瞬躊躇したが唾を飲み込んでドアを開けた。



そしてベットで体を起こしこちらを見ていた桜を目が合う。


その瞳が俺の知っているもとで、心底安心した。


よかった、目の前にいるのは俺の知る桜だ。




謝った俺に微笑んでもういいと言った彼女の言葉に心に巣食っていた罪悪感が少し和らぐ。



「さぁ村上が無事に起きたことだし、近藤と山岸はみんなと合流してきなさい。村上は少し話を聞かせてもらうな?」



古先の言葉に頷き俺と小夜子は部屋を出た。




「よかった。桜が無事起きてくれて」



安心したような声の小夜子は少し涙ぐんでいた。


クールそうなイメージがあったけど、こいつにとって桜はそれだけ大切な存在なんだろうな。



「そうだな」


「あんたもこれでやっと安心できるんじゃない?」


「は?」


「眉間、もう少しでシワ残る所だったんじゃない?」



自分の眉間を指で叩き小夜子は意地悪な笑みを向けてきた。



「まぁ今回は残念だったけど、また機会はあるわよ。頑張って」


そう言って手をヒラヒラと振りながら小夜子は歩いて行ってしまった。



前から薄々感じてはいたけど、多分あいつ俺が桜を好きだって気づいてるんだろな。


保護者様の許可が出たってことは結構脈アリなのか?



この時の俺は微かな希望が生まれたと喜んでいた。



だけど修学旅行から帰ってから俺はこれまで以上に悶々とした思いに囚われるようになっていった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ