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9:天磨と四季神
「くっ!!」
間一髪のところで、妖魔の攻撃を避けた龍。
だが亜由美もいるなか闘うのはきつい。
周りは妖魔に囲まれた。
「龍!!!」
遠くで祐輔と啓太が叫んでいる。
2人とも焦った顔付き。
祐輔はいつもの余裕そうな表情とは全く違うし、啓太もいつものような笑顔じゃない。
―――…啓太に真剣な表情は似合わないな…
龍は心の片隅でそう思った。
緊張する場面なのに、こんな風に考える余裕ないのに、龍はそう思ってしまった。
一斉に襲い掛かってくる妖魔。
龍はせめて亜由美だけはと思い、春彩を握った。
「龍――――!!!」
遠くで啓太が叫んでいるのが聞こえる。
「桜井君!!!!」
龍が瞳を閉じた瞬間、秀一の元にいるはずの少女の声が聞こえた。
「月華!!!」
その名を少女が呼ぶと、龍が握る春彩から光が溢れ、妖魔たちは叫びだした。
「グォ―――!!!」
春彩から溢れる光に妖魔たちは苦しみ、龍のそばから離れていった。