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4:守りたい
「来栖!俺から離れるなよ!!」
龍は目の前から視線を外さず、もう1度春彩を握りなおした。
「うん。」
瑠奈も龍につられて月華を強く握る。
妖魔との間に流れる、無言の空気。
そんな空気を切り裂いたのは、意外な人物だった。
「そっちばっかり見ないでよ。
俺はここだよ。」
気づいたときには、すでに瑠奈の後ろにいた。
「萱野君…」
「そんな化け物見たような顔しないでよ。」
「一樹!!ってくそっ!!!」
一樹が後ろにいることに気づいた龍は振り向こうとしたが、目の前から迫ってくる妖魔に気づき、振り向くことはできなかった。
「月姫……おいで…」
一樹は右手を差し延べた。
瑠奈は呟いた。
「違う……」
「来栖…?」
龍は背後から聞こえる瑠奈の声に戸惑った。
振り向きたくてもできないことに、苛立ちがつのった。