雨の日に、心を綴る。
私は今、ベッドの上にいます。
私の心が、体を動かさなくなってから1か月が経った。
水の滴る窓を見上げる、暦の上では初夏でもうすぐ梅雨の季節である。
今日は私の心を代弁する様に、絶えず降る雨を見上げながら思案する。
私の人生とは何なのか。
私とは何者か。
命の価値とは。
そんな哲学者の命題が、頭の中を駆け巡る。
動かないモノに価値はない。
そんなことはないと否定したいが、動けない私にその言葉を否定する権利はない。
苦しい。
どうすれば、私の心は軽くなるのか。
考えても考えても、哲学者ではない私は答えを出せない。
辛い。
言葉にしたい。
だが、強くあろうとする弱った私は未だにそれを我慢してしまう。
けど、部屋に籠る不快な湿気と上司の理不尽な物言いが頭を駆け巡った時だった。
頬というキャンパスに、一筋の線が引かれた。
涙を見せるのは悪だ。
そう、心に言い聞かせてきた私が泣いてしまった。
これ以上悪になりたくない私は、慌てて頬に伝った涙を拭う。
幸い、理性が心に蓋をしたおかげで涙はすぐに止まってくれた。
泣いても何も解決しない。
だが、堪えていても何も解決しない。
どうすれば良いのか分からず、私は涙を拭った手を見つめる。
手には、拭った涙の感触が残っている。
その感触を忘れたくて、湿気で曇った窓ガラスにその感触を擦り付ける。
手にあった生暖かい感触は消え去り、水滴の冷たい触感に代わった。
その変化に少し驚き、顔を上げた。
視線の先、曇った窓ガラスが私の代わりに泣いてくれていた。
それを見た時、私の心の蓋が少し開いた。
「泣かないで」
その言葉は、私の心が言わせた言葉。
私は窓に近づき、窓ガラスに指を這わせる。
心が言わせた言葉を、窓ガラスに綴る。
また少し、心の蓋が開いく。
「君は頑張った」
また、心が言わせた言葉を窓に綴る。
不毛だ。
そう理性は言う。
だが、心は軽くなった。
久しぶりに、口元が綻んだ。
そして、雨脚が遅くなり雲の切れ間から太陽が顔を覗いき私の言葉が私の顔に映し出された。
そうだ、私が私の心の声を受け止めなきゃいけなかったんだ。
なら、明日の私が頑張れるように――。
「君に、花丸を上げよう」
そして、窓に綴った涙の後と言葉を囲むように花丸で囲む。
そんな私を、切れ間から覗く太陽が笑って見ていた気がした。




