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うわさづくり
「ねえねえ、知ってる?あのうわさ……。」
私は噂を作るのが好きだ。
皆「噂」という響きが好きだ。ここだけの話みたいな秘密めいた内容が自分に特別感を与え、「それを知っている自分」という優越感に浸るのだ。
「噂」は何でもいい。
ちょっと見かけた「事実」。そして「さもありえそうな嘘」。
それを組み合わせて、「ねぇ知っている?」と密やかに数人にだけ話す。
すると数日もしないうちに、その噂は「誰もが知っている公然の秘密」に変わっている。時にはSNS等にも広まって、私の属する小さなコミュニティ内だけの話ですらなくなっている。
「ねぇ知っている?N区の廃ガソリンスタンドの話?」
「知ってる!電話が鳴るやつでしょ?!」
盛り上がる皆に話を合わせるが、いつものように「噂」を流そうとした私は内心とても驚いた。
「そんなはず……。」
皆の話す内容は私が流そうとしていた噂と全く同じ。背筋が凍った。