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5:始まりと終わり
「不安があるなら、俺に言え。
泣きたいなら、俺が抱きしめてやる。
だから…1人で脅えるな。
俺が瑠奈を守るから…」
また龍は瑠奈を抱きしめた。
その力はさっきよりも強い。
「ありがとう…龍…」
瑠奈も龍の名を呼び、背中にゆっくりと腕を回した。
2人の姿が、月明かりに照らされていた。
……寒い。
目が覚めて肌寒さを感じた瑠奈は、布団から出たくないという気持ちを我慢して起き上がった。
あの恐ろしい日から三か月近く時がたつが、時々夢に見るあの光景が、今でも恐ろしくてたまらない。
男の後ろに光る円く大きな月。
その光に照らされて輝く刀と、男の妖艶な口元。
その刀が自分のもとに振り下ろされる。
そして、現れた学ラン姿の少年。
今でも目を閉じれば、その光景が目の前で起こっているように感じて怖くなった瑠奈