第五話 閑話 バルグミュアの王女
わたくしはエレナ=エフフード=バルグミュア。バルグミュア王国の第一王女です。
人からは屑王女などと言われますが、自分でそんなことをしているつもりは全くありません。
さて、つい一月前の事です。父上と母上、それと城の神官たちによって、勇者様が召喚されました。
バルグミュアの国教は聖神教なので、聖神様に祈りを捧げる事で召喚されるそうです。
わたくしは儀式に同席できませんでしたが、それでも神々のお力を感じることが出来ました。
聖神様はなんと素晴らしいのでしょう。出来ることなら傍でお仕えしたいぐらいです。
少し話が逸れましたわね。
召喚された勇者様達は、とても神々しいお力を纏っていらっしゃいました。
その中でも特に群を抜いていたのが、カイト様でした。カイト様はとても凛々しく、正に本物の勇者様と言うべき方でした。
それからわたくしとカイト様はどんどん親交を深めていき、ついにはお互いを呼び捨てで呼ぶにするほどまでになりました。カイト様はとても優しく、わたくしの夢を聞いても笑わずに真剣に聞いてくださいました。そのうち、わたくしはカイト様に惚れてしまったのです。
最初の召喚から少しした頃でした。アレが召喚されたのは。
ある日、召喚の間から神々のお力を強く感じ取りました。ちょうどその日は勇者様も交えての会議だったため、急いで全員で向かいました。
召喚されたのは、17歳ぐらいの少年でした。少年はとても驚いた顔をして、周囲を見回していました。
その時、カイト様が突然叫び声を上げたのです。
『なんで柏木が召喚されるんだよ!』
他の勇者様も全員驚いた顔で少年を見ています。
カイト様のここまで驚いた顔をわたくしは初めて見ました。
そのうち、勇者様達が次々と少年を罵り始めました。
わたくしは居ても立ってもいられず、声を荒げてしまいました。
『いい加減にして下さい!』
『エレナ?何を言って───』
『この方はカイト達の仲間なのでしょう?仲間同士仲良くしないのですか?』
『仲間?馬鹿なことを言わないでくれよ』
『はい?』
『確かにそいつは一応クラスメイトだが、絶対に仲間じゃない』
『……』
『エレナ、見てなかったのか?あいつはほぼ奴隷みたいなもんなんだよ。だから──』
『この国では奴隷は合法ですが、他の勇者様を奴隷呼ばわりは流石に処罰しなければなりませんよ?』
『…チッ!』
カイト様は渋々引いてくれましたが、その目は少年をずっと睨んでいました。
『大丈夫ですか?』
『まあ…いつものことなので』
少年の目は、すべてを諦めているように見えました。
(そういえばこの少年のステータスはどうなっているのでしょう。召喚のときに感じた力は、カイト様より遥かに大きかったですし……)
『そういえばステータスは確認されましたか?』
『あ、まだですね』
少年にステータスを確認させます。
確認させた後は、この世界についての大体の説明をします。
知識0で居られても困りますからね。
詳しいことは後で教えるといたしましょう。
その時、少年がふと口を開きました。
『ギフトの〚作成〛というのはどんなものなんですか?』
『え?───ギフト〚作成〛なの?』
『はい。そうですが?』
『ゴミ』
『え?』
『はぁ……。新たに来た勇者だし、なんかいいギフト持ってると思ってカイトから庇ったのに本当最悪』
『どうして……』
『どうしてこんな仕打ちを受けるか分からない?なら無知なあなたに一つ知識を与えてあげるわ。〚作成〛は物作りしかできないGランクギフトなの。簡単な物作りしかできないゴミは要らないのよ』
『物作りしか───できない?』
『ええ、そうよ。本当にこんなやつに期待したのが間違いだったわ』
なんということでしょう。勇者様の中に、物作りしか能のないゴミが紛れ込んでしまいました。
期待するだけ無駄でしたね。
少年は絶望の顔をしていますが、そんなことは関係ありません。早く処分しなくては。
その時、またカイト様が声を上げました。
『お前ギフトが物作り?ゴミにはゴミギフトがお似合いだな!』
今度はもう止めません。カイト様の判断のほうが正しかったのです。
そんな事を考えている間に少年は気絶してしまいました。
『使用人、後で適当に医務室にでも運んでおきなさい』
それから一週間後、勇者様達はダンジョンへ訓練に行くことになりました。もちろんあのゴミも一緒です。
ダンジョンは貸し切りました。だって当然ですもの。
宿について休息を取り、翌日ダンジョンへ行くとFランクの冒険者が襲ってきました。不敬罪でサクッと殺してダンジョン内部へ入りました。
宿に帰るときに作戦決行です。
アレを先に外に出して、騎士団長に殺させます。
最終確認にはカイト様と行くことになっています。
アレには話していませんが、勇者様には仲間の死を悟れる能力があるのです。制限は色々ありますけど。
そんな事を考えている内に騎士団長が戻ってきたようです。
明日にでも確認に行きましょう。
アレの死体を見るのが楽しみです。
次はエレナが確認に来ます。
楓真は逃げられるのでしょうか。