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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: かたはやん


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4/5

離すタイミングが、分からない


駅の喧騒を抜け、商店街の路地。


琴葉の足取りは軽い。


敦だけ、妙に疲れている。


琴葉「……敦、生きてる?」


敦「……HP赤」


琴葉「削れすぎだろ」


敦「誰のせいだと思ってんだ」


二歩。


――カタン。


琴葉「わっ——!」


体が前に流れる。


敦「っ……!」


反射で腰を支える。


近い。


けど、それどころじゃない。


琴葉「……あ、危な……」


敦「だから言ったろ。靴でかいって」


琴葉、きょとん。


支えられてるのを理解。


次の瞬間。


ぎゅっ。


腕に絡む。


琴葉「敦、頼りになるー」


敦「組むな危ねぇ!」


琴葉「あはは。顔真面目、可愛い」


敦「笑うな!」


一拍。


琴葉「……でも、助かった」


離れようとして――


敦、遅れて手を掴む。


琴葉「……っ」


人通り。


琴葉、ちらっと周囲を見る。


琴葉「……敦。場所」


敦「違和感ない」


琴葉「返しが強い」


敦「仕返し」


琴葉「……さっきの可愛いは撤回します」


敦「遅い」


琴葉「調子乗りました」


敦「……離すとまた転ぶ」


琴葉「強制イベント!?」


敦「安全対策」


琴葉「言い方が警備会社」


でも抵抗はしない。


体重を少し預ける。


歩調が揃う。


少しして。


琴葉「……今日さ」


敦「ん」


琴葉「敦いたから外に出れた」


敦「……そうか」


琴葉の親指が、少しだけ動く。


琴葉「人少ないとこなら……

また行けるかも」


小さく。


琴葉「……ブラも買ったし」


敦「そこ報告いる?」


琴葉「大事件だったんだよ!」


敦「知ってる」


敦(……十分だ)




ーーー


玄関灯が見える。


敦「……着いた」


それでも、手は離れない。


琴葉、つないだ手を見る。


つま先で地面をつつく。


敦、息を一つ。


——離す、はずが。


静かにうつむく琴葉が見える。


敦「……」


頭にもう片方の手を置いて、軽く引く。


短いハグ。


敦「もう……気を抜け……」


その一言で、肩の力が抜ける。


琴葉「……っ」


きゅっ


手が離せない。


この温度がまだ自分には必要だった。


敦(……そう来る……?)


一瞬、息が止まった。


格好つける余裕なんて、どこにもない。


頭に置いてた手を


ぽん。


ぽんぽん。


敦「……じゃ……また……」


手がゆっくり離れる。


指先が、名残でもう一度触れる。


琴葉「……楽しかった」


敦、背を向ける。


振り返らない。


手だけ、小さく振る。


琴葉「(くすっ)……なにそれ」


玄関前。


胸の奥に残る温度だけが、


まだ、離れなかった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


手は離れましたが、たぶん全部は離れていません。

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