第九話 森の中で
バタバタしてました・・・
誠にすいませんでした!
〝起きろ。着いたぞ〟
「……まだ寝ていたいんですが」
〝雷を落とされたくなければ起きることを勧めるぞ〟
「ごめんなさい!すぐ起きます!」
エレボス様が言うと、本当に殺りそうで怖い。
辺りを見回すと、そこは一面の緑だった。さすが大森林ということはある。
「ここが大森林ですか?」
〝そうだ。ここには、様々な魔物や、亜人がいる〟
「亜人?確かこの大陸には奴隷としてしか存在しないんじゃ……」
〝ここは強い魔物が多いからな。自然を味方につける亜人には絶好の隠れ場所だ〟
そういえば、亜人は森に入ったり、危険な動物に遭遇しても、死なないらしい。
亜人が森を守り、森が亜人を守るのだそう。win-winという奴だ。
「それで……どうやってここに隠れるんですか?」
〝決まっているだろう。亜人に匿って貰え〟
「何を言っているんですか?亜人は人間を嫌っているんですよ?」
〝お前こそ何を言っているんだ?亜人は人間を嫌っているが、勇者は嫌っていない。その勇者がどのギフトを持っているかにも因るがな〟
つまり、持っているギフトによっては血祭りに挙げられるという事だろう。
それに値する行為を人間がしたので当然だと思うが、とても怖い。
「よく分からないですね……支離滅裂過ぎません?」
〝まあな。だが、勇者は人種差別を殆んどしないからな。亜人からは好かれている〟
「そうなんですね……それで、作成って歓迎されます?」
〝神の後継者だぞ?歓迎しない理由が無い〟
「良かったー……」
〝そういうわけで、さっさと森に入れ。王女が追ってこない保証は無いからな〟
「分かりましたよ……」
森の中は昼なのにとても暗く、今にも何かが襲ってきそうな感じだ。
僕の足音以外は、動物の動き回る音ぐらいしか聞こえない。
何処まで行けば亜人に会えるのだろうか。
目に入るものは殆ど見たことのない植物だが、偶に馴染みのあるものを見かける。
例えば、竹。あの特徴的な節で見分けがつく。ちょうど喉が渇いていたので、竹に穴を開けて水を飲んだ。
これでも元学年1位なのだ。大体のサバイバル法なんて分かっている。
クラスメイトが居なくなったことで、ストレスなく眠れるようになった。
でも、またそのうち出会うことになるのだろう。絶対に彼奴等は僕を追いかけてくる。
その時までに撃退できたらいいんだけど……無理だろう。
皆のステータスが僕よりどれほど高いか分からないけど、後衛職の僕では絶対に太刀打ちできない。
しかも、襲ってくるのは36人だ。無理に決まっている。
やはり、森に隠れてやり過ごすしか無いのだろう。
〝そんな事を考えても仕方がないだろう〟
「エレボス様!?何で……」
〝お前の考えなど簡単に読める。そういえば、早く念話を取得しろ〟
「念話?確か魔法書に記述があったような……」
確か、中級魔法として紹介されていたはず。
〝そうだ。それを取得すれば、一々お前が声に出さずとも話せるからな〟
「成程。頑張って覚えます」
〝うむ。では、そろそろ昼食にするか。自分で取れるか?〟
「鑑定があるので余裕ですよ」
集まったのは竹の水と、安全に食べられる木の実だった。
あまり美味しくはないが、それでも栄養は取れる。亜人の村に着くまでの辛抱だろう。
「後何分ぐらいで着くんですか?」
〝そうだな……後2時間ぐらいだろう〟
「長いですね……」
もっとも、地図もコンパスもない状態でここまで来れているのが奇跡なのかも知れない。
どうにかして作成で作りたいものだ。
そういえば、未だまともに物を作ったことがない。亜人の村に着いたらやってみよう。
〝出発だ。行くぞ〟
「はい」
そんな楓真を見つめる人影が一つ。
その影には耳のようなものが付いていた。
影は、楓真を追って走り出す。まるで、楓真を監視するように。
次こそ亜人に出会えます。
そういえば楓真、実は頭良いんですよ。学校にまともに行っていた時は学年1位でした。
不登校気味になってからも勉強してますしね。