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第1話 光の村と、揺れるお告げ

 森を抜けると、小さな村が広がっていた。

木造の家々が並び、煙突から白い煙がのぼっている。

子どもたちが走り回り、家畜の鳴き声が響く――どこか懐かしい光景だった。


「ここが、私の住んでいる“ルーミア村”です。

さっき……倒れていた場所からは少し離れたところにあります」


そう言う彼女の声は、どこか胸を撫でおろすような柔らかさを帯びていた。


「リリア、おかえりー!」


道端の子どもが彼女に手を振る。

リリアは優しく手を振り返した。


村人たちからも「今日も可愛いね」「手伝いありがとね」と声がかかる。

どうやら、リリアはこの村でかなり慕われているらしい。


そんな中、村の人たちの視線が俺に向けられる。


「えっと……この方は……?」


「森で倒れていたんです。私が保護しました」


その説明に、村人たちは驚きながらも温かく迎えてくれた。

ただ、一人の老人だけが、俺を見て眉をひそめた。


「……妙な気配がするのう。だが、リリアが連れてきたのなら構わんよ」


妙な気配?

俺は一瞬だけ胸がざわついた。


だがリリアは気にした様子もなく、俺の袖をそっと引いた。


「こっちです。お家はすぐ近くですから」


 リリアの家は、村の中でもひときわ綺麗に手入れされていた。

木でできたあたたかい家で、花の香りがほんのり漂っている。


「どうぞ。散らかってない……はずです」


遠慮がちに言うリリアの頬が少し赤い。

無理に笑ってごまかすその姿に、また胸が痛くなる。


優しいのに、どこか自分を後回しにする子だ。


「座っていてください。お水を持ってきますね」


テーブルの上には薬草が干されており、かすかに薬のような香りが漂っていた。


「リリアって……薬草とか扱うの?」


「はい。村では“神の声を少し聞ける子”なんて言われてますけど……

実際は村のお手伝いばっかりです」


リリアは少し照れたように笑った。

だが、その表情にはどこか影がある。


「神の声……?」


「えっと……たまに夢の中で“何かが伝えてくる”ことがあるんです。昔から。でも……」


リリアは視線を落とし、続けた。


「でも、正直あまり信じてないんです。

村の人はすごいって言うけれど……

私自身は、ただの夢だと思っていて」


「……なるほど」


翼が頷くと、リリアはそっと翼の顔を見た。


「でもひとつだけ……どうしても忘れられない“声”があって」


「声?」


「“光を運ぶ者が現れる。その者を迎えよ”」


 リリアは胸のあたりを握りしめる。


「その人の名前が……翼、だって」


翼は思わず息を飲んだ。


(完全に俺じゃん……)


「私、ずっと信じてなかったんですよ? 

そんな人が本当に現れるわけ……ないって」


リリアは苦笑し、わずかに肩を震わせた。


「でも……今日、森であなたを見つけて──心臓が止まりそうでした」


かすかに震える声。

それが恐怖なのか、安堵なのかはわからない。


「……俺を助けてくれて、ありがとう」


「ううん。逆ですよ。助けるっていうより……

“そうしなきゃいけない気がした”んです」


リリアは翼の胸元に視線を落とす。


「その石のネックレス……きれいな光をしてますね」


「あ、いや……これは」


隠そうとした瞬間、石がぼんやりと光を放つ。

まるでリリアの存在に反応しているかのように。


リリアの目がわずかに揺れた。


「……おとぎ話に出てくる“光の石”に、似ているような気がします」


「光の石?」


「はい。この世界では伝承の中にしかないものだって言われています。

”選ばれし者に宿る石”──そんなふうに」


リリアは翼を見る。

何かを確かめるように。

そして、そっと言葉を続けた。


「……翼さん。あなたは、普通の人じゃないのかもしれません」


翼は息を呑んだ。


(いや、俺はただの就活失敗大学生で……)


否定しようとしたが、その瞬間──


窓の外、森の奥で“黒い霧”が揺れたのが見えた。


「……今、何か見えた?」


「いえ……気のせいでしょう、たぶん。でも……」


リリアはふっと表情を曇らせる。


「さっきから胸騒ぎがするんです。“光を食う影が近づく”って……夢の中の声が」



翼のネックレスが再び淡く光った。

まるで警告のように。


(影……? 村を狙う敵……そんなのが本当に?)


ざわり、と嫌な予感が背筋を走る。


リリアは小さく息を吸い、翼の手を握った。


「翼さん。今日は村に泊まってください。……絶対に、ひとりで外に出ないで」


その声は震えていた。

曖昧な“お告げ”。

半信半疑だったはずの少女が──翼の到来を前に本気で怯えている。


胸の中で、石が脈打つ。

何かが、確実に動き出していた。

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