真顔が0.4秒しかもたない
【敦視点:帰り道の“にやけ防止・最終決戦”】
琴葉の家から三歩。
敦(……よし。あとは普通に帰るだけだ)
さらに三歩。
口元が勝手に上がる。
敦「……は?」
早すぎる。
街灯に伸びた自分の影。
肩を揺らして完全にニヤけている。
敦「待て待て待て待て」
顔を押さえる。
敦「ただの……あれだろ。
無事に帰れてよかった的なやつだろ」
歩き出す。
二秒後。
——玄関灯。
——握り返された手。
敦「……っ!!」
第二波。
敦「思い出すな!!今禁止!!」
早足になる。
敦「よし、真顔」
眉間にしわ。
0.4秒後、口角が勝手に上昇
敦「裏切ったな!?俺の顔!!」
歩幅を広げて威厳モード。
結果:ニヤけながらズンズン歩く不審者完成。
敦「これ通報ラインだろ……!」
最終手段。
スマホを開く。
ニュース。
経済。
政治。
敦(……よし……戻ってき……)
画面暗転。
そこに映る、
ゆるみきった自分の顔。
敦「うわあああ!!」
即ポケット。
敦「……別のこと考えろ」
晩飯。
カレー。
ジャガイモ。
……買い物袋持つ琴葉。
敦「なんでだよ!!」
走る。
走るほど笑いが込み上げる。
敦「今日の俺どうした!?
なんか壊れてねぇ!?」
立ち止まる。
夜風。
敦(……いや……
あいつがちゃんと外出れたから……
それで……)
少し黙る。
敦「……まぁ、うん」
全然締まらない顔。
落ち着かないまま玄関前に。
敦「……無理だろこれ」
ドアを開けながら小さく。
敦「……完敗だ」
【琴葉視点:帰宅後バタバタ大暴走モード】
玄関のドアを閉める。
鍵をカチッと回した瞬間。
琴葉「…………っ」
その場で停止。
数秒後。
琴葉「無理」
膝から崩れる。
琴葉(なんだよあれ……
なんであんな触り方すんだよ……)
顔真っ赤。
靴も脱がず座り込む。
琴葉「優しさの加減おかしいだろ……」
部屋に戻る。
ベッドへダイブ。
琴葉「思い出すなぁぁぁ!!」
枕を抱えて暴れる。
——頭に触れた手。
——少し低い声。
琴葉「うわぁぁぁ……」
布団に顔を埋める。
さらに追撃。
引き寄せられた。
あの一瞬。
琴葉「しぬ!!!」
転がる。
琴葉「いや死なないけど!!」
布団がねじれる。
琴葉「普通に近いんだよ距離!!」
そして。
指先。
ほんの少し触れた感覚。
停止。
琴葉「……あれ……」
思い出した瞬間。
琴葉「うわああああ!!」
全身をくねらせ、
ベッドの上で転がりまくる。
枕で顔を押さえ、
声が漏れそうになるのを必死で止める。
琴葉(男でも女でも変わらないって言ってたけど…………でも……違う……)
ゴロン。
天井を見る。
琴葉(……でも……
敦、彼女できたら……
あれ普通にやるよな)
胸がきゅっと縮む。
琴葉「……は?」
手を胸に当てる。
もう一回想像。
敦が誰かと並んで歩く。
優しい声。
琴葉「……っ」
即、布団潜航。
琴葉「知らん!!
知らん知らん知らん!!」
足バタバタ。
琴葉「……なんだこれ……
意味わかんねぇ……」
小さく丸まる。
でも顔は真っ赤。
そのまま、
寝返り地獄が始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
二人の壊れっぷり、お見事でした。




