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8:始まりの日
「瑠奈…中に入りなよ。風邪ひくよ。」
ふわりと肩に上着をかけられた。
「ありがとう、龍。」
瑠奈は龍にかけてもらった上着を、肩から落ちないように端を握りしめた。
「また夢を見たのか?」
龍は心配そうに瑠奈を見つめていた。
「大丈夫。もう慣れたから。それに龍もいるしね。」
瑠奈はそう言って龍に笑顔を向けた。
龍はそんな瑠奈の笑顔に苦しそうな顔をした。
「龍……そんな顔しないで。あたしは大丈夫だから。
だって…龍が守ってくれるんでしょ。」
瑠奈は照れながらも龍を見つめて言った。
そんな瑠奈の言葉に一瞬目を見開いた龍だか、すぐに
「…あぁ。」
と言って瑠奈の頭を優しく撫でた。
瑠奈の人生は三か月前に動き出した。
あの月が輝く夜に。