第2話 闇の影と、滅びの前兆
夜の闇が村を包む頃、リリアの家の中にはほのかな灯りが揺れていた。
「今日は長かったね……翼さん、少し休んでください」
申し訳なさそうに言うリリアの声に、翼は微笑むしかなかった。
いまだ胸騒ぎは止まらない。
リリアの言う「影が迫る」というお告げが、現実味を帯び始めていた。
──その瞬間だった。
村の中央から、けたたましい悲鳴が上がる。
「きゃあああああ!!」
「まさか……っ!?」
リリアが蒼ざめ、翼は反射的に立ち上がった。
窓の外──
黒い霧が、村の灯りを塗りつぶすように押し寄せていた。
「来た……“光を食う影”が……!」
「ここにいちゃ危ない! リリア、逃げるぞ!」
「でも……村の人が……!」
一瞬の迷い。
だがその迷いを押しつぶすように、暗闇から“獣の咆哮”が放たれた。
「グオオオオオオッ!!」
闇が獣の形となり、家々に襲いかかっていく。
外へ飛び出した翼の前に、黒い狼のような怪物が立ちはだかった。
翼は村の壁に立てかけられていた古びた剣をつかむ。
「剣なんて触ったことねぇけど……やるしかねぇ!」
「翼!! 気をつけて!」
怪物が爪を振り下ろす。
翼は剣で受け止めるが──
「ッッぐあああ!!」
衝撃で地面に叩きつけられる。
(くそっ……! 全然動きが見えねぇ……!)
二体目が背後から飛びかかる。
「翼、後ろ!!」
リリアの叫び。
振り向きざまに剣を振るうが、かすりもしない。
鋭い爪が翼の肩を切り裂いた。
「がっ……!」
血が飛び散る。
視界が揺れる。
(痛い……怖い……無理だ……)
弱気がよぎった瞬間、リリアの震える声が耳に届いた。
「翼! 死なないで……っ!!」
その声が、胸の奥で何かを灯す。
(……俺は……誰かに……頼られたことなんて、なかったんだ)
就活も、未来も、自分の人生もどうでもよかった。
だけど今は──
(リリアを……守りたい……!!)
翼は折れた剣を握り直し、立ち上がる。
「まだ……終わってねぇ!!」
闇獣が一斉に襲いかかる。
それでも、翼は退かない。
──その瞬間。
胸元の石が、脈を打った。
ドクン──。
身体が温かくなる。
「……え?」
石が強い光を放ち、翼の身体を包み込む。
「翼……それって……!」
リリアが目を見開く。
光の力が剣に宿り、折れていた刃が“光の刃”へと変わった。
「……これが、この石の力……!」
翼が一歩踏み出す。
その動きに、怪物たちは怯んだ。
「うおおおおおおっ!!」
一閃。
光の刃が闇を切り裂き、怪物が悲鳴を上げて霧散する。
二体、三体──次々と倒れていく。
「すごい……すごいよ、翼!!」
リリアの声が届く。
翼は荒い息を整えながら、最後の一体を切り伏せた。
怪物の鳴き声が消え、村に静寂が戻る。
「……やった……のか……?」
「ふむ。これが“光の石”の力か。」
冷たい声が夜空から降ってきた。
振り返ると、闇が裂けるように一人の男が現れる。
黒い甲冑。
禍々しい紋章。
異様な威圧感。
「なっ……なんだ……こいつ……」
村長が震える声で言った。
「やめろ翼殿……あやつは……闇王軍四大天の一人
“黒紋の騎士ヴァルガ”だ……!」
「四大天……!?」
リリアが息を呑む。
ヴァルガはゆっくり歩み寄り、翼を見下ろした。
「光の石が選んだ者か。
だがその程度で、我らに敵うと思うなよ?」
次の瞬間、ヴァルガは剣を抜かず“気”だけで圧を放つ。
「っぐ……!!」
翼は地面に膝をついた。
覚醒したはずの光も、彼の前では小さく見える。
「……くそ……っ」
「翼、もう無理だよ……!!」
リリアが涙声で叫ぶ。
だが翼は震える膝で立ち上がる。
「逃げたら……守れない……!
俺は……特別なんかじゃない……けど……
リリアだけは……絶対に……守る……!!」
その言葉に石が微かに光を強める。
だがヴァルガは鼻で笑った。
「守る、か。
──なら知っておけ。我々の目的は“石ではない”。」
「……え?」
「我ら闇王軍が求めるのは──その娘、“リリア”だ。」
村長と翼の顔が凍りつく。
「な……んで……?」
「娘よ。お前には“光の巫女”の資質がある。
光の王国エリュシアが滅んだ今、その力は世界に一人だけだ。」
リリアは震え、翼は怒りに燃える。
「リリアには……手を出させねぇ!!」
「ほう。自分の弱さに絶望してなお、まだ威勢を。
次は──この村ごと滅ぼしに来る。」
ヴァルガは剣を抜くことなく、闇に溶けるように消えた。
残された村は静寂の中、ただ震えていた。
「村長……リリアが、光の巫女……って?」
老人は悔しげにうなずく。
「リリア、隠していてすまなかった。
お前は神のお告げを聞く唯一の巫女……
闇を封印できるとする光の王家の血を引くものだ。
そして翼殿、貴方は“光の勇者候補”だ。」
俺もリリアも村長の突然の発言に体が固まっていた。
「お、俺が勇者……候補……?」
「うむ。だが今のそなたのままではヴァルガには到底勝てぬ。
明日、北の森の奥──“勇者の試練場”へ向かえ。
石の力を知るには、そこへ行くしかない。」
翼は拳を握った。
「強くなる……必ず。
リリアを守れるくらいに……!」
リリアは涙を拭いながら微笑む。
「……翼。私も行く。
一緒に……光を探そう。」
翼はうなずいた。
石が胸元で、静かに明るく輝いた。
闇に沈んだ世界で──
二つの光が、確かに動き始めた。
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