【前編】PVゼロと★ゼロの世界で
【導入】埋もれた名作との遭遇
正直に言うと、私は執筆しながら、ずっと悩んでいました。
――書いても書いても、PVは無風。
風が吹かないどころか、「おい、世界、みんな寝てる?」と確認したくなるほどの静けさです。
それでも奇跡的に、ほんの少しだけ読まれた作品もありました。
「おっ、今度はいけるかも!?」
そう胸が高鳴った作品――。
ありがたいことに、数人の方が★を入れてくださり、コメントまで残してくださった。
その評価のひとつひとつは、本当に宝物です。
今でも画面を開いて見返すと、胸の奥がじんわり温かくなる。
……が、それでも、大体が★10前後。
「小さな星たちに、どれだけ救われてきたか」――そう思いながらも、ランキングの海ではほとんど波紋にもならない。
波立つというよりも、誰の邪魔にもならないように、湖底にそっと静かに沈んでいる感じでした。
◇
そんなある日。
「面白いもの、ないかなぁ」と、カクヨムのミステリージャンルをふらふら眺めていたら、思わず目を疑う作品を見つけました。
既に文字数50万超で連載中。――けど★0。
ゼロですよ? ゼロ。
「いやいや、0って逆にレアでしょ?」
思わずクリックしました。
気になって冒頭2万字を試し読みしたら……。
これが、とんでもない完成度。
売っている本に堂々と並んでいても全く遜色ない。
むしろ下手な商業作品よりも上。語彙力、文章に骨格があり、読ませる力があった。
――だけど、★は0。
他を見た。そしたら、★0がざら。あっちもこっちも。
「ひょっとして、俺の★10って……儲けもん?」
そんな気持ちと同時に、背筋がゾワッとしました。
この埋もれた中にだって、沢山の名作はあるだろうに……。
私はずっと思っていたんです。
★がつかない理由は「自分の作品が読者にウケるレベルに達していないから」――要するに“へたくそ”だからだ、と。
でも、★0が全部そうではなかった。
★0の中にも、間違いなく“本物”が埋まっている。
その瞬間、私ははっきり悟りました。
Web小説の世界には――「読まれること」と「優れていること」の間に、とてつもなく大きなギャップがある。
そして私を含む大多数の作者は、その狭間でもがきながら、
それでも今日もキーボードを叩き続けているのです。
【第一章】ランキングに刺さる“軽さ”の鉄則
★0の傑作を見つけてしまった私は、考え込まずにはいられませんでした。
――じゃあ結局、“読まれる作品”ってなんなんだ?
そこでAIに相談してみることにしました。
私:「ある書籍化作家さんの動画で、
Web小説についてこんなことを言っていたんです。どう思います?」
・軽く、手っ取り早く楽しめること
・読み飛ばされる前提で書くこと
・冒頭がつまらなければ即死(第5章から面白いは論外)
・毎話にフックが必要(全体の面白さは二の次)
・ヒロイン死亡はNG(離脱者が増える)
・大掛かりな伏線は不要(伝わりにくい)
・バトルは「どっちが勝つか」だけでOK
・キャラ数は極力少なく(序盤は3~5人程度)
・恋愛要素はできるだけ入れる
・説明は極力減らし、会話でテンポ良く進める
どう見ても「軽さ」一直線のリスト。
そして私の作品は、そのNGだらけです。
――俺の『エナジャイズ 』は、バトルに全フリだし。
『アデン大戦記』にいたってはヒロイン死ぬわ、キャラは40人わんさか。
冒頭はショボいけど、第5章からは面白い……。
もうこれ、“Web小説”にケンカ売ってる?
読まれない針の穴に、わざわざ全部の針を突っ込んでる感覚でした。
◇
アシスタント:
『これはランキングを狙う鉄則ですね。
Webは“ながら読み”が主流なので、冗長な説明や大伏線は敬遠されます』
……正直、ちょっと凹みましたが、それでもズシンときたのは事実。
私:「じゃあ、俺が書いてる“骨太描写”や“凝った伏線”は、自己満足で空振りってこと?」
アシスタント:
『ランキングを狙うなら、まずは“軽さ”です。さらに――
・タイトル命(状況+キャラ属性+方向性を一目で)
・冒頭3行でジャンル提示
・更新頻度(毎日更新が強い)
・テンプレ活用+小さな意外性(完全破壊より“ちょっとズラす”)
・感想返しや活動報告でファン固定化』
私は画面を見つめ、ため息をひとつ。
私:「要するにWebは、“回転寿司”的な読み方に最適化されてるんだな。
読者はダルい部分は読み飛ばし、食べたいネタだけ気軽に選べて、
すぐ次へ行ける。
便利で楽しい、いい意味での“回転寿司”。
――それが、ランキングに強い作品の正体なんだ」
(俺がやってるのは、全く逆なことをしながら、それでも“読まれたい”って望んでたのか……)
――続きは【中編】へ。
「軽さ」の限界と、「厚み」を目指す理由を語ります。




