王様に会う
王様に、謁見・・・ではないですね。
・・・気が付いたら、馬車の中だった。なぜ。
「これから、君をお城に招待します。」
『皇太子様、私は承諾してません。これは拉致ですよね。誘拐じゃないですか?シンさんは?村は?』
「もう、丸2日走ってる。君の足では、帰れないよ?」
ええっ??何か盛ったな?
皇太子と無言の私が馬車にひたすら揺られ続け、やっと都に着いた。
石畳と石造りの家ばっかりで、灰色だ。
「あれがお城だよ。しばらくあそこに住むからね。よろしく。」
『・・・』
「国王陛下には後で会えるから、しばらくはこの部屋使ってね。」
『・・・私は何をすればいいんでしょうか。』
「じゃあ、王妃様達の話し相手よろしく。」
『分かりました』
「「「「・・・・・シン王子の隠し子?」」」」
またか。
『居候です。領地の復興のお手伝いをしてました。』
「じゃあ、あなたがうわさの?」
「海の向こうからお嫁に来た子でしょ?」
「魔法使いじゃないの?」
「呪いをかけられたお姫様だってば」
「山賊に追われた貴族の娘よね?」
「罠にかかった妖精だって聞いたわよ」
ここもか。
どれだけ広がってるの?このうわさ。
「とりあえず、着替えましょうか。」
なぜ突然?
『この服ではだめですか?汚れてますが、シンさんの服なんです。』
「だって~、せっかくだし、着せ替えとかしたいじゃない?」
・・・そっちか。
白は?黒は?赤は?ピンクは?じゃあ、次は~・・・
・・・目が回った。
2時間も着せ替えさせられるとは・・・
「やっぱり緑がいいわね~」
今度は緑ですか。
ドレスに埋もれてフラフラしていると、
「あんまり遊ぶと、飛んで逃げてしまうぞ。別の世界の天女なんだろう?あの無愛想なシンと情熱的な恋に落ちたとか。」
「「「「国王陛下~」」」」
うわさが増えた。
情報源はおしゃべり皇太子に違いない。
シンさんに、素性を聞いたな。そして尾ひれをつけたな。
機会があったら、ケーキに唐辛子入れてやる。
しかし、一体、何が目的なんだろう?
シンさんは、私がいなくて探してくれてるだろうか?
元の世界に帰ったとか思ってないだろうか?
不安で泣けてくる。
「君は、しばらくここにいて、王妃たちと遊んでもらえないか。」
『しばらくってどれくらいですか?』
「まだ分からない。」
『困ります。お茶会の約束もあるし、やりかけの仕事もあります。みんな頑張っているのに私だけこんな所には、いられません。帰して下さい。』
「帰してやるわけにはいかないんだよ。」
『なぜですか?』
「理由は言えない。」
『・・・私は、こんな生活は望んでいません。きれいな服を着て、過ごす気もありません。あの村が好きなんです。
どうしても外に出す気がないのなら、せめて使用人の扱いにして下さい。』
「・・・はー困ったね。それじゃあ、お茶会用にケーキを焼く係はどうだろう?美味しいと聞いたし。」
『唐辛子を入れてもいいですか。』
「・・・それは困る。分かった。じゃあ、う~ん、知り合いの家に預ける。それでどうだ?これ以上は譲歩しない。」
シンさんに少し似た人に困った顔をされると、こちらも罪悪感が。
『・・・・・・分かりました。』
「逃げないように。あの村まで女の子が一人で無事に帰れるとは言えない。それに、たぶん、私に会いたくなるよ。」
にっこり笑って、釘を刺された。くそう。
王妃様達と遊ぶのはかなり大変だと思われます。