第三話 死の淵で
痛い……
今まで感じたどんな痛みより痛い。
そう、まるで高い所から落とされたときのような……
〝おい。聞こえるか?〟
何かが聞こえる。だけど無視していいだろう。まずは痛みの原因を突き止めなければ。
まずは記憶を探ろう。何かが思い出せるはずだ。
〝おい!聞いているのか?〟
幻聴のくせに声がうるさい。
確か家族に火の中に突っ込まれて、それで転移して……ああ、そうだ。エレナ様の配下に崖の下に落とされたんだ。それにしても全身が痛い。高さ数十メートルから落ちたのだから当然だろう。むしろ生きていることが奇跡だ。
〝おい!返事をしろ!〟
本当にうるさい。今考えを整理しているところだから黙っていてほしいものだ。
いや……幻聴じゃない?試しに次声をかけられたら返事してみよう。
〝さっさと返事をしろ馬鹿野郎!〟
「なんですか?」
〝やっと返事をしたか……死んだのかと思ったぞ〟
「……まず誰ですか?」
〝私か?私はエレボス。地獄の管理をしている闇神だ〟
「神様?やっぱり俺死んだんじゃ……」
〝いや、死んではない。お前の脳内に直接語りかけている〟
「そうですか……それでご用件は何でしょう?」
〝その前に自分の体を治したらどうだ?まだ原型をとどめてはいるが、そのうち死ぬぞ?〟
「僕の体そんな酷いことになってるんですか!?でも、僕回復魔法使えませんよ?」
〝回復魔法が使えない?回復魔法なんて誰でも知っているぞ〟
「教えてもらえなかったんですよ……」
〝お前が王女から疎まれているのは知っていたが、まさかそこまでとはな……〟
「知っていたんですか?」
〝知っているとも。何ならお前がここに来たときから見ていたぞ?〟
「ならどうして……!」
〝落ち着け。まずは回復だ。高レベルな魔法が出来ないなら遠隔で掛けるしか無い。神聖魔法は苦手なのだがな……。〘神々の癒やし〙〟
「痛みが少なくなっていきますね……凄いです」
〝そうか、良かったな。そして……お前を助けなかった理由だが、まず1つ目。私はほとんどこの世界に手を出せない〟
「何故です?」
〝閉じ込められているからだ。聖神ノイアスによってな〟
「神が神に閉じ込められる?そんな事があるんですか?」
〝聖派閥と闇派閥で争っているんだ。この世界の運営にはどちらも必要なのにな。因みにお前たちを召喚させたのはノイアスだぞ〟
「そうですか……」
〝どうした?怒らないのか?〟
「怒ったところで何になると言うんです?僕はそこら辺の魔獣も倒せないような雑魚なんですよ。怒るだけ時間の無駄です」
〝いや、違う。お前はこんな所で埋まっていて良い器ではない。国王、引いては神にも成れる〟
「何を言っているんですか?僕は物作りしかできなくて……」
〝はぁ……良いか?よく聞け。お前のギフト〘作成〙は、或る神の後継者だけに発現する物だ〟
何か神の後継者になりそうな楓真。
次回はどうなるんでしょう。
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