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16:春の四季神
「…お気持ちは、本当に嬉しいです。
…でも……私…今の家がいいんです。
あの家は…お父さんとお母さんとの思い出が……いっぱいつまってる場所だから……。」
そう言った瑠奈の表情は、申し訳なさそうにしていた。
そんな瑠奈の表情を見ていたみんなは、何も言えなかった。
「…瑠奈様…そんな顔をなさらないでください。
私が今言ったことは、気になさらないで。
ただいつでも我々は瑠奈様のことをお待ちしておりますよ。」
そんな秀一の言葉に、瑠奈は目頭が熱くなるのを感じた。
「…はい…。」
ただその返事をするだけで精一杯だった。