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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: かたはやん


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3/5

店内で、進化はまだ途中

カラン。


ドアベルの音。


店内の客が、反射的に入口を見る。


ただそれだけ。


視線が戻っていく――その途中。


一瞬だけ、琴葉に残る。


敦の横で、少しだけ身体が固くなる。


敦(……́…)


足が半歩、前に出る。


ほんの少し。


気づかない程度に、

琴葉の進行方向を塞ぐ位置。


敦「こっち」


何事もない声。


自然に歩き出す。


琴葉はそのまま後ろについていく形になる。


数秒後。


店内の誰も、こっちを見ていない。


琴葉「……?」


さっきまであった落ち着かなさが、消えている。


理由は分からない。


でも歩きやすい。


琴葉「……敦」


敦「ん」


琴葉「なんか、歩きやすい」


敦「靴慣れてきたんじゃね」


琴葉「そうかな」


敦「そうだろ」


適当な返事。


敦はもう商品棚を見ている。


自分が前に出たことも、


位置を取ったことも覚えていない。


琴葉だけが少し不思議そうに見る。


でもすぐ視線を戻す。




店員「いらっしゃいませ〜」


敦「……あ、どうも」


いつもより少し低い声。


敦「……あの、恋人に下着を選びたくて」


店員「まあ素敵。どんな雰囲気で?」


琴葉(小声)「地味」


敦「落ち着いた色で、シンプルで」


店員「かしこまりました」


黒、グレー、ネイビー。


琴葉(俺の色……)


敦「伸びるやつあります?」


店員「はい、かなり伸びます」


琴葉「どこまでいける」


敦「限界試すな」


敦「あと……サイズって」


店員、軽く琴葉を見る。


店員「こちらで大丈夫かと」


琴葉「⋯(すご……敦)」


敦「じゃぁ、それで」


店員「かしこまりました」


一瞬、店員の視線が琴葉の白シャツに止まる。


店員「……失礼ですが」


敦「は、はい?」


店員「本日、インナーをお召しでないようで……」


敦「…………は?」


間。


敦、ゆっくり琴葉を見る。


敦「なぁ」


琴葉「ん?」


敦「お前……ブラ……」


琴葉「…………」


一拍。


琴葉「あ」


敦「嫌な“あ”だな」


琴葉「あったなぁ、そういうの」


敦「は?」


琴葉「存在は知ってた」


敦「知識で済む話じゃねぇ!!」


琴葉「今までは平気だったし」


敦「“今まで”な!!」


沈黙。


琴葉「……今って……」


敦「今だよ!!」


琴葉、

シャツ→胸元→店内→店員→敦。


琴葉「……あ」


敦「遅ぇ」


店員「こちらでしたら透けにくく安心かと」


琴葉「……あ……敦……」


敦「分かってる」


琴葉「とりあえず……ブラ……買おう……

俺……進化の途中で社会に出てた……」


敦「進化じゃねぇ!!事故だ!!」


琴葉「社会的に死ぬ所だった……」


敦「……いやもういい!!それ!!それで!!」


店員「お買い上げ後でしたら、試着室ご利用いただけます」


敦「ありがとうございますっ!」



試着室。


琴葉「よし、行く」


ガサガサ。


琴葉「あ、無理」


敦「早ぇ!!」


琴葉「……敦……」


敦「やめろ」


琴葉「ホック……届かねぇ……」


敦「俺は異性!!」


琴葉「あっ……腕つった……もう無理……死ぬ……」


敦「死なねぇよ!!」


琴葉「助けろ!!」


敦「入れねぇ!!」


琴葉「カーテン越し!!」


間。


敦「……手だけだぞ」


琴葉「……うん」


カーテンの隙間。指先だけ。


敦(……細っ)


敦「お前さ……

もうちょい考えろよ……」


琴葉「今の俺を見てそんな気、起きるか!?

腕つって情けないポーズの女がここにいるんだぞ!?」


敦「……それはそれで……」


琴葉「今、何か言った?」


敦「色即是空!!」


カチ。

小さな音。


琴葉「……おぉ」


敦「声出すな!」


琴葉「……ありがと」


琴葉「次パンツ」


敦「それは自力!!」


ガサガサ、バタバタ。


琴葉「……敦」


敦「今度は何だ」


琴葉「フィットしすぎて落ち着かん」


敦「知らん!!」


琴葉「女の子って大変だな」


敦「今さら気づくな!!」


カーテンが少し開く。


琴葉「……どう?」


敦「……可愛いから閉めろ!!」


シャッ。


琴葉「雑!!感想三文字!!」


敦「これ以上言語化したら俺が死ぬ!!」



ここまで読んでいただきありがとうございます。


一応、任務は完了しました。

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