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よろしくお願いします!
「あぁー、だめだだめだ!!!なんでさっきからこんなに沸くんだよ!いやガチで……。ファイァドレイクの出現率高すぎる」
そう、さっきElecが3体のファイァドレイクをぶっ飛ばした時からずっとファイァドレイクが沸き続けている。一体倒せばまた一体。だんだん増えていくファイァドレイクに嫌気をさしながら、俺は【Bladedance 剣舞】で一気に片を付けてしまうことに決めた。まだ彼女らに見せる段階には及ばなかったが、仕方なくスキルを発動する。
「【Bladedance 剣舞】!!!!!!」
いつもの様に、両手に握る黒刀(漆)と小太刀、そして背中に羽のように浮遊する6本の光剣。それを利用し、接近してくるファイァドレイクを薙ぎ払う。流れるように移動する光剣はファイァドレイクの身体を切り刻み、ポリゴン化させていく。だが、次々と沸いてくるファイァドレイクは、何度切刻んでも足りなかった。
「うがぁぁぁぁああ!!!マジで出過ぎ!!!」
「いいじゃないか、LvUpにもなるし、うまうまだよ」
「いや……、戦っている人はこの暑さの中、かなりしんどいんだけど……。それにさっきから戦ってるの俺ばっかじゃねぇか!!!」
「うわぁ!零夜の背中の光剣カッコいい……ッ!」
恵里奈が目をキラキラさせてこちらを見てくるため、俺はちょっといい気になって、その光剣で乱舞する。だが、一向にファイァドレイクの数は減らない。そして遂に、俺の周りを10体のファイァドレイクが囲みこんだ。
「うへ!?ちょいマジでこれはヤバいって!疲れたって!誰か手伝ってくれよ!」
「零夜のそのユニークスキルカッコいいし強いから一人で何とかなるよ。そいつら全滅させたら【ステルス】で移動しよ?」
「【ステルス】あったんじゃねぇか!なんで先に言わない!?」
「魅琴が使わないで戦わせておいた方が良いもの見れるよって言ったから……、まさかそれがユニークスキルだとはね」
魅琴もにやにやしながらこちらを向いてくる。あぁ、ちくしょう。とりあえず一気にコイツラを片付けて……ッッッ!?
全方向からの火炎ブレス。空中に飛躍してかわすが、ファイァドレイク3体の追撃をまともにくらってしまい、墜落する。
「ぐぁぁあああああああ!!!!!!」
炎をまといながら地面に落ちた俺は、急いで炎を振り払う。HPが3分の1ほど減少した。俺は急いで回復薬を口に含み、飲み干す。残り7本しかない回復薬、もうこれ以上使う訳にはいかない。
「くそがぁぁああああ!!!」
Bladedance 剣舞 を使用した状態で、スキル【レイジング・スラッシュ】を発動する。合計3回攻撃の技だが、ユニークスキルの効果によって、今は合計6本の剣を扱っている。3×6は18。合計18連撃を今10体のファイァドレイクに与える。
4本の光剣が俺の周りをフラフープの様に素早く回転し、四方八方から近づくファイァドレイクを薙ぎ払う。その後、合計6本の剣と刀で全てのファイァドレイクに斬撃を加える。俺の額から汗が流れ出るが、そんなことは無視して剣を振り続けた。Bladedanceの効力が切れ、肩で息をする俺の周りには、もうファイァドレイクはいなかった。
「はぁ…はぁ…、おい恵里奈。早くステルスしねぇとガチで怒るぞ」
「はいはい。お疲れ様でした」
恵里奈は軽く剣刀を振りながら呪文を唱えると、周りを移動するMobは俺たちのことなど気にせずに動き回るシステムの塊となった。やっと休めると思い、少し歩きながら息を整えて第2エリアへと向かった。
第2エリアへと進出した俺たちの眼に入ったのは、赤いファイァドレイクとは全く違う、黄色いドレイクだった。違っているのはほとんど色だけで、炎をまとっているファイァドレイクとは違って、雷をビチビチ鳴らしながら纏っている姿があった。
「あーぁ、もうサンダードレイク出ちゃってるんですけど……。それに【ステルス】って次使えんの10分後だろ?ちょうど効力切れたし」
「ごめんね、ステルスあまり上げてないから、回復に時間かかるんだ」
「まぁ、あまり実用的なスキルじゃないしな」
「はいはい、おしゃべりはそこまでね。来るよ」
ファイァドレイクよりも強力なサンダードレイクが、こちらに向かって3連雷撃ブレスを放ってくる。俺たちはそれぞれバラバラの方向へと散ってそれを避け、一気にサンダーブレイクへと接近する。前衛は俺とElec。後方からは恵里奈が魔法を、魅琴が【蒼龍ネペンディア】を召喚し水ブレスを放つ。俺はとりあえずメインウェポンの【黒刀(漆)】のみを握り、斬りかかった。Elecも同様に双槍で連続の突きを行う。
恵里奈は魔戦士スキル、【火炎の乱舞】を発動。炎がドラゴンのようにうねりながらサンダードレイクへと向かっていき、直撃したと同時に爆炎が舞い上がる。それを予想して俺とElecは後方へと下がり、爆炎が収まった後、一気に加速してサンダーブレイクに渾身の一撃を叩き込んだ。
バキィ!と一本の角が宙を舞う。ドレイク系の弱点は角。あとちょっとだ、と自分を鼓舞しながら、握る【黒刀(漆)】を振るい続けた。ネペンディアもまた、遠くから水ブレスを放ち続けている。相手は雷属性で、水の態勢に強いが、恐らく今のところ出せる召喚Mobで一番攻撃力が強力なのだろう。彼女は炎属性のMobに変更せずにネペンディアに攻撃させ続けた。
俺は手を止めず、角目がけて斬撃を加え続けていた。そして、ガギィン!と再び角が折れる音が炸裂した。そしてその角が折れたのと同時に、サンダーブレイクのHPも全損して、ポリゴン化して消えていった。
「うん、これがいいな。とりあえず俺と零夜が前衛で、恵里奈と魅琴は後方で魔法やMobで攻撃。サラマンダー戦もこれで行こう」
「恵里奈は隙を見て接近できるときは接近してみてくれ」
「りょーかいです!」
もう一度体冷薬を一口で全て飲み干して、体が冷えるのを感じながらも歩く足を止めなかった。
今いるエリアは2エリア。3エリアの奥にサラマンダーがいる。あと少し歩き続ければサラマンダーを目にとめることとなるだろう。一撃必殺のブレスを持つサラマンダー。それにあたれば死んでしまう。俺達はこれからそんな相手と戦闘を行おうとしている。今までサラマンダーを倒してきた人たちもこんな気分なのか。だが、あまり恐怖を感じはしなかった。
実感がない。今までこの世界で生きてきたが、明確な死というのを実感できない。本当に死ぬなんてことがあるのか。今までいろんなMobの攻撃を受けてきたが、死ぬことはなかった。だが、今回は違う。一撃必殺その名の通り、それを受けると必ず死ぬ。
でも、俺達は死なない。死ぬわけにはいかない。そう決心してエリア3へと踏み込んだ。
ありがとうございました。僕のもう一つの作品、【Another World】も見てみてください。主人公はお馴染みの零夜。だが、この【Another World Online】に来る前にいた現実世界とは違う、「もう一つの世界」に生きる零夜のお話です。
異能と魔術と超能力が発達した世界で、彼は幼いころに両親を亡くした……。