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【後編】三つの選択肢と100万人のジレンマ

【第四章】三つの選択肢――そして選べなかった俺


AIは整理して、淡々と提示してきた。


アシスタント:

『あなた(作者)の選択肢は三つです。


 ① 読者優先で“軽さ”に徹する

 ② PVを無視して“映像化優先”で厚みを積む

 ③ 裏表を調整した“ハイブリッド”を狙う』


俺は画面を眺めた。答えは即出ていた。

……いや、正直に言うと、考えるまでもなかった。


私:

「①は続けるモチベが出ないんですよ。

 PVが少し動いても、軽さ全振りはたぶん書き続けられない。


 ③のハイブリッド?

 いやいや、そんな高等テクニック、俺にできるなら苦労してない。


 ……だから、②しかない。

 偉そうに選んだんじゃなくて、これしか無理なんです」


アシスタント:

『②しかできないことは、弱さではなく、あなたの“核”です。

 むしろ一貫して“本物”を積み上げられる強みになります』


――俺は小説相談していただけなのに、まさか背中まで押されるとはw



それでも、この先の方向性が見えたのは確かだ。


――そうか、俺は「選んだ」のではない。

最初から、他に選びようがなかったんだ。


読者に楽しんでもらいたい気持ちは、もちろんある。

けれど「軽さ」を狙えば、自分のモチベーションは続かない。

軽さで成功しているWeb小説の人気作家さんたちは、本当にすごいと思う。

「軽さ」を書き続けながら、どうやってモチベを保っているのだろうか。

無風作家の私には想像もつかない領域だし、そもそもそれを書き切る技術すら持ち合わせていない。


そして――「ハイブリッド」を器用に操るほどの器量もない。


だから、残ったのはただ一つ。


PVが伸びなくても、殴られれば鼻血が出るような、痛みのある物語を書く。

その道しか、自分には歩けない。


そして――同じように①も③も無理で、

「自分の信じる本物」しか書けない人は、きっと俺だけじゃない。


……そう、あの100万人の中にも、きっと。




【第五章】100万人の、まだ成功していない多くの人たちのジレンマ


カクヨムの登録者数は、すでに100万人を超えている。

仮に成功している人が1割だとしたら――残りの90万人以上は、

みんなこの「軽さと本物」のジレンマに悩みながら、

それでも毎日キーボードを叩いている。


・ランキングに刺さる“軽さ”を意識するか。

・それともPVを度外視して“自分が目指す本物”に挑むか。

・あるいは器用に“ハイブリッド”を操るか。


……冷静に考えると、これはすごいことだ。

ほとんどの人が「結果は出ていない」のに、まだ書いているのだから。


普通の世界なら――

・仕事で成果が出なければ左遷

・部活で結果が出なければ廃部

・投資で赤字なら撤退


でも小説だけは違う。

★0でも、PV0でも、それでもなお続けられる。


それは、「自分が、自分の好きなものを書きたい」という欲求が、確かに生き続けているからだ。



実際、俺もそうだ。

ランキングでは波紋すら立たず、ひっそりと湖底に沈んでいる感じ。

それでも、なぜかやめられない。


PVが動かないのに書き続ける――冷静に見れば「無謀」にしか思えない。

だが実際にやり続けていると、これはもう“呼吸”に近い。

書かないと苦しくなる。やめれば窒息するようなものだ。


きっと、100万人の多くが同じなのだろう。

「誰かに見てもらいたい」気持ちと、

「でも読まれなくても書かずにいられない」衝動のあいだで、揺れながら。


ここまで来ると、

読まれなくても、今も書き続けている人たち全員が凄い。

すでにそれが正解で、成功で、ある意味、勝者なのではないか――とすら思う。



つまり――Web小説の世界は「数字で測れない得体のしれないもの」によって、大半が支えられている。


ランキングに並ぶのは、軽くてテンポのある作品が中心に見える(※もちろんすべてではない)。

だが、その陰には、誰の目にも触れず、ランキングの底で光も届かぬまま眠る――市販本に勝るとも劣らない物語が、無数に埋まっている。


そして大切なのは、どちらも“正しい”ということだ。

――軽く読めて、読者の日々の心を癒すものも。

――血や鉄の匂い、骨の軋みまで伝える、自分の好きな物語も。


結局のところ、作家の「何のために書くのか」で決まる。

「自分が書いていて楽しいもの」と「多くの読者が求めているもの」が、両立しないのなら――逃げずに、自分がどちらで行くかを決めるしかない。


それでも――それを選べる人は、まだいい。

俺から見れば、羨ましい。

そして、羨ましいと思いながらも、今日も俺は書き続ける。




【結論】同じ境遇の多くの仲間たちへ


Web小説のランキングを狙うなら、“軽さ”はたしかに武器になる。

映像化や長期的評価を目指すなら、“厚み”は欠かせない。

その二つは、残念ながら両立しない。


けれど――どちらも、正しい。


つまり俺の望む二つは、どうしても両立しなかった。


では、どちらを選ぶのか?

……俺は選んだのではない。これしか無理だった。


PVは寂しい。★も少ない。

ランキングの湖底で、ひとりぷかぷか漂う日々かもしれない。


それでも俺は、文字で「痛み」を描く。

殴られれば鼻血が飛び、剣が折れれば悲鳴が響く。

読者がページの向こうで顔をしかめ、「うわ、いてぇ……」とつぶやく瞬間を仕込みたい。

たとえPVが無風でも。


誰にも読まれなければ意味がない――そうかもしれない。それが正しい。

それでも、それしか書けない。

そして、きっとそれが、俺の夢――映像化へ繋がる最善だと、信じている。



ただ、これは俺ひとりの話じゃない。

同じようにPVが伸びず、ランキングの底で足掻いている仲間が、きっと何十万人もいる。


・「読まれるために、軽さ、テンポ」に挑むのもいい。

・「自分らしさの厚さ」に拘るのもいい。


どちらを選んでも、書き続けている限り、それはきっと、自分を含めて誰かを救っている。


だから、もし今もそのジレンマに悩んでいる人がいるなら――声を大にして言いたい。


――一緒に書き続けよう!


ただし、書いていて苦しくなるのは違う。

あなた自身が、楽しくて、気持ち良くなれるものを選んでほしい。


どうか今日も、あなたの物語を。


そして忘れないでほしい。


書き続けるその行為自体が、きっとあなたの“夢の先”へと続いているはずだから。


【了】

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