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桜の蕾《完結》  作者: アレン
プロローグ
5/99

5.声

「そろそろ戻るか」



そう言って立ち上がった秀は私の方に手を差しのべた。



「ねぇ、時間大丈夫かな」

「ん? 大丈夫だろ」



引っ張ってもらって立ち上がり、その場を後にしようとした。




その時。


『ライ……』



突然後ろから声が聞こえた気がした。

バッと後ろを振り返ったけどそこには誰もいない。



「どうした?」


隣の秀は不思議そうに私を見ている。



――聞こえてないの?




『ライ……』



また聞こえた。



「ねぇ、何か声聞こえない?」

「は、声? そんなの聞こえないけど」


『ライ』


「ほらまた! 」



今度はハッキリ聞こえた。


今まで1度も聞いたことのない声。

だけど何だか凄く懐かしい……





一体誰なの……?





『ライ』


「あなたは誰なの?」


『ライ』


「私はライなんかじゃないっ」


『やっと会えたな……』



その言葉に胸が高鳴る。


涙が溢れて視界がぼやけた。




ふと目に留まった義長のお墓。

私は吸い寄せられるようにそちらに足を踏み出した。



「お、おい! 一体誰と話してんだよ?! どこ行くんだ!!」


秀の焦った声が聞こえたけど、凄く遠くから聞こえる感じがする。



今、私の耳に響くのは……



『ライ、会いたかったぞ』



お墓の前で立ち止まる。



「誰なの?」


『私のことを忘れたのか?』


「忘れるもなにも貴方のことなんて知らない…し……」



突然激しい頭痛に襲われる。

グラリと視界が歪み、膝から崩れ落ちた。



「っっ! 桜 !!」



駆け寄った秀のお陰で倒れることは避けられた。でも、未だに頭が割れるような痛みは続いている。



「お、おい大丈夫か?!」



秀の声がだんだん遠くなっていく。




ダメ……目開けてられない……







途切れそうな意識の中、最後に耳にしたのは




『桜……』




私の名を呼ぶ、秀ではない声だった。







挿絵(By みてみん)



イラストは二太郎さんにいただきました!

http://12855.mitemin.net/i216882/

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