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1:戻ってきた者
――それから1週間
一樹が目覚めることはなかった。
「一樹……」
天磨は一樹が眠る部屋にいた。
『天磨!!』
『早く!こっちこっち!!』
幼いころの2人の姿が、今でも頭に浮かぶ。
「一樹…早く目覚ませ……一磨、迎えに行こうぜ…」
一樹が寝ている静かな部屋で、天磨は1人呟いた。
「しっかしまだ実感わかんなぁ~」
月が出ている。
虫の音も聞こえない静かな夜。
瑠奈、龍、祐輔、啓太は縁側に座って月を眺めていた。
「……戻ってきたな…」
ポツリ祐輔が呟いた言葉。
静かな夜に響く声は、4人の心に染み渡った。
誰がなんて言わなくても、それが誰を表しているのか分かる。
みんながこの3ヶ月望んでいたこと。
ただ、あと1人足りない。