表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/40

#1:灯りの魔女(1)

1:灯りの魔女(イオ)


石造りの床には二十人ほどの少年、少女たちがずらりと座り、かたずをのんで壇上を見つめていた。


壇上では一人の老人が薄い巻物を手に、とうとうと名を読み上げている。


「ハミール、ラナ、ナーセル」


痩身の老人だ。頭にはターバンを巻き、その身には幾重にも長布を巻き付けている。


かわいた肌に、もろい枯れ木のような腕、長く伸ばしたひげは白く、けれど半ばシワに埋もれたその慧眼は確かな知性を宿し、まるで古くより叡智を集め、探求してきた、この『館』そのもののような存在だ。


部屋の飾り窓からは午後の光が差し込み、石造りの床に複雑な幾何学模様の影をおとしている。宙に舞う粒子に光があたると、室内にキラキラと不思議な輝きが瞬いた。


いや、光のせいだけではない。この『館』には、整然と立ち並ぶ柱の影や、書物棚の間、あるいは壁に刻まれた魔除けの文字、そこかしこに何かの気配がただよい、『館』全体がピンと張り詰めた清冽な力で満たされているのだった。


――――そう、『魔法』の気配だ。



老師を食い入るように見つめる少年たちの中に、一人の少女がいた。イオだ。


黒髪をかるくまとめ、耳元には唯一の装飾品である青い石が揺れる。いつもならば若く伸びやかなその横顔は、今は緊張にこわばり、胸元で両手をきつく握りしめている。


はりつめるような静寂の中、老師の声が淡々と流れていく。


低く、細く、まるで蜂の羽音のような小さなかすれ声に、いつもならば眠気を誘われるイオだったが、今日ばかりはそうはいかなかった。


一言も聞き漏らすまいと、必死に意識を集中させる。


カサリ、カサリ。


老師がめくる、巻物の残りは少ない。


(あと少し、もう少し。お願い、今度だけは・・・)


祈るような気持ちで少女は目を閉じる。あまりの緊張に耳鳴りがしてきた。


けれどイオの願いもむなしく、


「ファーティマ、アズマール。以上だ」


老師が告げると同時に、まわりからはじけるような歓声があがった。若い少年たちの声は薄暗い石造りの建物に反響し、ガンガンとイオの頭に響く。



―――――読み上げられた合格者の中に、イオの名前はなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ