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5:守りたい
「あなたは…誰?」
目の前の一樹は瑠奈の言葉に目を細めた。
「あなたは萱野君じゃない!!」
そう瑠奈は断言すると、月華の切っ先を、目の前に立つ一樹に向けた。
「――…ふっ……」
目の前に立っている一樹は笑ったかと思うと、急に姿が消えた。
その瞬間、襲い掛かっていた妖魔たちが、突然消えたのだった。
「こちらですよ。」
笑ったような薄気味悪い声。
その声は屋上から聞こえてきた。
真っ暗なコートを着ていて、フードを被っているため、顔がよく見えない。
声からして男ということしか分からない。
そして、その男の腕の中には、血だらけの一樹がいた。
「一樹!!!」
「萱野君!!」
一樹の存在に気づいた瑠奈たちは、その名を呼んだ。
遠くでは祐輔たちの声も聞こえる。