向こうの事情
暗めのお話です。
私の素性も話しておかなくてはと思い、二人でシンさんのお仕事部屋へ。
・・・ほぼ図書館ですね。本だらけ。
本、大好きなのに、読めないのがツライ。
まず、私は日本という海に囲まれた国から来た事。
ひとり暮らしで、毎日、事務職と言われる、ほぼ何でも屋?をやっていた事。
ここへ来る前は、いつも変わらない日常だった事。
変な、追われる夢を見て、逃げたらここだった事。
を話した。
「失礼なことを聞くが・・・ご主人は?」
『あはは、残念なことですが、貰い手がなかったため、独身です。』
「・・・家族は」
『おばあちゃんと、父、母、弟、妹がいました。』
「今は?」
『19歳の時、父が突然病で亡くなりました。
そのショックで、おばあちゃんの言動が少しおかしくなり、数年間介護しました。
おばあちゃんがなくなったらすぐに、母親の体調と精神状態が悪くなり、
私に当たり散らす事しか、できなくなってしまい、
これは長かった・・・つい数カ月前まで続きました。』
「亡くなったのか?」
『・・・いえ、存命です。ただ、元々母親とは合わないところがあり、
丈夫なはずの弟が体調を崩したのをきっかけに、どうしてもうまくいかなくなってしまったんです。
なので、私は弟が元気になったのを見届け、家を出ました。
もっと早く決断すべきだったのかもしれませんが、家族を見捨てることができず・・・
周りの男性も母親に耐えられなかったので、結婚にも至らず、
職も正規の職ではなく、介護ができる短い時間の仕事しか付けませんでした。
だから、なんのとりえもないんです。
・・・なんだか、愚痴になってしまいました。ごめんなさい。』
「妹は?」
『私が解放されたので安心しています。彼女は強いので、うまいこと生きていけますよ。家族とも適当に距離をとって、ちゃんと可愛がられてますから、大丈夫。』
「・・・そうか、大変だったな。」
『もっと大変な人はいますから。』
「・・・だが、それでも、つらかっただろう。
もし、こちらに来た理由があるのなら、きっとやり直してもいい、ということに違いない」
『・・・ありがとうございます。シンさん、優しい人ですね。』
「・・・」
『なんだか疲れてしまいました』
「ああ。もう休んだほうがいい。身体も本調子ではないしな。」
『そうですね。お言葉に甘えて、少し休ませてもらいます。』
その夜、私はちょっぴり泣いた。
誰かに頭を撫でられたような気がした。
この後は明るくいきます。