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第3話 光の王家と、最後の希望

 翌朝。

村はまだ、昨夜の戦いの爪痕に覆われていた。

ルーミア村の人々の表情に安堵はない。

瓦礫と化した家、泣き崩れる家族、倒れた村の人たち。

闇王軍の襲撃が、ここまでの惨劇をもたらすのかと

翼はただ唇を噛みしめるしかなかった。


「これが……あいつらの力……」


翼のつぶやきに、村長がゆっくりと近づいてきた。


「翼殿よ、そしてリリア。あれらは“魔獣”と呼ばれる存在じゃ。

 闇の王国ダスクが召喚し、操っておる忌まわしき化け物だ。」


リリアの肩がわずかに震える。


「魔獣……やっぱり、闇の国が関係しているんだ……」


「うむ。この世界は、今や再び闇に飲まれつつある。」


村長は空を見つめ、語り始めた。


「この世界には、五つの国がある。

 北の風の国ゼフィル。

 西の火の国イグニス。

 東の水の国アクエリア。

 南の土の国グラナイト。

 そして──王都、光の国エリュシアじゃ。」


「五つ……」


翼は息をのむ。

ゲームのような世界だと思っていたが、現実に近い感覚がした。


村長は続ける。


「闇の国は昔、各国の英雄たちによって封じられた。

しかしその英雄たちは既にこの世におらず、子孫も残っていない」


まだ世界の全貌はわからない。北や南、西や東の国がどうなっているのか。

村長の話を聞きながら、翼は胸の奥がざわめくのを感じていた。


「……じゃあ、どうして闇の国が復活しているんですか?

 英雄も、もういないのに……」


 その問いに、村長はゆっくりと首を振る。


「それは、まだ誰にも分からん。

 しかし──闇王軍が再びこの大陸に影を伸ばしておるのは確かじゃ。

 各国がどうなったのかも、今となっては伝令すら届かん」


「ただ……昨日奴が言ってたように王都エリュシア国はもうすでに滅んでいる」


リリアは胸元を押さえ、不安を隠しきれない表情を浮かべる。


「光の国……エリュシアにも、もう誰も……?」


その震える声に、村長は優しく目を細めた。


「……リリア。そなたは光王家の最後の血脈じゃ。

 本来、光の王家にのみ受け継がれる“封印の力”──

 闇を祓い、退ける力を持つ者は、今やそなた一人のみ」


リリアは唇をぎゅっと結ぶ。


翼はその横顔を見つめながら、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。

自分はこの世界の人間ではない。

きっと特別な血も力も持っていない。

けれど、リリアが怯えているのに、ただ見ているだけなんてできなかった。


村長は続ける。


「そして翼殿──

 そなたが持つその石、『光晶石』もまた特別なものじゃ。

 昔、光の国の英雄が携えていたものと同じ“輝き”を宿しておる。

 完全に目覚めれば、闇に対抗し得る唯一の力になろう」


「俺が……英雄に?」


翼は思わず笑ってしまうほど、現実味がなかった。


しかしその瞬間、胸元の石が微かに脈動する。

昨夜、魔獣の攻撃をかばったときに放った光──

あれは偶然ではなかったのかもしれない。


村長は翼の肩に手を置いた。


「翼殿。この世界には“勇者の試練”が存在する。

 誰もが受けられるわけではない。光晶石が輝いた者のみが挑める試練じゃ。

 試練の最奥には、この世界を救った光の英雄が使っていた

 “聖剣ルミナスブレード”が眠っておると伝わっておる」


「聖剣……!」


リリアが小さく息を呑む。


「でも、試練は危険です……。翼さんは、この世界に来たばかりなのに……」


泣きそうな声で、リリアが翼の手をそっと握る。


翼は一度、深く息を吸った。


「リリア。俺、逃げたくない。

 昨日、魔獣に何もできずに……

 でも、それでも立とうとした俺を……

 この石は守ってくれた。

 だったら、この力をちゃんと使えるようになりたい」


翼はリリアの手を握り返す。


「それに……俺が強くなれば、君を守れるだろ?」


リリアの目に、一瞬だけ涙の光が浮かんだが──

すぐに決意を宿した強い瞳へと変わっていった。


「……はい。翼さんとなら、どんな試練も乗り越えられる気がします」


村長が頷く。


「昨日伝えたように試練の神殿は、ここから北の森の奥深くにある。

 闇王軍も動き始めておる今、急がねばなるまい」


翼は最後に村の惨状を見渡した。

守れなかった悔しさを胸に刻む。

もう二度と、こんな光景を誰にも味わわせたくない。


「行こう、リリア。

 勇者の試練を越えて──聖剣を手に入れるんだ」


「はい、翼さん!」


 朝の光が二人を照らす。

 失われた光を取り戻す旅が、今まさに動き始める。

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