表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

【中編】軽さの限界と「本物」への道

【第二章】軽さの限界


「要するにWebは“回転寿司”かよ……」


そううそぶいたあと、ふと立ち止まった。

まだ、俺の作品たちが敗北したとは思いたくはなかったからだ。



回転寿司は、確かに手軽でうまい。

けど、そんな手軽なものが好きな人ばかりじゃない。

たまには、じっくり煮込んだビーフシチューや、重厚なフルコースを味わいたい人だっている。


そこで、またAIにぶつけてみた。

――俺の魂の叫び(=屁理屈。いや、屁理屈こそ魂か?)。


私:「それって……臨場感とか深みとか、大きな感動とか、いらないってこと?

  軽いノリで“ちょっとした面白さ”さえあればいい、みたいに聞こえるんだけど」


アシスタント:

『その通りです。Webのランキングは“ジャンクフード的快感”を優先します』


……いや、ジャンクフードって。

(確かにハンバーガーもうまいけど、俺だってたまに赤ワイン片手にステーキ食いたくなるんだぞ!?)


だがAIはすぐに補足した。


アシスタント:

『ただし――臨場感や深みは“不要”ではありません。

 むしろ、長期的評価や映像化を狙うなら必須です』


なるほど。

つまりこういうことだ。


・短期的にランキングを狙うなら、「軽さ」と「テンポ」がすべて。

・けれど、少ないコア読者の“記憶に残る作品”になるには、「深み」と「厚み」が欠かせない。


俺は思わず苦笑した。


「結局、“軽さ”は寿司の一皿。“厚み”はフルコース。

 ……で、俺は厨房に立って、ひとりで煮込み料理を仕込んでたシェフだったってことか。――いや、客ゼロのシェフだけどなw」



それでも、まだ腑に落ちなかった。

――じゃあ、どちらを選べばいいのか?


・ランキングに消費される寿司を握るか?

・読者が0でも、記憶に残るフルコースを創るか?


答えはまだ言葉にならない。

だが、胸の奥では確かにひとつの輪郭を描き始めていた。




【第三章】「自分の本物」を目指す道


俺は思った。

じゃあ、回転寿司じゃなくて、フルコースで勝負した作品はあるのか?


――ある。しかも、誰もが知っている、俺の好きな人気アニメたちだ。

どれも、ちっとも軽くなんてない。


(まだ俺は、こいつ〔AI〕の言葉なんか、信じたくなかった)


■ 鬼滅の刃

最初から「家族の死」という強烈すぎる痛みで幕を開ける。

しかも毎回の戦いで、炭治郎の身体はズタボロ。勝利しても代償が必ず残る。

“軽さ”どころか、読者も視聴者も「痛み」を共有させられる物語だ。


■ 呪術廻戦

見た目はポップな濃厚バトル漫画に見えて、その実は「呪い=負の感情」という重苦しいテーマが土台にある。

キャラクターは明るく振る舞っても、戦えば腕が飛ぶし、心が壊れる。

一瞬のギャグで救いを与えた直後に、奈落に突き落とす落差。

あれこそ“厚み”を前提にした構造だ。


■ 進撃の巨人

第1話でいきなり母親が食われる衝撃。

途中でヒロインが死んでしまうどころの話じゃない。

そこから10年以上をかけて積み上げた巨大な伏線と、壮大な戦争劇。

寿司一皿どころか、読者はフルコースを何十回も味わわされたような作品だ。


■ マッシュル

一見すると「筋肉で全部解決!」のギャグアニメのように映る。

しかし物語が進むほど、差別や格差、友情や信念といった深い人間的テーマが浮かび上がっていく。

マッシュの“バカみたいな力技”は、実は理不尽な社会をひっくり返すアンチテーゼとして輝く。

ただの筋肉芸で終わらず、最終的には「仲間のために戦う重さ」へと収束していくのだ。

――つまり『マッシュル』は、“軽さ”で掴み、“厚み”で刻まれる。

読後に忘れられない作品となった代表例である。



――俺が、自分の作品で一番重視していることは、「絵的に映えるか?」だ。

そしてそれを書いている時が、一番楽しい。時間を忘れて没頭できる瞬間だ。


そこで再びAIに尋ねてみた。


私:「でも、こういう厚みのあるアニメ作品って、Webの人気小説から生まれるの?

 あなたのいう“軽さ”一直線の鉄則と、どう考えても両立しないんだけど」


アシスタント:

『“Webで気軽に読めるもの”と“映像化で映える厚み”は、根本的に相いれません』


――俺の望む二つは、両立しないのか。

キッパリと、絶望的なことを言いやがる。


アシスタント:

『……例えば、鬼滅級の厚みを最初からWebで狙うと、ほぼ確実に離脱されます』


私:「なるほど……。でも俺は、書くときにまず考えることは“映像的に映えるか”なんだけど」


するとAIは、ちょっと嬉しそうにこう言った。


アシスタント:

『それは、大きな強みです。

 入口は軽くてもいい。けれど奥には厚みを仕込む――“二段構え”が可能です』


俺は思わず吹き出した。


「なんだよ……それ、まるで『お子様ランチの卵の下に、黒毛和牛のステーキが隠れてる』みたいな話じゃん」


――まあ俺の場合、卵の下にあるのは、ステーキじゃなくて、“たこ焼きがゴロゴロ入っている”みたいになってるけどな!(泣)



……とはいえ、ここでちょっと脱線。

私:「俺のような無風作家が、手っ取り早くテンプレ書いて、人気作家になるには?」と、つい欲を出して聞いてみた。


アシスタント:

『まず大事なのは、今のランキング上位にあるテンプレ作品を読んで、

 心底“面白い”と思えることです』


なるほど、理には適っている。だが、そこで確信した。


テンプレを心底楽しむには、自分の中の勝手な【美学】が邪魔をする。

バトルに臨場感も痛みもなく、血の匂いすらしない。

薄味で、浅くて、あっけない。

読み終えた瞬間――『で、なに?』としか思えない。

――まあ、俺がひねくれてるだけかもしれないけど!(泣)



そしてはっきりした。

――Webで人気を取ることと、俺が目指すアニメ化の道は、必ずしも重ならない。


だって「軽い回転寿司のアニメ」なんて、俺は見たくもない。

俺が見たいのは――**『鬼滅』であり、『呪術』であり、『進撃』であり、『マッシュル』**だ。


Web小説で求められている“軽さ”とは、明らかに違う。

この続きは【後編】へ。

三つの選択肢と、100万人が抱えるジレンマについて語ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ