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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「鬼と桃太郎」

作者: 魔王の囁き

この話は、一般的には悪さをする鬼を桃太郎が退治する話である。だか、その話は事実ではない。今から話すのは、桃太郎という伝説の真実の話である。

ある男が、テーブルに置かれたプラスチック製のコップに残る水をすすり、空調の周期的なゴーンゴーンという異音を聞きながら腕時計をちらりと見る。あと数十分であいつらと対峙しなければいけない。昨夜、何度もシミュレーションしたことを反芻する。

 ふと目の前に置かれた本棚の古い本を手に取る。初めにこう書かれている。皆さんは、桃太郎という話を知っているでしょうか。

「なんだ。この本は・・・。」

と男は呟く。


この話は、一般的には悪さをする鬼を桃太郎が退治する話である。だか、その話は事実ではない。今から話すのは、桃太郎という伝説の真実の話である。

鬼は人間より体が大きい。人間用の道をた

だ歩いただけで、家の軒先を簡単に壊してしまう。更に、鬼と人間の言語はまったく違う。このため弁明することができない。この2つの事実。見方が変わると真実も変わってくる。

この話しにおいても、鬼たちは人々の家を破壊したことを反省していたのであった。筋肉を圧縮するトレーニングを1か月間やり続けた。ついに普通の人間の2倍程度の身体サイズになることができた。すぐに鬼たちは、村人の家を修繕するために金属の大きなトンカチと釘を口に含み、村に行った。

人々は、また鬼が悪さをすると思い込み、武器を持ち攻撃を仕掛けてきた。村の兵長らしき人間が、

「一か月前、鬼が村で暴れ、たくさんの被害が出た。あの悲劇を繰り返すな。」と兵士に激を飛ばした。

 それに驚いた鬼は、慌てて誤解をとこうとした。しかし、人間と鬼は言葉が違うため伝わらず、攻撃を受けながら泣く泣く鬼ヶ島へ帰ったのであった。

 次の晩、鬼たちが寝ている頃、桃太郎が鬼ヶ島に猿、キジ、犬とやってきた。桃太郎は、大きな岩を掴むと鬼に向かって投げつけた。鬼は岩に押しつぶされ、何人かは死んでしまった。桃太郎は、

「宝のある部屋の鍵を持ってこい」

と鬼の長老に言った。鬼はそれを知っていることに驚いた。

「ここにあるきびだんごは、俺の爺さんと婆さんが作ったんだ。世界一うまいきびだんごだ。あまりのうまさに、言われた事を何でも従ってしまうという代物だ。」

「お前たちが村に攻めて来た時、一匹を捕まえて、きびだんごを喰わせたんだ。そしたら、ほいほい、内部情報をしゃべりだしたよ。」

それを聞いた鬼たちは戦う覚悟を決めた。桃太郎はキジに年老いた鬼や子供の鬼の目をつつかせた。犬には、鬼の足に噛みつかせた。鬼が目や足の痛みのあまり転げ回っている間に、猿は鬼の頭に飛び乗り、顔をひっかきまわった。奥の家にいた鬼の勇者が立ち上がり、桃太郎に一対一のタイマンを挑んだ。

「生意気な小僧。俺様が懲らしめてやる」

前を向くと、目の前に桃太郎の拳が迫ってきた。鬼はよける間がなく桃太郎の拳を顔面に受けてしまった。桃太郎の攻撃を何十発も食らって、気絶してしまった。

 それを見た鬼の一族は、これ以上家族を傷つけられない為に降参した。

「早く宝の部屋の鍵を持ってこい」

桃太郎に言われて、鬼は仕方なく鍵を桃太郎に差し出した。

 こうして持ち帰った宝で桃太郎は、贅沢三昧をして過ごしたとさ。

「この桃太郎の物語は何だ。」

と男は呟いた。

男は、古い本を持ったまま立っていた。

「俺の知っている物語では無い。」

男はまさに、あいつら、そう鬼のような奴らの退治に向かう直前だった。スマホの時計をちらりと見て、良く冷えたテーブルに手をつき、立ち去ったのであった。


この話は、一般的には悪さをする鬼を桃太郎が退治する話である。だか、その話は事実ではない。今から話すのは、桃太郎という伝説の真実の話である。

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